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◇118 ポイント特典2





 すっかり秋となり、風が冷たくなってきた今日このごろ。長く滞在していた国賓の方々が帰ることになった。

 まずはエルフの姉妹、ミューティリアさんとエルティリアちゃんがエルフの里へと帰ることになった。

 これは律に頼んでオボロで送っていってもらった。帰ってきたら、オボロに美味しい物を食べさせてあげよう。

 次に福音王国の聖女、ルーレットさんが別れの挨拶に来た。

 最後に少し話をしたのだけれども、よければ一度福音王国にいらして下さいと誘われた。まあ、機会があれば、と曖昧に躱しておいたが。

 その時の会話で、福音王国にも神獣が一匹いることを知った。しかも猫の神獣らしい。

 琥珀さんと似てるのかな、と言ったら、『我は猫ではない!』と怒られた。

 なんでもその神獣は猫なのに二本足で歩くらしい。『長靴を履いた猫』みたいだね。

 それを聞いた琥珀さんが難しい顔をしていたけど、なんだったんだろ?

 次にルカとティファ、それにネロ殿下が帰ることになった。時間停止の付与がされた収納箱には、うちの店で買った日持ちしない食べ物が山ほど入っている。

 それ以外のぬいぐるみとかお酒とかはそのまま馬車に積んで帰るようだ。馬車の窓からクマの顔が飛び出しているけど、いいのかアレ……。


「ではな、サクラリエル! 半年後にまた来るぞ!」

「またね」


 二人が秋風と共に去っていく。なんか急に静かになっちゃったな。次に会えるのは春か。

 みんながお土産に持って帰った商品は、ほとんどが食べ物か飲み物だ。あれが尽きたら大変かもな……。

 うちの皇王陛下でさえ、三日に一度は私のお店で食べないと満足しない身体になってしまったからなあ……。

 そのおかげで、城の料理長が奮起し、お店のメニューを参考にした新しい料理をどんどんと開発している。

 今現在、他国に比べて食に関してはシンフォニア皇国は一歩も二歩も先んじていると思う。目指せ、食の都ってね。

 そして今日、リーシャとレティシア殿下の、帝国御一行様も帰ることになった。

 お城の城門前でリーシャはエリオットと別れを惜しんでいる。

 皇王陛下と皇妃様もリーシャに優しい声をかけているようだ。彼女がエリオットに嫁いでこの国の皇妃になるのなら、義理の両親になるんだよね。リーシャにとって優しい義父母になると思うよ。

 レティシア皇女は私のところへ来て、万能薬のお礼を言われた。

 正直に言うと、それは付与ポーションを作ったリオンとエステルの『ギフト』のおかげであり、私は作るのに全く関わっていないので、なんとも後ろめたい。


「帝国が生まれ変わることを願います」

「必ず。この秘薬を下された神々に誓って」


 第一皇子の体調が万全になり、レティシア皇女が庇護するリーシャとエリオットの婚約が発表されれば、一気に情勢は第一皇子側へと傾くと思う。

 ちなみにあの侍女頭や護衛騎士たちはすでに帝国に送られているそうだ。

 レティシア殿下の話だと、自分たちが帰ってから帝室立ち合いの元で裁判を受ける段取りになっているらしいが、おそらくそれまで生きてはいないだろうとのこと。

 まあ、そうだろうな。第二皇子にしてみたら、自分の作戦を失敗させただけではなく、いろいろと不利になる情報も持っている人間なんて、いて欲しくないだろうからね。間違いなく裏から手を回すだろう。

 リーシャには秘密に、と念を押された。ずっと虐げられてきたとはいえ、優しいあの子は気を病むだろうから、と。

 思うところはあるけれど、これは帝国むこうの問題だし、私だって家族を、たとえばお父様やお母様を殺そうとしたヤツを庇うなんてことはしないと思う。


「元気でね、リーシャ。頑張って」

「はい! もらったレターセットでお手紙をいっぱい書きますね!」


 最後にリーシャと握手をして、去っていく帝国の馬車を見送った。


「行ってしまいましたね」

「なに? もう婚約者ロス?」

「ろすってなんです?」


 名残惜しそうなエリオットを揶揄からかったが、意味が通じなかったか。


「やれやれ、これでやっと普通の生活に戻れるな。ふむ、そう思ったら腹が減ったな……。サクラリエル、『豊楽苑』を出してくれんか?」

「ええー? 一昨日も食べたじゃないですか……」


 おいたん、ラーメン大好き過ぎない? うちの皇王陛下が太ってメタボになるのはあまりよくないと思うんだけども。

 まあ、私もお腹が減ったからいいけどさ。

 城の中庭に『豊楽苑』を呼び出し、女性陣のリクエストで『ラヴィアンローズ』も召喚する。この二店舗は特によく召喚されるなあ。御年配の方には『くま寿司』の方が喜ばれるけれども。

 あ、そういえば。

 私はポシェットから女神様にもらったポイントカードを取り出す。今の召喚で、ちょうど二つ目の特典がもらえるようになった。

 ポイントカードのことはまだお父様とお母様にしか言ってない。

 なにがもらえるかわからないし、神様からのプレゼントなんて、これはもう別の『ギフト』と変わらないからね。あまり大っぴらにはできないとの判断だ。

 なにせ特典ガチャだからねえ……。変なの出ないといいけど。

 まさか今度はウサミミじゃなかろうな? バニースーツとか? いかん、どうしてもコスプレ方向に考えがいく。

 ま、帰ってからもらうことにしよう。



          ◇ ◇ ◇



「えーっと、特典下さい」

「そんなお願いの仕方でいいのかい……?」


 家に帰ってからさっそく特典をもらうことにした私に、お父様が不安そうなツッコミを入れる。

 仮にも神様に頼むのにフランクすぎるってことなんだろうけども。だからって、かしこみかしこみ、なんてやってられないしねえ。

 ポイントカードから光の玉が飛び出して、ポンッという音とともに、テーブルの上にゴトッ、と重たい物が落ちた。なにこれ? 


