強敵①
今回も少し長めに書いています。
13 強敵①
俺は今、昨日狩りをした森を一人で走っている。理由はまぁ後々分かるとしてボス攻略の日付が決まった。
ーー昨日俺抜きでどうやら全員の無事を祝して祭り騒ぎ兼会議を開いたらしいーー
そこで四日後の昼から攻略を始めることが決まった。
マヤが言うにはギルド 一矢団結とチーム 鷹の爪、後俺たちの二人が参加することが決まったらしい。
俺が参加するのは二日前にすでに話している。
陣形も大体決まったらしく、まず前衛をザルド+二人の剣士職の計三人、中衛はガーディガンなどの防御系の職業、計十二人、そして後衛が、副リーダーの縦乃宮率いる魔法職の計五人、残りの三人は後衛の守りに配置されている。
ちなみに元βテスターは前衛に二人、中衛に六人、後衛に二人配置しているらしい。
俺とマヤは前衛、鷹の爪からはミドリとカイが前衛に参加する。中衛はカールとユイがボス戦からは参加し、それまでは中衛の警護を行うらしい。
以上がボス攻略の日付と陣形、以下二十九人で攻略を始めることが決まったのだ。
と同時にボス攻略をするにあたって各自レベル上げをして攻略に備えろとの報告があったため、俺は今ある場所に向かっている。
マヤがいないのは単純にゲームをしているからだ。
どっちが多くレベル上げができるか競うためにわざと別行動をとっているのだ。
今頃、信じられない勢いで魔物を狩っているのだろう……なんだが怖いな…いや!
俺なら大丈夫! 大丈夫のはずだ! 大丈夫であってほしい…兎に角俺は今ある実験も含めて一気に経験値を稼ぐために奴がいるであろう森の奥深くを目指して走っているのだ。
走ること三十分、突如巨大な振動が全身を襲った。
「おわっ! じっ地震か⁉︎」
そう叫ぶと同時にこの揺れは地震ではないことがすぐに分かった。
その理由は揺れがリズミカル、強弱の差がはっきりと分かるからだった。
そして、それは俺が向かっていた方向から起きているのだ。しかも徐々に近づいて来ている。
「おいおい…嘘だろ?」
つい口からそんな言葉が漏れてしまった。
俺が向かっていたのはこの森の深奥部、そこにはかつて戦い負けた巨大イノシシがいるはずだったのだがどういう訳かそいつが俺に向かって突進して来ているのだ。
俺は瞬時に思考を巡らせ一つの答えに行き着いた。
「誰かがイノシシを怒らせた?」
だがなんのために? メリットがなさすぎないか?いや、もしかしたら俺と同じ考えの誰かが奴を怒らせ、そいつから巨大イノシシが逃げ出すために走っている?そんな事がありえるのか? てか たまたまにしても俺の元に来てくれるのは好都合だな。
今の俺のレベルは七。奴はゲームの時は十だった。ならこの世界以外の魔法が使える俺が勝てないはずがない!
俺は心の中でそう叫ぶとおなじみ愛剣となりつつあるルシフェルを鞘から抜き、左手で持ち変えると俺はあらゆる攻撃を防ぐ防御結界を張った。(見た目はエヴァに出てくるアレみたいな形)
地響きがどんどんと近づいてくる。
俺は防御結界だけに魔力を注ぎ込みこれから起きる戦いに備えて集中力を高めていく。
またまたこんな時ではあるが服装は昨日と同じ、黒色のぴっちりとしたやつに皮の胸当て、その上から紺色のコートとマントを羽織っている。
話を戻して
心の中で数を数える。
一……二……三……今‼︎
そして目を見開き顔を上げた瞬間、想像を遥かに上回る姿と衝撃が頭の中と全身を貫いていった。
「ぐおぉぉぉぉぉぉお!」
気合の声をあげながら何とか巨大なイノシシの動きを止めることは出来たが全ての衝撃を吸収しきれずに俺は数十メートル後ろに吹っ飛び木を二本ほどクッションにし、やっと止まった。
幸いなことに自身にも何個かの防御魔法をかけていた為 何とかダメージはゼロだがそれでもこの威力……先が思いやられる…
俺は立ち上がると四十メートルほど先に立ち、こちらを睨みつけてくる異形の存在に目を向ける。確かにゲームの時に見た姿と大して変わらない。
だが、決定的に違うことが一つある。
それは大きさ。ゲームの時は縦五メートル、全長六メートルほどだったのが今目の前にいるイノシシは縦だけで十メートルはあり、全長はゆうに十五メートルは超えている。
もうイノシシのレベルを見
どうやらイノシシも俺をちゃんとした敵として認識してきたらしくイノシシもどきの上にレベルとHPバーが出現した。
その瞬間、今回二つ目のゲームの時とは違うことを見つけてしまった。
「HPバーが……三本? しかもレベルが……十四⁉︎
は? 何だよその無理ゲー」
俺の今のレベルは七、だが目の前のイノシシもどきはその二倍の十四……正直話にならない。
この世界にない魔法が使えたとしても今の俺の魔力量では大した魔法も発動できない。
だとすると俺がこいつに勝てる勝率は一パーセントにも満たないかもしれない。いや、満たないと言っていい…
だが、なぜか俺はこんな状況なのにワクワクしている。
あれ? 俺なんか違う扉を開いてしまったのか?
