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セカンドワールド!  作者: こ~りん
三章:褪せることなき神秘を見よ
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49.一難去って平和な日常

本日は二話同時更新です。

 □王都・ロザリー


 はい、ログインしました。おはようございます。

 なぜか寝る前の記憶が吹っ飛んでいますが、まあ大したことは無かったのでしょう。なぜかユキは顔を赤らめていましたが。

 ……本当に何ででしょうね?


 さて、ネームドも倒したのでめでたしめでたし――とはいかないのがこの世界です。破壊された建物や瓦礫の撤去など、大変な復旧作業が待っています。

 異人である私達はインベントリがあるので瓦礫や荷物の運搬で重宝されています。


 無制限では無いので持てるだけ持って一箇所に集めているのですが、瓦礫の山が幾つもできるのを見ると、改めて甚大な自害を被ったのだなと感じますね。


 そして何よりも重大なのが、石材や木材の運搬です。建物や舗装のための石材木材は、それらを産出する地域から運ばなければいけません。

 幸いなことに王都を囲う壁には被害はありませんでしたが、中心へ伸びる橋を支える支柱が幾つか崩れかけているので、早急に直す必要があるのです。

 そのための素材の運搬に、異人の大半が駆り出されました。


 【地平線の騎士団】が最初に行う共同作業が大量の荷物の運搬及び護衛ですよ。

 私も参加して石材を運搬しましたとも。

 ミストレイルを始めとする鉱山と隣接している街から石材を購入――代金は国が支払うのでその旨が書かれた契約書を渡しただけですが――して、木材も森と隣接している街や村から購入します。


「ロザっちおまたー」

「解放終わった?」

「ばっちり!」


 ポータルで転移してきたユキがドヤ顔していますが、そもそもチュートリアル無視して突っ走ってきたのは貴女でしょう。


「ついでにちょっと雑談してきたんだけど、始まりの街でも王都のことは噂になってるっぽい」

「まあ、甚大な被害を受けたからね。王都以外にも広まってるか」


 さて、ちょうどお昼ですし休憩しますか。

 商魂逞しい露天でサンドイッチらしきもの――パンではなく小麦粉を練って焼いた生地で野菜や肉を挟んだ食べ物です――を買って食べながら、近くのベンチに座ってお互いのステータスを見せ合います。

 見せ合うといっても、本人以外は見えないので口頭で伝える形になりますが。


「それでずっと気になってたんだけど、額のそれ、角だよね?」

「オニビトっていう種族の特徴みたいなんだよね。黒曜石で固定みたい」


 彼女の額と生え際の境から生えている二本の小ぶりな角は、鮮やかな黒色である黒曜石で出来ていました。触らせてもらうと、ゴツゴツとした感触が返ってきます。

 先端は尖っていて、少し力を込めれば怪我をしそうなほどです。


「ステータス補正はどんな感じなの?」

「えっとね……筋力と器用と敏捷が著しく高い代わりに知力と精神が致命的に低い、だって。ロザっちの種族は?」

「物理特化型か……。私はハーフエルフだから器用と敏捷が高い代わりに筋力と体力が低いって。あまり気にならない程度だけどね」

「いいなー。致命的って殆どゼロみたいだから魔法系は受けも攻めも苦手って感じ」


 まだ試したことは無いそうですが、恐らく入門魔法でも即死レベルでは? とユキは考えていますね。

 そう言えば、レベル50から使える魔法は中級魔法と呼ばれているんですよね……。ユキは対魔法に限ってはオワタ式ですね。掠っただけで瀕死になりそうです。


 改めて、私の種族とスタイルの確認といきますか。

 私の種族はハーフエルフ、漢字表記だと半森人でステータス補正は前述の通りです。検証班によると、物理も魔法も熟せる魔法剣士に適した種族なのではと考察されていますが、私は専ら物理と呪い専門の奇襲型戦士ですね。

 耳がちょっと尖っているのがいるのがハーフエルフの特徴です。


 奇襲型戦士――要するに正面切って正々堂々と戦うのではなく、相手の不意を突き自分有利の状況で戦う戦士のことです。

 【ヴルヘイム】とかピエロとはザガンとか【シュヴァルツァー】とか、最近は真っ正面から戦うことが多かったですが、私が一番得意なのは奇襲ですからね?

