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セカンドワールド!  作者: こ~りん
四章:変幻自在のベトゥリューガー
74/115

74.イベント後半戦

 その日の夜になると、昼とは比にならない人数がポータル付近に集まっていました。

 イベントフィールドへの移動は《――イベント進行中のため申請が却下されました》の一点張りです。お知らせも更新されませんでしたし、短慮な人はクレームを送っているでしょう。


 私は……と言うよりロスト・ヘブンの経験者は、何かあるのだろうとそのまま待機しています。

 よくよく思い返せば、イベント中の突発的なサプライズはよくあった出来事ですから。


 アナウンスのカウントダウンが五分を切ります。

 このカウントダウンが表示されたことで、掲示板が普段の倍以上に賑やかとなり、多くのプレイヤーが時間を取ってログインしています。

 サプライズイベントかも、と期待しているのです。


《――カウントダウン:00/03/59》


 数字の減り方を見るに、左が時間、真ん中が分、右が秒でしょう。

 ゼロになったときに何が起こるか分かりませんが、恐らく普通の出来事ではないはずです。

 予想の斜め上か、予想外の方向へワープするか……。念のため、武器はいつでも抜けるようにしておきましょう。


《――カウントダウン:00/00/00》

《――イベントに参加している全ての来訪者を強制転移します》

《――転移先:繁栄退廃都市エルドラド・デガデンシア》


 ♢


 転移による浮遊感から解放された私は、まず最初に周囲を見渡しました。

 私がいる場所は洞窟らしき空洞で、明かりの差す方に向かうと出口に辿り着きます。


 轟々と輝く太陽を中心に添えた、球状に広がる巨大な世界。起伏のある地形の上に築かれた、端から端までを埋め尽くす遺跡群。


 この石を切り出して建築したと思われる遺跡群は歴史を感じさせますが、同時に逞しく育った植物や苔によって退廃的な雰囲気も感じます。


「ベレス、索敵は出来る?」


 私の影の中にいるベレスは元気に一鳴きすると、影を伝って索敵に向かいました。他の人もこの世界に転移させられたはずですから、探せば合流できるはずです。


 ですが、果たしてイベントルールは同様なのでしょうか……?

 前半と後半でルールが変わるイベントもなくはないですから。


『――■■■■(■■■■)


 ある程度探索をしていると、人の姿があちらこちらにあるのを確認できました。フレンドメールを利用してユキとも合流できました。

 そして一番の成果と言えば、太陽の側にある罅のような真っ黒な空間でしょう。


 あそこからは小さな、それでいてどこまでも届く重たい音が聞こえてきます。


「あれ、絶対なにかあるよね」


 ユキはそう言ってうんうん唸りながら考察しているようですが、思い当たるモノはないようです。

 私も少し神話等をかじったことはありますが、神話学者とは比べものにならないほど僅かな知識しか無いので、その視点からアレについて考察することは無理です。


 アレについて考えるなら、この世界に於ける神話や伝説を踏まえるのが一番でしょう。私はそういったことに関わっていないので分かりません。


『――■■■■(■■■■)■■■■(■■■■)……莠、菫。髢句ァ(莠、菫。髢句ァ)繝?せ繝繝?せ繝(繝?せ繝繝?せ繝)


 しばらくすると音は声のようなものへと変化し、意味を持った音になって伝播します。それは頭の中に直接意味を叩きつけられるような、言葉を介さない一方的な情報でした。


迴セ蝨ー險?隱(迴セ蝨ー險?隱)繧、繝ウ繧ケ繝(繧、繝ウ繧ケ繝)医?繝ォ(医?繝ォ)……繝?せ繝(繝?せ繝)繝?■■(繝?■■)■スト(■スト)テスト(テスト)


 耳鳴りに耐えながらじっとしていると、やがてきちんとした声になることで叩きつけられる情報が薄くなっていきました。


『――ああ(ああ)なるほど(なるほど)これか(これか)相変わらず(相変わらず)言葉というのは(言葉というのは)不便で仕方ない(不便で仕方ない)


 耳で聞こえる声と脳に直接伝わる音で二重に聞こえますが、これは間違いなく私達が使用する言語です。

 隣でユキが酔いそうになっていますが、これは早急に慣れないとキツいですね。特に酔いに近い感覚がヤバいです。


 しっかりと言葉が認識できるようになると、先程まで罅があった場所には一人の男性が浮遊していました。

 頭のてっぺんからつま先まで濡れ羽色で統一された男性です。どことなく鴉や蝙蝠を彷彿とさせます。


私の庭へようこそ(私に庭へようこそ)来訪者諸君(来訪者諸君)! 聞こえているか(聞こえているか)? 聞こえているだろう(聞こえているだろう)。――これより告げるは(これより告げるは)神託である(神託である)! 心して拝聴せよ(心して拝聴せよ)!』


 彼の声は常に二重になって聞こえるので意味を認識するのが少し困難ですが、告げられた言葉自体はすんなりと頭の中に残っています。


 それによると彼は冥府神の御遣いであり、今回のイベントは冥府神と次元神の二柱による催し物であるため、人にだけ任せていては神の名が廃るとして派遣されたそうです。

 この世界では復活の対価を要求しない代わりに、全ての異人同士で殺し合いをすることが要求されました。


 要約すると、陣営はそのままだけど一対全員のバトルロワイヤルになったわけです。馴れ合いせずに遠慮なく殺れと言うわけですね。

 その代わりにデスペナルティを免除……というか対価だったんですねあれ。蘇ることの重大さを考えれば、対価としては安いんでしょうけど。


 そして一番重要なのが、冥府神の目に留まるような活躍をした者には褒美が与えられること。前半よりもランキング争いが熾烈になると言うことです。


「じゃ、別れてやろっか」

「そうだね。次会ったときは不意打ちでもなんでも文句無し」

「勝った方が正義だね! じゃまたねー!」


 しばらく休憩して、私とユキはそれぞれ正反対の方角へ向かいました。太陽を中心とした球状の世界なので、正反対の方角だとしてもいつかは遭遇するわけですが、その時はロスト・ヘブンのように殺し合うだけです。


 御遣いはいつの間にかいなくなっていました。伝えるべき事は伝えたと言うことでしょうね。


 御遣いによる説明が終わった後にお知らせも更新されたので、ログインしていなかった人もイベント後半戦に参加できるでしょう。


 それと、イベントフィールドで死んだ場合のリスポーン地点は、イベントフィールドのどこか、と追記されています。鬼同士の戦闘だとバフが効果を発揮しないとも書かれていますね。

 私のように改めて確認でもしないと見落としてしまいますね。ちゃんと赤文字で記載されているので、お知らせを開けば見逃すことは無さそうです。


 ……では、狩りを再開しましょう。マンハントの時間です。

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