強敵②と新たな出会い
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14 強敵②と新たな出会い
俺は剣を構えるとスタン状態の巨大イノシシに向かってある攻撃魔法を放った。
剣に魔力を貯めると剣の刀身がかすかに光る。俺は魔法が完成したのを確認すると剣を振るった。
「空間を切り裂き敵を滅っせ! 《空間斬》‼︎」
空間斬
それは空間魔法を攻撃魔法へと使えないかと何日間も考えた結果作り出す事に成功した俺の数少ない現実での努力の結晶なのだ。
名前こそセンスはないがその威力と能力は桁違いに強く、剣から放たれた斬撃は空間に転移し一瞬で目標の敵の目の前に現れる。回避不可能、防御無視の最強の攻撃手段なのだ。
だが、 これを防御する方法は一つだけある。それは自身の体に直接防御魔法をかけること。
さっき言った防御無視とは自身の体にかけないタイプの魔法のこと。だが、防御魔法を体にかけることはおろか、使う事もできない相手にとってこの魔法は最適なのだ。
そんな攻撃魔法をその身に受けたイノシシは悶え苦しみながら怒りの炎をギラギラと目に宿す。
俺は今の一撃でルシフェルだけではなくクリスタルで生み出した剣も同じように空間斬を使っていた。
つまり、ルシフェルを使っておこなった攻撃と同じ事が八本の剣でも魔力なしで出来るのだ。そして何よりも嬉しいのはかける八倍のダメージを与える事が出来る点なのだ。
俺はこの事に気付いてからこれなら勝てる! そう思ってイノシシを見た瞬間、 信じられないものを目にした。
それは自身に飛んでくる数十本の槍だった。
「飛び道具⁉︎」
俺はすぐに剣に「弾き落とせ」と指示を出すと八本の剣はすぐに飛んでくる槍に向かって飛んで行った。
八本の剣は全ての槍を切り落とすと再び戻って来た。
安堵の息を吐いた俺は飛んで来た槍を見た。それは何と…
「毛⁉︎」
そう毛だった。奴は硬化の魔法を毛に使って槍のように飛ばして来たのだ。
頭いいな!
そうツッコミたくなるのをグッ! と抑えると俺は頭をフル回転させてこの槍の対処を考えた。
どうする?このままじゃ、前に進めないぞ?空間斬をもう一回だけ使ってHPバーを一本にしたら攻撃方法が変わるのを信じるか?
いや、それはあまりにもリスクが大きすぎるな…
一か八か突っ込んで見るか?八本の剣を全て防御に使えば何とかなるかも!
でも、もしこの剣が壊れたりして使えなくなったら?
それこそ勝算がゼロになる!
そう考えた瞬間、イノシシは再び体を左右に動かし出した。
もう一回今の攻撃をするつもりか!
くそ! 背に腹は変えられないか!
そう考えた俺は再び剣に魔力を込める。
イノシシが体を一回転させ毛を飛ばしてくるのと、俺の魔法が完成したのはほぼ同時だった。
「間に合え! 空間斬‼︎」
そう叫ぶと俺は全力で剣を振るうとすぐに防御体制に入った。八本の剣を自分の目の前で刃を上下にひっつけ盾を作り出す。
数秒でけたたましい音が鳴り響く。
槍と剣が互いにぶつかりあっているのだ。
「耐えてくれ!」
そう叫ぶが願いは叶わず一本の剣にヒビが入ると同時に周りの剣にもヒビが入っていく。
このままじゃ、剣がもたない!
そう考えた俺は「解散!」と叫びながら剣を自分の後ろに戻した。
すると、数多の槍が俺に向かって飛んで来た。
俺に致命傷を与えそうな槍だけを知覚領域に入って来た瞬間落としていく。
全てを切り倒した時には身体中、切り傷だらけになっていた。
「チッ! やっぱ、全部は防げないか!」
そう言うと俺はイノシシのHPバーを見る。
残り一本……長いな…
今度は自分のHPを確認する。
戦闘中は自分の左上にどういう原理かは分からないがHPバーが現れるのだ。
今のかすり傷で1割ほどHPが減っている。
「今ので一割……直撃食らったらどんだけ減るんだよ…」
そう呟くと今度は後ろに浮いている剣を見る。最初の時とは比べ物にならない程、無残な姿になっていた。
ヒビ割れていつ壊れてもおかしくない剣が四本、少しだけヒビが入った剣が三本、無事な剣が一本あった。
俺は覚知領域を解除し、空中に漂う魔力を剣に込め、少しでも剣の修復を行う。
剣は数秒で魔力をすい尽くした。
結果、魔力を吸って治った剣は三本、残りの四本はヒビが少しだけ引いただけだった。
俺はため息を吐くと覚悟を決めた。
「ハァー……運が良ければ勝ち、もたなかったら負け……条件が厳し過ぎるだろ…」
だが、俺はどんなに最悪の状況の中でも諦めなかった。
現実のネットゲームでフロアボスに一撃死され死のうが、惨めな死に方を晒そうが何度も挑み続けた。剣一つあれば何とかなる。そう信じ続け、少しずつ情報を集め、最終的には勝ってきた。