 まあ、【怨念解放】の活用法を私のスタイルに取り入れることが出来たので結果オーライと。


 魔法は今のところ使う予定はありません。習得しても使いこなすには時間が掛かりそうですからね。

 スキルに関しても同様で、今は【軽戦士】を三次スキルに進化させるのを目的としているので、新スキルは暫く見送ることになるでしょう。


 装備は性能優先で選んでいるので一体感はありません。肘から先を覆う金属製の腕鎧と素足の上から包帯のように巻いた【呪骸纏布】が目立っています。あとはなるべく露出を抑えるために長袖と長ズボンを選択していますね。

 スカート系は絶対穿かないと決めています。だって下着見えちゃうし……


「……平和だねー」

「そうだね」


 ぼーっと街並みを眺めていると、ユキがそんなことを口にしました。

 平和……ええ、平和です。事件が解決し、王都には平和が戻ってきたのです。


「ロスト・ヘブンとは大違いだね……あっちは常に戦場だったから、余計新鮮に感じるよ」


 懐かしむように目を細めるユキに同意します。

 私が始めて触れたVRゲームであり、荒れていた私の精神が安定するきっかけとなったタイトル、ロスト・ヘブン。

 失われた楽園の名が意味する通り、あのゲームは殺伐としていて、プレイヤーは仲間だろうが敵だろうが殺せば同じをモットーに活動していました。


 待機所から一歩でも外に出れば、どんな卑劣も外道も許される世界。

 それに比べたら、被害を受けながらも笑顔を浮かべられるこの世界の、なんと平和なことか。


「んぐっ……そう言えば、オーナーが正式に騎士に任命されたんだってね」

「事件解決に寄与したことに加え、人々のためにと率先して復旧作業に従事する在り方を評価し、イシュタリア王国の騎士の位を与える……だっけ」

「よく覚えてるね」

「そりゃあ、任命式に招待されたんだから覚えてるよ」


 クランが結成された後、ディルックさんに騎士の位を与えるための任命式が王城で行われました。

 私を含めたクランの主要メンバーが全員招待されていたので、いずれは異人の騎士を増やすつもりなのだろうと察しました。

 私は騎士になるつもりはないのですが、イシュタリア王国は封建国家に近いので、下手に断ると面子を潰したとして罪に問われそうなんですよね……


 まあ、ファンタジー色が濃いこの世界だと、封建国家じゃなくても同じ結果になりそうですけどね。

 違いは権力が誰に集まっているかぐらいでしょう、きっと。

 ちなみに、この世界の騎士は市民より階級が上です。


「……ねえロザっち」

「なに?」

「私ね、ロザっちのこと好きだよ。リアルも、こっちも。嫌な気持ちとか泣き言とか、一人で抱え込みそうになったらいつでも相談してね。昔みたいに荒れてるロザっちは見たくないからさ」

「……ん」


 ユキが私のことを好きなのは知っていますよ。中学で出会って、同じ高校、大学に進学して、わざわざ近くに引っ越してきて……アルコールに頼っているとはいえ告白までしてきたのに気付かないはずないでしょう。

 ……それに、私が荒れていても優しく受け止めてくれたのは家族とユキだけですから、彼女が私に好意を抱いていることなんて、昔からずっと知っていましたよ。


 今はただ手を握ったり、二人で誕生日を祝ったり、一緒に遊んだりする仲ですが……

 いつか、彼女の告白に答えられる日が来てほしいものです。

オーナー=ディルック

彼はなんだかんだで主人公気質な気がします。

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