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◇147 ポイント特典4





「あ、ポイント貯まった」


 今日も日課の【店舗召喚】をしていると、ユミナリア様からもらった加護である【ポイントカード】のスタンプが特典をもらえるところまで貯まったのに気がついた。

 もらえる特典マークまで倍々になっていくから、だんだんと間隔が空いてきたね。次にもらえるのは四十ポイント後……二百回も召喚しないといけない。一日に三回か四回召喚するとして……。五十から七十日後……?

 次は春になってからだなあ。

 まあ、とりあえず貰えるもんは貰っとこう。ただ、このポイント特典、私の【店舗召喚】以上にランダムなんだよねえ……。特典ガチャって言ったけど、まさにそれだ。

 とはいえ、一回目が聴力が上がる『猫耳カチューシャ』、二回目が意中の相手に愛を告白してしまう『告白飴』、三回目が遠くの人にも手紙を届けられる『シーリングスタンプ』と、そこまでのハズレは引いてない。

 まあ、告白飴はちょい微妙だが……。

 琥珀さんが言うにはこれらは神様が地上で作った魔導具アーティファクトたぐいらしいが、そこまで重要な物でもないので、飽きて倉庫に入れたまま廃棄処分になりかけているやつらしい。

 神様がいらないなら人間が活用しましょ、ということらしいけど、使い道が限定されるよねえ……。

 今回は役に立つ物が当たるといいけど。いや、こういう物は欲張るとろくなものが当たらない。きっと物欲センサーが働く。無心、無心だ。無心でガチャを引くのだ。晴雲秋月、明鏡止水。


「特典ください」


 ポイントカードから光が飛び出して、召喚場の地面にドサリとなにかが落ちた。それは四角く頑丈そうな作りで、持ち運ぶ取っ手が付いている箱だった。


「え、アタッシュケース?」


 ちょっと待って! まさかの現ナマじゃないよね!? この箱の大きさだと、軽く億は入ってるんじゃない!?

 というか、円でもドルでも、地球のお金なんてあってもどうしようもないんだけど!

 いや、私の店でなら使えるのかしら……? ぼったくり金額じゃなくて定価で買えるとか?

 隣にいたお父様が訝しげにアタッシュケースを覗き込む。


「サクラリエル、そのカバン? が特典なのかい?」

「いえ、たぶん中に入っているものが特典なんだと思うんですけど……」 


 とりあえずアタッシュケースを持ってみる。あら? 思っていたよりも軽い。札束現金ならもっと重いと思う。お金じゃないのかな?

 ああ、現金ならアタッシュケースじゃなくて、ジュラルミンケースか。勘違いしてた。


「えーっと鍵はかかってないか」


 両サイドにある留め金を外してパカリとアタッシュケースを開くと、そこにはいろんな眼鏡が所狭しと並んでいた。え? なにこれ……?

 真ん中に文章が書かれた一枚の羊皮紙がある。……違う、羊皮紙じゃない。これは眼鏡拭きだわ。間違いなく眼鏡拭きだわ。

 

「『眼鏡セット詰め合わせ:スペシャルパック』……?」


 え、眼鏡の詰め合わせなんてあるの? なにそのお中元とかお歳暮みたいなの……。

 確認してみると眼鏡が三列六段で十八個、下の段にも入って、全部で三十六個入ってた。多いなあ……。

 この世界にも眼鏡はある。リオンも普通にしてるし。ただ、やはりお高いもので、かなりの金額になるらしい。とても平民には簡単に手の出ない金額だとか。

 視力の低下は回復魔法でも治らないらしく、目の悪い貴族は大抵眼鏡をしている。使用人でもかけることは普通にあり、眼鏡をかけることは裕福であるという、一種のアピールにもなってるとか。

 そういった意味ではこの眼鏡セットはかなり貴重な物であるといえなくもないが……。


「あれ?」


 私はその中にあったボストン型の眼鏡をかけてみて、おかしなことに気がついた。ひょっとしてこれ、伊達眼鏡?

