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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
第五編・オマケ短編
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シェンタイの秘宝【2】

 シェンタイにやって来た理由は、実にシンプル。


 一応、他のメンバー達と話し合った結果、次の目的地をシェンタイ方面に決めていたからである。


 厳密に言うのなら、最終的にトウキ帝国へと向かうのだが……トウキへと向かうルートとして、シェンタイを経由すると言う話を、あらかじめ行っていたのだ。


 その結果、みかんはここシェンタイにて他のメンバーと合流する為に、キータの街からやって来ていたのだが、


「ちょっと、そこのおにーさん! みかんさんも20万マールのチャレンジをやりたいのです!」


 キータの街で再び路銀を使い果たした……と言うか、カジノで全額無くしていたみかんは、その穴埋めをするべく、殴られ屋へと声を掛けていた。


「……え? キミが?」


 みかんの言葉を耳にした筋骨隆々の青年は、思わずポカンとした顔になって声を返す。

 

 ……無理もない。

 みかんの体躯は、何処からどう見ても、普通の女性だ。

 別段、格闘的な体型をしている訳でもなければ、モリモリ筋肉的な身体付きと言う訳でもない。


 この世界だと、外見と実際の能力がイコール線で結ぶ事が出来ない特殊な人間が結構いたりもするのだが……実際問題、それが常識なのかと言うと、実はそうでもない。


 一般的には、ガタイの良い人間が力持ちである事の方が多いし、痩せている人間が非力である事も多い。


 よって、常識の上で考えるのであれば、いかにも非力そうな女の子が、よりによって筋肉の塊じみた青年に対して挑戦状を叩き付けている様な構図が出来上がっていた訳となる。


「……いや、まぁ……やりたいと言うのなら、別に構わないけど……俺の身体って、鍛えてるから硬いよ?……大丈夫? 腕とか怪我しない?」


 青年は少しだけ心配するかの様な口調でみかんへと答えた。


 一応、1500マールの代金を支払えば、誰でもチャレンジする事が可能ではあるし、日頃から格闘などをやっていない人間の事も考慮して、グローブなども用意していたりもする。

 

 しかしながら、それでもか弱い女子が自分へと拳を向けると言うのは……本当に大丈夫なんだろうか? と、不安だった。


「怪我とかしないです! むしろ? おにーさんの方が危険が危ないかもです!……てか『手加減はして上げますが、死なないでくだしゃ〜!』って事で、始めましょ〜!」


 微妙に不安な顔になって声を吐き出す青年に対し、みかんは意気揚々と声を返してみせた。

 

「……はぁ?」


 青年はポカンとなってしまう。

 ぽっかり空いてしまった口は、しばらく閉まりそうにない。


 しばらくして。


「ははははっ! これは良い! こんなに笑えるジョークを言って来るなんて、流石に思わなかったよ……くくくっ……あは……あはははっっ!」


 青年は思わず腹を捩らせる形で、大仰に笑ってみせる。

 彼からすれば、まさに腹を抱えて笑えるジョークでしか無かった。


「みかんさんを、ちょっと馬鹿にし過ぎかもです……ってか、あなたの様な筋肉マンを相手に、みかんさんが負ける理由が分からないのです! てか、制限時間だって三分とか要らないのです〜。なんなら、五秒とかでも良いですよ〜?」


「……おいおい、それはこっちの台詞だ……ちょっと言葉が過ぎないか? お嬢さん? 五秒?……ははははっ! そいつは笑える……いや、笑えないジョークだ! うん、良いぜ? 五秒なら、お代は要らない。やれる物なら、やってみれば良いじゃないか?」


「え? お金?……うわ! 本当です! 1500マールも取るんですか! びっくりです! 単なる挑戦にお金取ってるとか……どんな商売ですか、これはっ⁉︎」


 殴られ屋と言う商売だ……そうと、青年が言いたくなる様な台詞を、みかんはかなり驚いた顔になって叫んでいた。


 ただ、一方的に殴るだけで20万貰え……かつ、無料であるのなら、何回でも挑戦する馬鹿が出て来るだろうし、それでは青年だって単なる殴られ損である。

 ちょっと考えれば直ぐに分かる事だろうに……こんな事を考えつつ、青年は地味に呆れてしまった。


 きっと、何処ぞかのお嬢様か何かなのだろう。


 良く見れば、結構良い服を着ているし……利発そうな顔……にも、見えなくはない……多分、きっと、一応。


 見た目的に言うのなら可愛い部類ではあるし、頭が良いんじゃないのかなぁ……と言う顔立ちをしていると言えば、あながち間違いでもないのだが……いかんせん、さっきから常識知らずな言動が目立っていた為、本当に頭が良いの? と、疑問符を付けてしまいたくなってしまう。


 ただ、良い所のお嬢様であるのなら、常識を知らない世間知らずだっているだろうし、現金を持ち合わせて居ないと言うのも頷ける。

 その手のお嬢様は、専門の執事辺りがお金を持っていたりする場合も多いからだ。


 なんにせよ、


「じゃあ、始めようか? お嬢ちゃん? 今から俺が五つ数える。その間に俺がノックアウトか、参ったを言えば賞金20万マールを進呈しようじゃないか」


 青年は笑みのまま答えた。

 内心で『ま、そんな事はあり得ないけど』と言う言葉を付け足して。

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