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セカンドワールド!  作者: こ~りん
四章:変幻自在のベトゥリューガー
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77.変幻自在の―― その三

ストックが尽きました……

「NPC鬼も警戒しておかないと拙いのか」


 グレイによって斃されたディルックはリスポーンした後そう零す。

 リスポーン位置がイベントフィールドに固定されているためすぐに遭遇する可能性があるが、この広さなら限りなく低いだろうと考え、一先ず安全地帯を探すことにした。


 他の異人に狙われにくく、身を隠しやすい場所があれば、そこで一旦スキルの進化を検討するつもりなのだ。


「ここなら大丈夫そうだな。……念のため瓦礫で塞いでおくか」


 入り組んだ路地から入れる建物に身を隠したディルックは、自分のステータス画面を開いた。

 彼の現在のレベルは68、スキルは必須となるものを優先して三次まで進化させている。


 【戦士】から進化した【軽装戦士】、【大剣】から進化した【大剣術】、【健脚】から進化した【悪路踏破】、【斬撃】から進化した【斬撃術】、【大声】から派生進化した【指揮】。三次スキルとなっているのはこの五つだ。


 二次スキルは少しだけ優先度が低い【鑑定眼】と【看破眼】、肉体系状態異常対策である【頑強】、ステータス強化系スキルである【○○強化】を各種、【採掘術】。


 一次スキルのままなのは【瘴気免疫】、【礼節】、【体術】など。

 覚えている魔法は火属性の入門魔法と付与魔法だけである。


 ――そして、進化させずにいるユニークスキル【血炎】。


「(【血炎】……ヴァンパイアの種族スキルである血液操作のごく一部が使えるようになる亜種スキル、だったか。進化によるデメリットが気になるが……うーん)」


 このスキルは『悪魔の手』事件の後、騎士となって初めて受けたソロクエストの中で入手せざるを得なくなったものである。

 効果は自分自身の血液――HPを代償とした自己強化や自己回復、そして血炎の名の通り血を燃やす能力。


 とても強い……わけではないし、むしろ扱いの困る系のユニークスキルなのもあって、ディルックは一割消費の自己強化と付与魔法化しか使用していない。

 九割を消費する最大強化の倍率は驚異の+三〇〇%。状況に応じてリジェネに切り替えられるメリットもあるが、それ以上に残るHPが一割だけというデメリットが大きい。


 それに、吸血鬼と揶揄されることもあるヴァンパイアの令嬢に気に入られ、無理やり血を吸われて魅了まで掛けられたのだ。

 その魅了はすんでの所で解除したが、そのせいでより気に入られることとなった。このスキルはその際に入手したものなので、やはり進化させるには躊躇いがある。


「――やる、か」


 だが、躊躇したままではグレイに勝てないだろう。

 そう感じたディルックは覚悟を決め、【血炎】を進化させる。


 スキルの中には種族に影響を与えるものもあると聞いているが、進化した【血炎】はその数少ない例となった。

 種族自体は人間のままだが、身体能力が大幅に上昇している。三次か四次まで進化させれば別種族になる可能性が高そうだ。


 スキルの効果を確認したディルックは建物を出て行動を再開する。

 出来ればトップスリーを目指したいところだ。


「(……よし、注意するべき相手はいないな)」


 二人組の異人を発見したディルックは大剣を手に突っ込み、薙ぎ払いを繰り出す。

 アーツも魔法も使っていないが、【血炎】が進化する前の《スラッシュ》使用時と同等の威力を発揮した。


「っ、《ブーストスラッシュ》!」


 一瞬で仲間の一人を撃破された三人組の二人は、それぞれ片手剣と片手槌を構えた。

 片手剣を構えた方はダッシュよりも素早い速度で斬りかかってきたが、ディルックはそれをいなし、蹴りで相手の体勢を崩してからレザーアーマーごと袈裟切りにした。

 もう一人は挟み撃ちにしようと回り込んでいたが、ディルックの対応が早かったために上手くいかず、こちらは一撃で撃破される。


「……よし」


 自分が強くなったことを実感し、ディルックは息を吐く。

 パーティーメンバーである紫リンゴにポイント数は負けているが、これなら巻き返せるだろう。

 そう思った瞬間、地面に映る影が増えた。


「影……? っロザリーか!」

「ご名答ですよ!」


 重力が加味された振り下ろしを大剣の腹で滑らせ、ディルックは急いで距離を取る。

 地面に降りたロザリーとの距離は一五メートルほど。


「(一対一だとかなり危険な相手だ。ベレスにも注意を払わなければ……)一対一で戦うのは久しぶりだな」

「そうですね。今度こそ勝たせて貰いますよ!」


 ロザリーが足に力を込めた瞬間、ディルックは大剣を支えに跳躍した。直後に放たれた薙ぎ払いはディルックを捉えずに空振り――しかし、跳ねるように斬り上げたことで彼に僅かなダメージを与える。


「《バーニング》ッ!」

「《呪影》! こけおどしは通用しませんよ」

「当たるとは思っていなかったさ。――はあっ!」

「っ、なるほど」


 炎を目眩ましに距離を詰めたディルックが両手で渾身の一撃を放つ。

 《バーニング》で生成した炎を吸収して赤熱した大剣は、まともに受ければ大ダメージとなるだろう。

 故に、ロザリーは【呪骸纏帯】を大剣に絡め、自身はさりげなく距離を取る。


 乾いた岩である地面が僅かに焼け焦げたことで、振り下ろされた大剣の威力をロザリーは実感した。

 『呪装:骸の祈り』は異人の中では最高峰の武器だが、金属製であることは間違いない。直接当たっていれば熱が伝播しただろうし、耐久値も削られたはずだ。


「お互い、あの時とは違いますからね」

「ああ。装備もステータスも成長している。簡単に勝てるとは思っていないさ。【血炎・(あらため)】起動!」


 大剣から離した左手が出血し燃え上がる。

 それは進化したことでより操作性が上がった【血炎・改】による効果だ。


「(ただの炎ではないでしょうね。呪いを当ててみますか)」


 その炎をただの炎だと侮ることはない。ディルックが必要の無いスキルを戦闘中に使用するとは思えないからだ。

 ロザリーは【呪怨支配】で【死呪】と【呪詛】を組み合わせ、それを《呪影》で棒手裏剣のような形にすると投擲した。


 投擲された呪いはディルックへ一直線に飛び、大剣ではなく炎を纏った左手で掻き消された。

 彼が【瘴気免疫】を持っていることは知っているため軽減されるだろうと考えていたが、まさか無効化されるとは思っていなかったため、ロザリーは思わず目を見開いた。


「聖水を使わずに解呪されるとは思いませんでしたよ」

「正確には、解呪ではなく浄化だけどね。デメリットも多いから、決着は早めにつけようか!」


 その左手を大剣に添えると、炎は瞬く間に刀身を覆い、更に両腕まで広がった。

 迂闊にベレスに攻撃させるわけにもいかないので、ロザリーは冷静に対処することを強制される。


 ハイテンションだった頭が少し冷え、彼女は一旦息を吐いた。そしてハルバードを構え直し、姿勢を低くする。

 ディルックは侮る事が出来ない強敵である。それを再度理解したのだ。

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