第23話 強くなるために
オークキング率いるオークの群れの討伐に俺たち3人は通称"西の山"と呼ばれる山に来ていた。
ちなみにこの山、Bランク危険域と言ってBランク以上の冒険者しか足を踏み入れられない決まりになっている。
危険域とはS、A、B、Cにランク分けされた文字通り危険な区域の事だ。Sランク危険域ともなると、天災級の魔物も多数確認されているらしい。
今回のBランク危険域は鬱蒼とした森が広がり昼間でも薄暗くなっている。生息する魔物は夜行性の物が多く、他の同ランク危険域よりもBランクやAランクの冒険者が命を落とす事が多い。
「はぁ、やだやだ。早いとこキングを仕留めて帰りたいもんだ」
「同感だな。ゴージンの勘の話もあるし、何より俺も嫌な予感がする」
「そんじゃさっさと仕事を始めるか。ほら、ロムも探知を発動しろよ。レイダスは俺と周囲の警戒だ」
「あいよ」
「了解」
今では俺が指示出しをしている。前まではレイダスに任せていたが、これも俺の成長の為だ。
お陰様で、しっかりとスキル《采配Lv.1》も獲得出来た。
俺が指示を出せば、ロムとレイダスは軽口を叩くのを辞め、すぐにロムは小声で詠唱。すぐに発動した。
俺も探知は使える様になったが、範囲は広いものの精度がいまいちであまり使い物にならない。
その点、ロムの探知は半径200m程度まで探知できる様になり、半径50mの範囲までならば鼠の一匹まで捉える事が出来る。なので俺が探知を使える様になってもこの魔法はロムにお願いしている。
「この辺りに魔物の反応は見当たらねぇな」
「そうなのか?珍しいな」
すぐにロムが現状を報告してくれる。
しかし、この場所に何度も来た事のあるレイダスにはこの状況に違和感を覚える様だ。ロムも言葉には出さないが渋い顔をしている。
「やっぱりゴージンが言ってた嫌な予感ってのが関係あるじゃねーの?」
「エイトもそう思うか。やっぱり冒険者の勘と言うのは馬鹿に出来ないな」
「ああ、とっととオークキングを倒して帰ろうぜ、と言いたい所だが二人に話して置きたい事がある」
俺は今回のこの状況をチャンスとも考えている。明確な敵が判明した以上、俺はレグリズの討伐に向け動かなくてはならない。
しかし、相手は俺よりも遥かに長く生きた者であり、それも魔王だ。生半可な力では逆に殺されてしまうのが落ちだろう。
そこで今回のこの場所の異変。B級危険域の魔物が姿を現さない程の事を起こしている元凶が魔物なら?そしてソイツを俺が倒す事が出来たなら?
二人には悪いが、俺はミリスの本当の笑顔を見るために、魔王の力が不明な以上、強くならなくてはならない。
もちろん二人の生存は最優先に行動するつもりだ。
「という訳だ。俺は一応勇者だからな。多少の無茶をしてでも今より強くなろうと思ってる」
「はぁ……勇者様とパーティを組むってのは大変だねぇ」
ロムは溜め息を吐きながらやれやれと首を振った。
「俺は正直反対だが……エイトは意外と頑固な所があるからな。お前が決めたんなら止めても無駄……か」
レイダスは俺の性質を理解して無駄な事はしない姿勢だ。しかし、今まで俺が見たレイダスの顔の中で最も呆れているのが良く分かる顔をしている。
「もし、付き合い切れないなら先に帰って……痛ッ!」
俺が途中まで言った所で二人にぶっ叩かれた。
「バーカ!俺たち二人はお前を無事に返さなくちゃならないの!お前を残して帰ったりなんかした日には団長や副団長から本当に雷が落ちるんだからな!」
「ま、そういう事だ。それに、俺たちは仲間、だろ?」
「……そうだな。ありがとうな、二人とも」
「だけど」と続けながら俺は堪えきれずに笑う。
「お前らも大変だなぁ。同情するぜ」
「全く誰のせいなんだろうな?」
「そんなの分かりきってるじゃねーの」
今度は三人で吹き出した。これくらい空気が軽い方が俺たちらしい。それでもこの間、警戒を怠らないのも俺たちだが。
「おっと、探知に豚共が引っ掛かったぜ」
「道中に魔物は?」
「スピアスパイダーが3匹程度だな」
スピアスパイダーは脚が槍の様になっている蜘蛛型の魔物だ。ランクはB。普通は20~30匹程の群れを形成している。
