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原初の神と地球の神4

『で、次元移動の理を得るためだけにより幼稚な姿に変異したわけか? 私が伝え聞くローズルの姿は長身であったし、メディアン世界に顕現した時点でのローズルもまた長身であった気がしたのだがな』


 原初の神に気おされ気味のアークは皮肉を述べることで何とか優位な立場に立とうとする。


 アークですらこれまでその姿を見たことがなかったローズルであったが、

 自身の接続する地球の民であるムギの影響である意味で見てみたかった姿を見ることが出来た。


 その姿は伝え聞くものと全く同じであり、神らしい威厳に溢れていたものであり、


 自身の民の影響でこのような姿となっているらしき話を聞いていたアークはエルとなったローズルの今の姿を気に入ってはいなかった。


『これはムギの好みであるが? よもや接続者たる神が知らぬわけがあるまい?』


『むっ……』


 ローズルはエルとなった姿はムギの趣味趣向に合わせたものであると語り、胸を張りつつ、アークを皮肉り返す。


 神としての力が弱く、とある理由によりムギのそういう部分が見えていなかったアークは恥ずかしさから口を閉じてしまった。


 それを見たローズルは――やはり何者かによって遮られて接続者から思考を読むことなどを鈍らせられておるな……。と背後にいる者の影響を感じ取った。


 実はアークがこれまで2度ムギに対して何らかの干渉をされており、1度目は、ムギが「どういうスタイルの女の子が好みなのか」を探るためであった。


 神によっては「他の者と接続されている人の心を読もうとするなど……そのような目的にそんなむちゃくちゃなことをするか?」と思う所だが、原初の神とは大体そういう性格の持ち主ばかりなのである。


 そしてその「興味」や「関心」といったものが大きな発見に繋がったりするのだ。

 ローズルがアークの裏に何かが潜んでいるのを見つけたりしたように。


 こういう事は原初の神ローズルにとって朝飯前の行為であり、

 ムギの頭の中に存在した理想の姿を調べ上げ、その結果作り出したスタイルが現在のもの。


 ただしそれは完全に「メディアンの既存のエルフ」から逸脱していた。

 例えば身長は150cmだが、これは森のウッドエルフなどの平均身長と合致する。


 当初はメディアンにいる中で最も身体能力に長けたオークをベースに肌の色などを変更して普通っぽくみせかけようかと考えたローズルであったが、


 オークをベースにすると筋肉質でさらに長身となる事から、それに準じる身体能力をもった人種にすることにした。


 華奢でスタイルがよく、かつ身体能力にもそれなりに優れたダークエルフを「漂白」してしまうという手もあったが、それでは少々運動能力に長けただけの標準的なエルフになってしまい面白くない上、そのような行為はダークエルフを愚弄すると考え、


 結果今の体は女性でも男性でも背が低い一方で全体のスタイル自体は幼児体系ではなくスレンダーな圧倒的身体能力を保持する森の人をベースとした。


 ただ、森の人の女性の胸部はとても貧相なのが特徴で、エルのように「それなりの大きさ」である者は存在しなかった。


 遺伝的にもそういうモノが刻み込まれていなかった。


 ムギは男として当然のごとく胸部は「ある程度大きい方が好き」だったので、


 そこでローズルは大幅に「チューニング」と称して神の持つ創造の力によって大幅に森の人を「カスタマイズ」する事にし、「新しい人種と言えなくもない」ものとして今の体を作り出したのだった。


 具体的には森の人は耳がとても長いことに特徴があるが、ローズル本人はそこまで耳が長いわけではなくさらにムギも「ローズルの耳って可愛いよなあ」などと思っていたので耳の形はローズル本人と同じような形状を保った状態にした。


 さらに森の人とは異なり、ハイエルフなどと同じような肌や頭髪の色にしたことで生物学的には「ミックス」な状態となったエルは完全に「通常のエルフ」から逸脱してしまい、メディアンのエルフから見ても「何だこいつ」と思われるようになってしまったわけだが、


 エル本人は「エンシェントエルフ」という崩壊する前のメディアンにいた当初のエルフ族を騙っている。


 エンシェントエルフは背が低いがそこまで貧相な胸部でないなど身体的な特徴などは非常に似てはいるのだが、その存在をよく知る者からは見分けることが出来る違いがそれなりにあり、(頭髪の色とか目の色が異なる)


 やはり特殊なオンリーワンの存在となっていた。


 エルはムギにその事を説明していたが、ムギは「それぐらいのほうが面白いし、何よりめっちゃ可愛いよ」と言って褒めてくれたので、以降彼女は長身であった素の姿を作り変えて完全にエルの姿で定着させてしまった。


 美しさに定評のあるローズルであったが、実はそれを直接的に褒められた事はこれまで無く、フリッグなどに劣る事は一切無かったものの、彼女がガードが甘く性に開放的だった一方でローズルはガードが堅すぎたのでそういった評価をされず、


 逆に「残念な見た目」などと間違った方向から評価されて気にしていた。

 エルフ達は絶対神に意見する事などなかったので、「可愛い」などと言われたのは初めての経験だったのである。


 最近はフレイだけに任せず稀に神々の会議にも参加することがあるエルことローズルに対し、神界の会議所でその姿を目撃した者達は「若返ったというか、青春を謳歌しようとしているというか……」と何ともいえない気分となっていた。


 無論、神に年齢など無いに等しいので見た目が変わっただけであるのだが、

 大人っぽい清楚なイメージから活発で元気なイメージのある少女へと変貌した。

 黙っていると清楚なイメージになる事から、本質的には変わっていない。



『我はこの格好をそれなりに気に入っている。とても動きやすい体であるからな。何よりも地球人が認めたものを尊重せぬとは、器の小さい女だのう』


『ふん、たかが人間の評価に惑わされるとは……原初の神が聞いてあきれる』


 アークは何とか反論しようと思ったものの、ローズルを直視して言葉を吐き捨てることが出来ず顔を背けてしまった。


『阿呆、我々九つの世界を創造した者達は人間の助言をよく聞いたものだが? 貴様がかつて憧れて恋心さえ抱いていたと言われるオーディンもよく人の言葉に耳を傾けていたものよ。神だからと上からしかモノが見えていないというのはどちらの方だ? それで我を批判しようなど、ヘソが茶を沸かすぞアーク』


『はっ、好きに言えばいいさ。いいか、お前が何をしようとしているかは知らん。だが私はお前に情報を与える気は無い。無用な混乱はもう沢山だ』


『ならばここでハッキリさせておこうか。ムギがどうして次元移動させられてきたか……神に服従を迫った唯一の人間の生まれ変わり。そうなのだろう?』


『なっ……』


『ふふっ、やはりそうであったか。フレイが何度か報告してきたことがあったのを思い出したのう。ラグナロクの終焉の際ですら人間がそのような事を出来た試しはなかった。だが、一度だけ……一度だけ神に服従を迫り、その神は後一歩で白旗を揚げる寸前に陥ったことがその後にあったという……それが誰のことでどの世界の事かもわからんが、そういう人間がいたという話は聞いておるな』


 明らかに動揺し、目をまん丸に開いた姿を見たローズルは確信を得る。

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