「飴玉……?」


 大きめな瓶の中には小さな丸い飴玉のような物がいくつも入っていた。薄ピンク……桜色の飴玉がカラカラと中で音を立てる。

 瓶はコルクのような栓で閉められていたが、側面にはご丁寧にラベルが貼ってあった。


「『告白飴』……?」


 告白飴ってなに? あ、横に説明書きが書いてある。なになに……?


「これを相手に食べさせると、その相手が自分をどう思っているかその愛を告白してしまいます……?」


 いや、愛って。ちょっと待って、これって自白剤じゃないの……!?

 いや、相手が自分をどう思っているかがわかるだけなら、自白ではないのかしら? なんとも思っていなかったら、告白もないってことなのかな?

 よくわからんものが当たってしまったなあ。これって人間関係が壊れるんじゃないの……? ちょっと怖いね。愛されていると思ったら、愛されていなかった……なんてことにもなりかねないし。

 なんだよ、これ。恋愛の神様がお遊びで作った飴なんじゃないの?

 私が眉根を寄せていると、お母様がひょいと私の手から瓶を取り上げてしまう。そしてその中から自らの手の上にコロンと一つ取り出した。え?


「はい、あなた。あーん」

「え!? アシュレイ!?」


 ピキ、とお父様が固まる。え? お母様? やるの? やっちゃうの!?

 大丈夫だとは思うけど、ちょっとドキドキしてしまう。


「えと、アシュレイ? 一旦落ち着こうか?」

「はい、あーん」

「いや、だからね?」

「あーん」


 あかん。お母様、マジだわ。瞬きを一切しない目がちょっと怖いわ。

 ぐいぐいと飴玉を押し付けてくるお母様に、お父様もついに根負けしたようで、観念したかのように少し口を開くと、そこへ飴玉が強引に押し込まれた。


「わ、すぐ溶けた……」


 飴とはいうが、口に含むと一瞬にして消えてしまうらしい。

 で、効果は……? お父様は特に変わったようには見えないけど……?


「だ、大丈夫ですか? お父様?」

「うん、特に変わったところは……」


 あれ? これってお母様をなんとも思っていないとかそういうことじゃないよね!? 家庭崩壊とかイヤなんですけど!?

 お母様も不安そうな表情を浮かべていた。


「あなた、その……」

「ああ、アシュレイ。君の声を聞くだけで、僕はとても幸せな気持ちになる。君の目が僕を見てくれるだけで、とても暖かい気持ちになるんだ」


 お父様から漏れた突然の愛の囁きに、お母様が真っ赤になる。お父様も『僕はなにを!?』という表情で口を押さえた。


「え、お父様、自分の意思とは関係なしに喋ってるの?」

「いや、普通に話そうとしたら、アシュレイの素晴らしさを話してしまう。こんな素敵な女性が僕の妻だなんて、どれだけの感謝を神に捧げればいいんだ。君がそばにいるだけで、僕はなんでもできそうな気がする。どんなことがあろうとも、君を守り、命を賭けて生涯愛し続けるよ!」


 また!? とお父様が再び口を押さえた。というか、なんだその歯の浮くようなセリフは……! こっちが恥ずかしくなるわ! 

 お母様はもう真っ赤だし、控えている律やアリサさん、メイドさんたちまで顔が赤いじゃないか。

 お父様にとってはキツいかもしれないけども。


「えーっと、思わず口にしちゃう……ってことです?」


 私の言葉に口を押さえたお父様がこくこくと頷く。


「話している内容は本音なんですよね?」


 一瞬、お父様はしらばっくれようとしたが、やがてこくんと頷いた。

 お母様がお父様に勢いよくぎゅっと抱きついた。


「あなた……嬉しいわ!」

「サクラリエル、これっていつまでこの状態なんだい? アシュレイへの愛はいくらでも語れるけど、この気持ちは彼女にだけ伝えたい。世界で誰よりも僕が愛しているってことを、彼女の心にだけ刻みつけたいんだ!」


 いやもう、お父様が顔を真っ赤にして泣きそうな顔で話すもんだから、ちょっと引いちゃったよ……。恐ろしい薬だわ、これ……。

 一度話し出すと、どうにも愛の言葉を語らないといけない感じになるみたい。


「えーっと、効果は十分のようですね」


 瓶の説明書きを確認する。キツい十分だなあ……。飲まされた人にとっても、周りの人にとっても。

 十分後、効果が切れたお父様がぐったりとソファーにもたれていた。お父様の腕を抱いたお母様はその横でにっこにこだったけども。


「サクラリエル……。その飴は無闇に使わないように。わかったね……?」

「りょ」


 面白いかもだけど、しばらくはポシェットの中で封印しとこ。これはある意味、とても危険なブツだ。

 と言ったが、寝る前にお母様にこっそりもう一つねだられた。

 寝る前に二人だけでもう一度体験したいらしい。

 …………ま、仲良きことは美しきかな。

 

 






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