いやいや今は戦いに集中!
そう言うと俺は口元を少し歪め笑うと実験と言う名の激闘を始める先手を打った。
「紅蓮の炎を体に纏え!《 ファイアーストーム》‼︎」
俺は右手に持つ剣を体より後ろにひき、何も持っていない左手を巨大イノシシに向け、斜め上に突き上げた。
すると体から魔力がなくなる感覚と同時にイノシシが立っている足元から凄まじい勢いの炎の渦が吹き荒れた。
だが、それだけでは終わらない。
ここまでは前やった時に分かっていたことをしたまで…
次からが出来るかの実験なのだ。
「チェイン‼︎」
そう叫ぶと頭の中で次の魔法をイメージする。
「その一撃で雷鳴を轟かせろ! 《ライトニング》‼︎」
そう叫びながら斜め上に突き上げていた腕を今度は斜め下に振り降ろすと同時に天空より
一筋の青白い光が荒れ狂う炎の渦の中心に轟いた。
凄まじい閃光と共に衝撃と爆発音が響きわたるが俺の魔法はこれでもまだ終わらない。
「まだだ! その紅蓮の炎と天よりきたし雷撃よ、今一つに‼︎ 合技《雷炎撃の渦》‼︎」
その瞬間、紅蓮の炎の周りからバチバチと言う音と共に炎の色は赤から青白い色へと変化し、 先ほどの《ファイアーストーム》とは比べ物にならない程の威力を発揮した。
完全に姿が見えなくなったイノシシは叫び声だけが周りに聞こえた。
数分後、 魔法の効力が消えるとそこには身体中から煙をあげる巨大イノシシが立っていた。
俺はHPバーを見る。HPバーは一本と半分ほどなくなっていた。
残り半分…
そう心の中で呟くと俺はさらに思考を深める。
今ので半分か……俺の魔力はあと四割から三割、 合技はもう使えないな…
なら、 剣技で攻めるだけ!
俺は剣を両手で持ち刃を地面に向けると一言
「知覚領域」
その瞬間、俺を中心に直径五メートルのサークルが出来上がった。それは一瞬だけ光るとゆっくりと光を落としサークルも消えた。
知覚領域
これは自身を中心に直径五メートル以内に入ってきた全てのものを感知する事が出来る俺の持っている魔法の中では結構頻繁に使って来た魔法だ。
この魔法のメリットは少ない魔力で絶対的防御力と攻撃力を生み出す事が出来る点。
デメリットは意識が乱れてくると感知能力が落ち、完璧に攻撃を知覚できない事。
そんなデメリットがありながらもこの魔法を使ったわけは奴が飛び道具を使ってこないからである。
飛び道具はいつ使われるか分からない、どこから飛んでくるか分からないため長時間、周りに気を配らないといけないが、 それがない敵に対しては最強の守りとなる。
故に俺はこの魔法を使ったのだ。
俺は息を吐く。その瞬間、空気がどのように動いているのかが感覚でわかる。
「成功だ…なら次は…! 」
今からやることは一か八かの大勝負、もしこれからする事が出来なかった場合、俺の負けはほぼ確定してしまう。
だから俺は今までで初めてと言っていいほど心の中で祈っている。
頼むから成功してくれよ…
そう心の中で呟くて目を閉じ再び深呼吸をすると目を開けた。そして一言
「頼むぜ……ルシフェル……俺に力を貸してくれ……クリスタル精製! 現れよ‼︎ 八本の剣よ‼︎ 」
俺の両手にある剣、ルシフェルが一瞬だけほのかに光ったと思った瞬間、
キィィィィィン
と言う音と共にパキパキと言う音が俺の後ろから聞こえて来た。
俺はゆっくりと後ろを向く。
そこにはルシフェルと同じ形、同じ大きさの半透明の剣が合計八本、俺の後ろで弧を描きながら宙に浮き、回っていた。
「やった…‼︎」
ついそう言葉を漏らした俺は大ダメージを受けスタン状態にある巨大なイノシシに目線を向けると言った。
「この勝負……俺が勝たせてもらうぜ! 」
そう叫ぶと俺は剣を構えた。
すると俺の後ろで宙に浮いていたクリスタルの剣は
ジャキン!
と言う音を出しながら巨大イノシシに矛先を向けた。
今回は新しいものをちょっと沢山挑戦して見ました!
魔法詠唱から出来てない一人称、合技からルシフェルの新たなる能力、正直説明が少ない気もしたのでこれは何? と思った人は感想欄から言っていただけるとありがたいです!




