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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第三章 『テルス』

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第十二話後編 『人類の希望』

 ついに魔王正規軍がルージアの第一防衛ラインに到達します。戦力差はおよそ1:10

 絶望的状況に追い込まれながら

一つの光が彼らを奮い立たせていました。

援軍を信じて、信じて戦うのみ

 天駆ける七つの流星群。


 グレンの飛行魔法によって移動する英雄たちは翔ぶ。眼下の景色は瞬く間に流れ去り、風圧が全身を叩く。


「グレン、少し速度を落としてくれ!」


 アークが声を張り上げた。


 この速度では、会話をすることさえ容易ではない。ほかの者たちも、身体を保つだけで精一杯だった。


「分かりました」


 グレンが速度を緩める。


「セレネ、皆に付与を頼めるか。これでは体がもたない」


「承知しました」


 セレネが杖を掲げた。


 彼女の魔力が広がり、六人の身体を包み込む。身体能力を強化し、加速による負荷に耐えられるようにする付与魔法だ。


 やがて、全員の動きが安定した。


「これならば」


 グレンは仲間たちの様子を確認すると、一気に加速した。


「さて。皆様、作戦についてお話しします」


 アルクが口を開いた。


 彼は周囲の景色に目を向けることなく、淡々と話し始める。


「正面から敵を受け止め続けるのは得策ではありません。こちらの兵力が揃う前に消耗してしまえば、後が続かなくなります」


「では、敵の後方を突くのか?」


 シリュウが尋ねた。


「はい。六人で敵の後方へ回り込み、背後から攻撃を仕掛けます。目的は敵軍の殲滅ではありません。隊列を乱し、指揮系統に混乱を生じさせることです」


 アルクは一つ一つ言葉を選ぶように続けた。


「正面の防衛線が持ち堪えている間に、敵の後方を攪乱する。各国の軍勢が揃うまで時間を稼ぐことが出来れば、こちらにも勝機が生まれます」


「ふむ、挟撃というわけか」


「その通りです。ただし、私たちが敵の後方へ向かっている間、連合軍の指揮を執る者が必要になります」


「それはアルク殿が?」


 クリスチアーノが尋ねる。


「ええ。私が地上へ降り、アトランティス王に作戦を伝えます。王の許可を得て、連合軍の指揮を引き受けるつもりです」


 アルクの声に迷いはなかった。


 すでに必要な手順は、彼の頭の中で組み上がっている。


「それと、アーク様」


「何だい?」


「初手に出来るだけ大きな攻撃魔法を撃ってもらいたいのですが」


 アルクの言葉に、アークはわずかに目を見開いた。


「大きな攻撃魔法? 魔力の殆どを使ってしまうよ?」


「期待しています」


 アルクは静かに答えた。


「もちろんグレンさん、あなたにも撃ってもらいます」


「分かりました。大軍向けの攻撃ですね」


 グレンは即答した。


 その返事に、アルクは満足そうに頷く。


「ええ。敵の後方に大きな一撃を与え、混乱を広げます。正面の兵たちにも、反撃の機会が生まれるでしょう」


「反撃の狼煙、というわけか」


 シリュウが口元に笑みを浮かべた。


「そうです。ここからが勝負になります」


 アルクの言葉を最後に、七人の間に短い沈黙が流れた。


 それぞれが、これから始まる戦いに意識を向ける。


     *


 その頃、第一防衛ラインでは激しい戦闘が続いていた。


 ルージア帝国軍は、すでに総兵力の半数近くを投入している。そこへアトランティス王率いる第一陣も合流し、両軍は一体となって魔王軍第一波を迎え撃っていた。


 しかし、敵の数はあまりにも多い。


 兵士たちは隊列を維持しながら、押し寄せる魔物や魔族を必死に食い止めていた。盾を構え、剣を振るい、倒れた仲間の前に別の兵士が立つ。


 誰もが、この防衛線を突破させまいと戦っていた。


 次の援軍は

まだ到着していない。


 各国の軍勢が集結するまで、どれほどの時間が必要なのか。それを考えれば、兵士たちの消耗は決して小さくなかった。


「押し返せ! ここを抜かせるな!」


 指揮官の声が響く。


 兵士たちは傷ついた身体を奮い立たせ、再び前へ出た。


「へへっ、こんなところで死ねるかよ!故郷へ帰ってイリアにプロポーズするんだ!」


『こいつも言っちゃってる!』


 魔王軍の一角では、戦況を見つめる将がいた。


「……無駄な足掻きと分からんとはな」


 将はそう呟き、前線の様子を見つめていた。


 人類の抵抗は、決して容易なものではない。


 それでも、魔王軍の進軍は続いていた。


     *


 七人は、第一防衛ラインへと近づいていた。


 やがて、遠くに広がる戦場が視界に入る。


 黒く染まった大地。立ち上る煙。入り乱れる兵士たち。そして、その向こうに広がる魔王軍の大軍勢。


 すでに戦闘は始まっている。


 ルージア軍とアトランティス軍が、必死に防衛線を支えていた。


「……厳しい戦況ですね」


 アルクが静かに呟く。


「ええ。ですが、まだ防衛線は維持されています」


 グレンが答えた。


「では、予定通りに」


 アルクは六人に向き直った。


「皆様は敵の後方へ。私は地上へ降り、王のもとへ向かいます」


「ああ。任せたよ」


 アークが頷く。


「では、参りましょう」