どんな戦いもだ。
なら、この戦いも同じだ。最悪の状況、自分の命がかかった戦い……そんな状況でも俺が戦える理由…それはもう一度あの現実に戻ること! そして、この世界を自分の手で攻略したい! マヤに会いたい! そして俺は……何よりも信じてきた剣を持っていること‼︎
そう心の中で叫ぶと同時に俺は最後の切り札を切った。
自身の体内にあるであろう魔力、そして体の外、空中に漂う微量の魔力を全て集めそれを自身の体に纏う。
それを使い慣れている一つの存在として姿に変える。
バチバチと言う青白い輝きが体を纏う。
自身の体に電撃を纏い、一撃、一撃を雷撃の如き重さに、天より轟く雷の如き速さを、自分自身を一つの雷へと姿を変えるこの技のことを俺は…
「《雷神》」
と読んでいる。
魔力消費が激しいため、全力では使えないが…
再びイノシシが体を左右に振り一回転すると毛を硬化させた槍を飛ばしてきた。
凄まじい勢いで飛んできた毛を一瞬で避ける。それくらいの事は出来る。
避けられたことに怒ったイノシシはこちらに向かって全力で駆けてくる。
俺はゆっくりと片足をさげ、剣を構える。
周りの剣は俺の剣を中心に刃を少しだけ中側に向けるとピタリと止まった。
「時間がない……この一撃で決めさせて貰うぞ……イノシシ…」
イノシシは何を感じたのか一瞬だけ、スピードを落としたが再びスピードを上げる。
顔を左右に振ることによって俺に向かって硬化させた槍を飛ばしてくるが俺は全て無視する。
この最後の一撃を確実な一撃へとするために。
そして、イノシシとの距離が十メートルを超えた瞬間、俺は最後の一撃をイノシシへと放った。
「全てを切り裂く雷刃の刃《クトネシリカ》‼︎」
そうして全ての剣を前に突き出した瞬間、凄まじい閃光と轟音と共に全ての剣から巨大な雷の刃が現れた。その数九本。巨大な雷の刃はイノシシの体を貫き、一瞬で絶命させたがそれだけでは止まらず、さらに前方へと突き進んでいった。
俺は剣を一回転させると鞘に戻した。
そしてその場で倒れた。
八本の剣は全て《クトネシリカ》の威力に耐えきれずに魔法が終わると同時に砕け散ってしまった。
悔いはない。何とか倒すことが出来たし、何よりも生き残れたことと、ゲームの時の借りを返せたことが嬉しかった。だが…ただ一つ
「もう体が動かん…」
そう。勝ったのは良かったが、あまりの負担に体が全然動かないのだ。
多分、これが世に聞く魔力枯渇なるものなのだろう…
などと考えているとポツポツと雨が降り出した。
「マジかよ…さっきまで晴れてただろ?」
そんな事を言っていると突然、めまいと頭痛が襲ってきた。
「グ!」
何だこれ⁉︎ これも魔力枯渇の影響なのか?
すると今度は目の焦点があったり、合わなかったりしだした。
気持ち悪! なんか…ガンガンする!
あれ、前どこに行った?
それを最後にプッツリとリュートの意識は途切れた。
ーーーー
次に俺が目を覚ましたのは知らない木で出来た部屋の中だった。
中は少しだけ薄暗かった。
少しだけ首をよこに動かすと、煌煌と光り輝く炎が暖炉の中で鍋を温めているのが目に入った。
さらに横目で辺りを見渡すと暖炉の横にはロッキングチェアがあり、その上には二本の白銀の鞘に入ったショートソードが立てられていた。
ロッキングチェアの左側には長方形の木の机と椅子があった。大きさは二人用くらいである。それ以外はキッチンとタンスがあるだけだった。
部屋は意外に広い。
俺が村で借りた部屋の二倍とちょっとはある。一人暮らしには持ってこいの広さがある。
そんな事を考えていると突然扉が開いた。
俺はついそっちに目を向けた瞬間、今まで半開きだった目をゆっくりと開いていった。
そこには緩やかに流れる金色の髪の毛、透き通るような白い肌、全てを吸い込むかのようにどこまでも清らかな水色の瞳、完璧なまでのほっそりとした桜色の唇、そのスレンダーな体からは似つかわしい女性特有の膨らみがこれでもかと言うほど白銀の軽装鎧の上からでも見てわかるほど主張していた。
まさに完璧の一言、これ程の存在がいていいのかとまで言いたくなる程、まるで一つの絵画から飛び出してきたと言うわれても納得してしまうほどの美しい少女がそこには立っていた。
ちょっとだけリュートと巨大イノシシの戦いを急いでしまったところがありますが許して下さい…笑
さて、最後に出てきた少女は一体何者なのか! 気にまりますね!
あと1話と2話を少し変更&書き換えた場所があるのでそちらも読んで頂けると幸いです!