「やっぱ色々とおかしいみたいだな」
「だが元凶と戦う予定がある以上、そんな事は些細な事だろ?」
「ちなみに豚の数は?」
「40くらいだな」
「コイツらは普通にいるんだな」
ちなみに現在、全員で森の中を疾走している。音を立てず、薄暗い森に紛れる様に進む中、手早く会話をしているのだ。
途中、右側から剣を振る音が聞こえたが、おそらくスピアスパイダーをレイダスが仕留めたのだ。左側では何か光っていたので、ロムが火球でも使ったのだろう。
そんな事を考えながら、俺も目の前に現れた蜘蛛を一瞬で切り捨てる。
「それじゃあ化け物と戦う前哨戦と行こうぜ!」
ロムが小声でそう言ったので、頷きつつ、まずは目の前に現れたオークの首と体をお別れさせ、次に火球を4つ形成し、前方のオークを焼き肉にする。
ここで漸く、何かしら異常が起きたと判断したオークの一体が低く吼える。
「ブモォォォォ!」
「ブーブーうっせぇんだよ!」
吼えたオークの胸に剣を突き刺し、胸から頭に掛けて切り裂きつつ、そのままの勢いで背後にいたもう一体を袈裟斬りにした。
だが、俺たちの存在は群れのボスに伝わってしまったらしい。不規則な動きをしていたオークが不恰好ながらもある程度規則に沿った動きをし始める。
「ちっ、めんどくせぇ。レイダス、ロム、そっちは大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ」
「こっちも大丈夫だぜ」
二人の無事を確認し、俺は速攻で新たな魔法を形成。速度強化、筋力強化、魔法威力強化を組み上げ三人全員に付与する。最近練習していた付与魔法だ。
防御力を上げてもいいが、まだイメージが不十分なのか、体が重くなり速度が出なくなってしまう。速度強化の効果と相殺してしまうのだ。
「やっぱりこの付与魔法はスゲーな。普通は長々と詠唱が必要なんだぜ?」
「その代わり効果が不安定だろっと!」
無駄口を叩きつつ、確実にオークの数を減らしていく。
たまにオークの上位種であるオークソーサラーやオークナイト、オークジェネラルなんかもいるが、一瞬で焼き尽くしたり切り裂いたりしてるので、特に他のオークと変わりは無い。
「おいおい、ロム。これは40以上は軽くいるぞ!」
「すまねぇ、レイダス。近くに洞穴かなんかが合ったみてーだ。流石に俺の探知もそんな所までは届かねぇ。エイト!少し大きいのを頼めるか!」
「了解だ!二人とも俺のところに集まってくれ!」
俺が得意なのは火の魔法だ。そして今から使うのは火の上級魔法《紅炎》。
この魔法は広範囲にその効果が及び、広げた魔力が炎柱と化し敵を焼き尽くす魔法。
かなりカッコいいのでお気に入りの魔法の1つだ。
本来なら長い詠唱が必要な魔法だが、上級魔法の中でこの魔法だけならば無詠唱で発動できる。余裕があれば詠唱をして威力を上げるのだが、今は無理だ。
「行くぞ!《紅炎》!!」
色んな主人公が魔法名を叫びたくなる気持ち、今なら良く分かります。
魔力を流せば灼熱の炎柱がオークの群れを包み込む。オークは何も出来ずに炎の中でもがき焼け落ちていく。素材は取れないがこの際仕方ない。
上位種であるオークソーサラーなんかは水魔法で対抗しようと試みるが、練った魔力は一瞬で蒸発する。
上位種の中で最も硬いオークジェネラルなんかは、他のオークが一瞬で地に伏す中、10秒程は耐えていたが、それでも結果は同じだ。
「ひゅー、相変わらずえげつねー」
「ほら、速く残りもやっちまうぞ。豚の王がおまちかねだ」
範囲内にいた全てのオークが焼き尽くされた訳では無い。一体だけ、他のオークよりも二回りほど大きなその体を憤怒で揺らし、紅炎の丁度真ん中に佇むは、今回の標的、オークキングだった。
更新遅くなりました!
インフルエンザになったりテストがあったり…
これからは更新ペースが戻ります。
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それと冒険者をやる理由が弱かったので、11話を加筆しました。確認してみてください!




