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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
第五編・最終章
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馬鹿な冒険者に福音の到来【2】

「けれと、ミナトさん? やっぱりここは落ち着かないですよね? なんか、ちょっと違う気持ちで一杯ですよね! それは当然の心理だと思うのです! やっぱり人間と言うのは? それ相応の生活環境と言うか? 自分の身の丈にあった生活をしている方が、よりリラックス出来ると言う物なのです!」


「その話をそのまんま鵜呑みにすると、俺は身分的にビンボー人って事になるじゃないか……いや、まぁ、確かに貧乏人だけど!」


 意気揚々と語るパインの言葉に、ミナトは腹立たしい心情を思い切り孕めながらも声を返した。


 実際問題、パインの言っている事の方が当たっている。

 冒険者も三年目となり、それ相応の収入を得る事が出来る様にはなったが、それでも世間で言うのなら、中間層と言った所。


 低所得層からようやく抜け出した……かな? と言う程度のレベルだ。


 今いる、富豪層が住む様な豪奢な屋敷になんぞ、住める地位も名誉も財産もない。


 よって、パインが言っている様に、分不相応も甚だしい場所に居る。

 この部分を否定する事は出来ない……出来ないんだけど、こうも開けっぴろに言われるとムカつく!


「……ともかく! もう、引っ越して来たんだ……また引っ越しとかさせたら、流石に申し訳ないだろ?」


 ミナトは苦い顔のまま言うと、


「そんな事はありません! そもそも、ミナトさん? ここにやって来た時の事を思い出して下さい? 引っ越しをする時……ミナトさんは引っ越しの手伝いとかしましたか? 引っ越し業者みたいな人が来ていましたか? そんな人……居ませんよね?」


 パインは急に真剣な顔になってミナトへと語り出す。


「……言われてみれば、居なかったな?」


 ミナトは、パインの言葉に軽く頷いた。


 パインの言葉にあった通り、自宅から豪奢な屋敷へと越して来たミナトではあったが、その間に色々と荷物を運ぶと言う行動を『一切していなかった』のだ。


 文字通り、あれよあれよと言う間に話しが決まり……気が付いたら引っ越しが完了していた。

 それまでに掛かった時間……なんと五分。


 一体、どんな魔法を使ったんだ? と、うそぶきの言葉でも言ってやりたくなるまでのスピードだった。


 当初、引っ越しが決まった当時は、引っ越しの日取りなどを決めて、色々と家財道具や日常品などを運び出す作業があるとばかり思っていたのだが、


「……俺が、この屋敷まで歩いて来た頃には、引っ越しが完了してたんだよな……」


「そうでしょう! つまり、答えはそこにあります! これはココナッツが引っ越しの魔法を使って、瞬時にこの屋敷へと運んでいたのです! 相変わらず行動力が早い所には、パインさんも驚きを通り越して呆れてしまうかも知れません!」


「引っ越しの魔法なんてあるんだな?」


 微妙に悔しそうな顔になり『ぐぬぬぅ!』って口から唸りながらも答えていたパインに、ミナトは地味に素朴な台詞を口にしていた。


空間転移魔法テレポートの応用ですかね〜? 要は、予め用意された見取り図とかを元に、空間転移させたい物を、その配置へと空間転移させるのです。慣れると一気に所定の場所へとパパッッ! っと空間転移させる事が出来るので、ミナトさん程度の小さい自宅にある家財道具一式ごときであるなら、数十秒も要らないと思いますよ〜?」


「小さい家で悪かったな……」


 だけど、本当にその通りだったから、それ以上の反論をする事は出来なかった。

 やっぱり、地味に悲しいミナトの姿がそこに存在していた。


「だから、引っ越しに関して言うのであれば、全然苦労はありませんよ? ええ、もちろんです! パインさんの手に掛かれば、何処にどんな物があるのか? その位置など、わざわざ見取り図を見るまでもなく把握しております! 食器の位置も! タンスの位置も! ミナトさんのエロ本の位置も!」


「そいつは凄いな、食器やタンスの位置まで把握しているのは、なんとなく分かっていたが、俺のエロ本までとは思わな………あの、それは、デリケートな部分だから、知らないで置いて欲しかったんだけど?」


「何を言うのですかミナトさん! 男が女性の神秘的な部分を知りたいと言う劣情……もとい、好奇心はあって然るべきですよ! むしろ、男なのに女に興味がないとかあり得ません! ええ、そうですとも! 女に興味がない男とか……逆に驚き過ぎて、パインさんはお友達になれないかも知れないレベルですよ!」


「……うん、いや……そ、そうな……」


 妙に力説までしてみせるパインに、ミナトは口籠もりながらも頷きを返していた。


 ミナトだって健全な17歳。

 女の子に興味を持つなと言う方が無理だ。

 ……でも、その事実を女の子に言われると、やっぱり恥ずかしいのだ。


 健全な17歳とは、そう言う生態の持ち主なのだから。

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