 レンズに度数が入ってない。完全にファッション眼鏡だ。

 でもなんか、変な感じが……。

 違和感に戸惑う私に、横で見ていた琥珀さんが口を開く。


『それらは特殊な付与がされている眼鏡だな。おそらくは眼鏡神様の作った魔導具だろう』

「そんな神様いるんだ……」


 眼鏡神て。いや、この世界、いろんな神様がいるからいてもおかしくないんだけどさ。

 それぞれの眼鏡の下に眼鏡拭きの説明書が付いてる。芸が細かいな……。

 えっと、このボストン型眼鏡の付与は、と。


「『ボストン型は1930年代にアメリカで生まれた、逆三角形に丸みをつけた、柔らかく、カジュアルな印象を与えるタイプの眼鏡である。クラシック系の一つであり、汎用性が高く、視野を確保しやすいデザインのため、機能性に優れる。丸みのあるデザインのため、面長、四角顔によく似合い、知的で優しいイメージを見た者に与えることができる。逆に丸顔にはその丸さを強調してしまうためにボストンは合わせにくいとされるが、ビジネスにカジュアル、どちらにも使える万能型眼鏡である。幅広いシーンで活躍できる眼鏡と言えよう。類似型であるウェリントン型と比べると……って、長いな!?」


 眼鏡の特徴じゃなくてさ! どういう付与がされているかが知りたいんですけど!?

 しかもこの説明、日本語というか、地球での説明じゃないか。アメリカとか。なに? 私に合わせてくれてるの? お父様たちには読めないからある意味ありがたいけども。

 とにかく長ったらしい説明をすっ飛ばし、最後の方に書かれていた付与効果を見つける。


「【拡大視】の付与? 眼鏡のツルに指を滑らせると遠くのものが近くに見える……。え? ホントに?」


 私は半信半疑で眼鏡のツルに指を滑らせた。おお!? 本当に遠くのものが近くに見える! ズーム機能があるのか。これは便利かもしれない。 

 私は興味津々でこちらを見ていたお父様にメガネを渡し、その説明をした。この眼鏡、手にした人のサイズに拡大縮小するアジャスト機能もあるらしい。


「へえ! 本当に遠くのものが近くに見えるね! これは物見に役立ちそうだ」


 まあ、見張りをする人には便利だよね。

 こっちのはなんだろう。また長い説明文が……飛ばして、と。【熱感知】の付与?


「うわ」


 眼鏡をかけてみると、まるでサーモグラフィーのように、熱源が赤く見える。どこかの捕食者プレデターの視界みたいだね……。使えるかしら、これ。

 一応ツルを指でスライドすることによってオンオフはできるみたい。

 こっちのは……ツルに指を滑らせると眩い光を放つ……? それって自分も眩しくならない?

 このサングラスは……光を遮ることができる。眩しくならない。いや、サングラスって元々そういうもんじゃないの……?

 これは……魔眼殺し。魔眼を封じ込める。魔眼なんて持ってないわ!

 視力を1.0にする眼鏡、視力を1.5にする眼鏡、視力を2.0にする眼鏡……。ここらのは普通の眼鏡かな?

 いや違う、普通の眼鏡はその人に合わせた度数が入って矯正するもので、強制的に1.5とか2.0にするものじゃないわ。これ、元の視力が0.5の人でも2.0の人でも、等しく1.5にしちゃう眼鏡だ。便利は便利だけど!

 うむむ、半分くらいはネタのような眼鏡だな……。この【認識阻害】の眼鏡は役に立ちそうな気もするけど……。眼鏡をかけるだけで別人のように気づかれなくなるってのは、来月の建国祭とかで使えるかな?

 だが、中にはちょっと危険なものもいくつかあった。

 【透視】の眼鏡。これはダメだろう。スケベ眼鏡じゃん……。お父様がちょっと興味を示していたが、お母様の目が笑っていない笑顔に視線を逸らしていた。

 【魅了】の眼鏡。見た相手を虜にする、というほどのものではなくて、好印象を与える、というレベルのものだけど、使い方によっては悪事にも使えるよね……。

 【レーザービーム】の眼鏡。危なくて使えるかっ! しかも使い捨てだし!

 ちょっと面白かったのは【双視界】の眼鏡。

 これって二つの眼鏡が対になっていて、右目と左目でそれぞれ違った視界でものが見えるんだ。

 一つを私、もう一つを律がかけると、左目には普通の視界が見えるけど、右目には律の見ている景色が見える。お互いの視界を共有できるのだ。中継カメラのような使い方ができるかもね。

 あと【索敵】の眼鏡。周囲数キロ圏内にいる、人間や動物などの大きな生き物の位置がわかる。片目のレンズに光点として表示されるが、これも眼鏡のツルを指でスライドすることにより範囲を広げたり狭めたりできる。

 【天気読み】なんて眼鏡もあった。空を見ると、これからの天気がわかるのだ。まあ、便利っちゃ便利か。


「適当にお遊び感覚で作ったような眼鏡だね……」

『いや、眼鏡神様は本気で作ったと思うぞ。あの方は眼鏡に関しては一切の妥協を許さぬ。まあそれは眼鏡に対してだけで、かける人間に対してはあまり考えていないかもしれんが……』


 琥珀さんの言葉に感心したらいいやら、呆れたらいいやら。神様にもいろいろいるんだな……。

 







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