 アルクは一礼すると、飛行の軌道を変えた。


 六人から離れ、第一防衛ラインへ向けて降下していく。


     *


 地上に降り立ったアルクを、アトランティス王が迎えた。


「ヴェル、よくぞ…」


「王よ。お伝えしたいことがございます」


 アルクはすぐに作戦を説明した。


 六人が敵の後方へ回り込み、背後から攻撃を仕掛けること。敵の隊列を乱し、連合軍が態勢を整える為の時間を稼ぐこと。そして、アルク自身が連合軍の指揮を執ること。


 王は最後まで話を聞くと、力強く頷いた。


「分かった。連合軍の指揮を任せる」


「ありがとうございます」


 アルクは深く頭を下げた。


 これで、作戦を実行するための準備は整った。


     *


 一方、上空に残った六人は、魔王軍の後方へ向けて飛行を続けていた。


「セレネ、アリア。前線の援護を頼めるか」


 アークが二人に声をかける。


「はい」


 セレネは頷くと、杖を構えた。


「連合軍全体に、防御強化を付与します」


 彼女の周囲に魔力が集まる。


 木属性と四つの基本属性を組み合わせた、特殊な付与魔法。魔法の構造を完全に理解している者は少なく、扱える者も限られている。


 セレネはその魔法を、広大な戦場全体へと展開した。


「全軍に、加護を!」


 放たれた魔力が、第一防衛ラインの兵士たちを包み込む。


 兵士たちの身体を淡い光が覆った。防御能力が大きく引き上げられ、敵の攻撃に対する耐久力が高まっていく。


 これほど広範囲に及ぶ付与魔法は、膨大な魔力を必要とする。


 セレネの表情にも、疲労の色が浮かび始めていた。


「セレネ、大丈夫?」


 アリアが心配そうに声をかける。


「ええ。まだ大丈夫です」


 セレネは微笑み、杖を下ろした。


「私も援護しますね」


 アリアが前へ出る。


 両手を広げ、戦場全体へ意識を向けた。


「エクストラエリアヒール!」


 柔らかな光が、第一防衛ラインを包み込んだ。


 傷つき、倒れていた兵士たちの身体が癒えていく。深い傷も、戦いの中で負った痛みも、瞬く間に消えていった。


 回復した兵士たちは、自分の身体を確かめるように見つめ、それから再び武器を手に取った。


「これで、傷は癒えました」


 アリアは明るく声を上げた。


 しかし、その額には汗が滲んでいる。彼女もまた、膨大な魔力を消費していた。


 グレンは、アリアの魔法を静かに見つめていた。


 その魔法の本質に気づいているのは、今のところ彼だけだった。


 アリアがこちらを振り返る。


「大丈夫よ、グレン。まだいけるから」


「……はい」


 グレンは短く答えた。


 それ以上は何も言わず、前方へと視線を戻す。


     *


 六人は、さらに高度を上げた。


 地上の兵士たちからは、彼らの姿を捉えることは難しい。魔王軍の兵士たちも、遥か高空を進む六人の存在には気づいていなかった。


 やがて、第一防衛ラインが遠ざかっていく。


 六人は魔王軍の後方へと回り込み、攻撃を仕掛ける位置へ向かっていた。


「頃合いじゃな」


 シリュウが周囲を確認する。


「ええ。敵はこちらに気づいていません」


 セレネが答えた。


 六人の間に、緊張が走る。


 ここから先は、作戦の成否を左右する重要な局面だ。


 アークは手にした聖剣を見つめた。


 そして、ゆっくりと魔力を注ぎ始める。


 聖剣が光を帯びた。


 刀身を中心に、空気が震える。集まっていく魔力は、周囲の景色さえ歪ませるほどだった。


「聖騎士殿、反撃の狼煙

上げられい」


 シリュウが静かに告げる。


「任せたまえ」


 アークは微笑んだ。


 その表情には、迷いも恐れもない。


 ただ、これから始まる戦いへの覚悟があった。


「こ、これは……この力は……」


 クリスチアーノが息を呑む。


 アークの聖剣に集まる魔力は、彼がこれまで目にしてきたどんな魔法とも違っていた。


 セレネは両手を胸の前で組み、祈るように見つめている。


 アリアもまた、静かにその姿を見守っていた。


 そして、グレンの周囲にも変化が起きていた。


 火 水 土 風


 四つの属性を帯びた巨大な魔力塊が、グレンの周囲に次々と現れる。


 それぞれが圧倒的な魔力を内包し、空間そのものを揺らすかのように存在していた。


 グレンは表情を変えない。


 ただ静かに、これから放つ魔法へと意識を集中させていた。


「聖騎士だけが使える極大魔法だ、喰らえ」


 アークが聖剣を高く掲げる。


 その刀身から、まばゆい光が溢れ出した。


 そして


 アークが、聖剣を振り下ろす



          ◆


この物語は、辺境の農民グレンが騎士となり、仲間と出会い、やがて人類の希望を背負う英雄へと成長する物語。七人の伝説が、今ここから始まる。ご愛読ありがとうございました。

 ありがとうございました。

私は農業の知識も乏しいのですが、農家の血筋が濃いというか、父母共に実家は農業と

関わりの深い、というか農家ですね。

 並外れてはいませんが、お陰様で丈夫に産んでもらいました。

 そんな私が妄想ばかりしていて、

こんな物語を書くだなんて、父も母も想像出来ないでしょうね。まあ、喜んでもらえる事はないんですけれど。書きながら、ふとそう

思っていました。


 また私の妄想に付き合ってもらえますか?


          それじゃあまた



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