誰もが頷く声
グルナ様と過ごす時間は、まるで光に包まれているようだった。
彼女は常に穏やかで、慈しみ深い。
モニカがどんなに私を陥れようとしても、グルナ様が一言「彼女は潔白です」と言えば、すべて覆される。
誰もが信じ、誰もが頷いて、私を庇ってくれる。
ーーそれはアプリルのときとは正反対だった。
(あのとき、アプリルが必死に弁護してくれたのに、誰も耳を貸さなかった。でも、グルナ様が言うと、みんなが一瞬で信じた)
グルナ様には力がある。
(……やっぱり、グルナ様って私の導き手よ。アプリルは悪役令嬢)
そんな思いが、日ごとに私の中で大きくなっていった。
昼休み、庭園の中央に人だかりが出来ていた。
私も行ってみると、二人の生徒が人だかりの中に居た。
小さな盗難騒ぎが起きたらしい。
見知らぬ女生徒が泣きながら否定しているけれど、周囲は『証拠がある』と口々に責めていた。
「落ち着きなさい。彼女は無実です」
そのとき、群衆が静まり返った。
白銀の髪が陽光を受けて輝きながら、グルナ様がゆっくりと歩み出たのだ。
「彼女は盗んでなどいません。わたしが証人ですから」
ただ一言。
それだけで空気が変わった。先程まで鋭く非難していた生徒達が、次々と「そうかもしれない」「グルナ様がおっしゃるなら」とうなづき始める。
私は少し離れた場所から、その光景を呆然と見ていた。
胸の奥に、アプリルが必死に弁明していた日の記憶がよみがえる。あのとき彼女の声は、誰の耳にも届かなかったのに。
(……やっぱり違う。グルナ様は声を上げれば世界が従う。アプリルはどれだけ叫んでも、誰も信じなかった)
まるで光と影。
私の足は自然と、光の方へ向かっていた。




