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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
新・家族旅行?
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夢から撤収へ

 昔の夢を見た。

 告白して、そして断られたり笑われたりした夢だった。

 

『やめてよね、あんたの彼女になるほど人生捨ててないわ』

『ちょっと、ひとに見られたら誤解されるからやめてくれる?』

 今も忘れられない、胸に痛いセリフの数々。

 

 それはまぁ楽しくない場面だと思う。

 けど最近、思うことがひとつだけある。 

 ふと当時の自分を客観的に思い出して。

 ああ。

 確かにこれじゃあ、彼女たちも好きって言ってくれるわけがないさ。

 

 (なま)け者で浪費家。

 自分勝手で他人の気持ちがわからず、他人に愛情がもてない。

 変なところで計算高くなったり、そこは相手優先だろってところで自分を優先してしまう。

 一番馬鹿げた、愚かしい自分本位。

 まぁ。

 かりに俺が女だったとして、こんな奴とつきあいたいかぁ?

 そりゃ無理だろ。

 

 なんでこんな事すら気づけなかったんだろうな、昔の俺。

 まったく。

 穴があったら入りたいとは、まさにこの事だ。

  

 でも。

 そんなことを考えていたら、唐突に彼女の声が響いたんだ。

 

『気になるなら、今からでも訂正すればいいのではないかねえ?』

 当たり前のように、そう彼女は言う。

『確かに過去は戻せない、けど今があるじゃないか。

 せっかく気づけたんだから、今からその行動を少しだけ変えればいいのではないかねえ?』

 少しだけ?

『いきなり全部を変えるのは無理だろうさ。でも、一歩だけならやってきたんだろう?』

 まぁ、一歩だけならね。

 

 性格問題も浪費家の件も、確かに少しずつ変えてきたよ。

 新しい貯金を始めた。

 年賀状を毎年切らさないようにした。

 ひとつずつ、すこしずつ。

 だけど確実に変えていっていた。

 まぁ全部終わるより俺の寿命が尽きるのが先だろうし、失ったものは戻らないけど。

 でも、やらないようりはいいだろうって。

 

 そんなことを考えていたら、なぜかオルガが苦笑した。

 なんだ?

『でもひとつ疑問があるねえ』

 なにがさ。

『他人に愛情がもてないって事さ。

 ハチはアイリス嬢をとてもかわいがっているだろう?たったひとりのお姉さんが子供の頃に着ていたっていう思い出の服まで着せて。

 他人に愛情をもてない者が、そんなかわいがり方をするものかねえ?』

 それは単に、子供服というと姉貴のしか知らなかったからさ。

 俺は別にアイリスをかわいがっているわけじゃないぞ。

 ただ、これ着せたら似合うだろうな、笑ったら可愛いだろうなと思うだけだ。

『それをかわいがっている、と言うのだがねえ』

 それはただ盆栽のように着せて喜んでいるだけさ。

 でもそう言うと、オルガはクスクス笑うだけだ。

『まぁ、そういうことにしておくかねえ。

 ああ、そうそう。

 アイリス嬢は眷属だから、人間の子のような子育ては必要ない。彼女に必要なのは対話であり、温かい手だよ。それは覚えておくといい』

 温かい手?

『君は今後も変わることなくアイリス嬢に接しつづけろってことさ』

 ああ、それなら簡単だ。

 ……。

 

 

 ……。

 自分がもう子供じゃないんだな、と思う瞬間は色々あると思うけど。

 中でも最大のものはやっぱり。

「おはよう」

「……ああ、おはよう」

 好きな女の子とのベッドでの朝を『安らぎ』と感じてしまう事じゃないだろうか?

 もちろん『異性』なんだけど、それと同じくらいに『身内』と感じる。

 うん。

 俺がガキだった頃なら、女とベッドで朝なんていったら大騒ぎなんだろうけども。

「ハチ」

「ん?」

「安らいでいるのはいいが起きろ。下半身だけじゃなくて」

「ういっす」

 うん。

 なんか、オルガのとは違ういいニオイもするしな。

 

 

 起きて出ていくと、いいニオイの元凶がいた。

「おはよー」

「おお、おはよう。アイリス、今朝も悪いな」

「いいよそんなの、それにこれ楽しいし!」

 テーブルの上には、肉と野菜による料理。その向こうにはドヤ顔のアイリス。

 いいけど、女の子がフンスと鼻を鳴らすのはどうなんだ。

 あと、着ている服がオレンジ色で背中に『亀』とドーンと入っているのは……うん、版権とか色々とやばいので見なかったことにしよう。

 しかしこれは凄いな。

「真竜の眷属殿に、まさかこんな特技があったとは」

 って、オルガまでビックリしてら。

「眷属って普通、料理とかしないのか?」

「正しくは『料理なんかさせる奴はいない』だねえ」

 苦笑されてしまった。

「だってパパ、アイリスに眷属らしいこと全然させないんだもの」

 そういってアイリスはクスクス笑った。

「ん?でも眷属らしい事って何だ?」

 質問してみると、なぜか隣でオルガが笑いだした。

 な、なんだ?

「さすが、竜の眷属殿を話し相手、旅の相棒と心底思ってる男だねえ」

「え、違うの?」

「普通は竜の眷属をもらったといえば野望に燃えるんじゃないかねえ。何しろ、ひとりいれば国がとれる存在だし」

「へえ」

 そんな強いのか。

 んー。

「何かねえ?」

「いや。悪いけどまったく想像できん」

 言っちゃ何だけどさ。

 もう十分に学習したろうに、未だにTシャツを後ろ前反対に着たり、素でパンツを履き忘れるんだぞアイリス。

 こんなポンコツ娘つかまえて、野望?国がとれる?

「アイリスを野望の道具にする奴とか、ありえんと思うがなぁ」

「ハチ、君にそもそも野望なんてあるのか?」

「お、言ってくれるね?もちろんあるとも!」

「ほうほう、教えてくれるかねえ?」

「うむ、悠々自適で働かず、旅してのんきに暮らせることだ!」

「……」

「……」

「なんで沈黙するんだ?」

 突然に二人して見つめ合うと、クスクス笑いだしてしまった。

 なんなんだいったい。

 

 いやま、いいたい事はわかるよ。

 俺の膝でよだれ垂らして寝てる子犬(ラウラ)も実は魔獣ケルベロスなわけだ。アイリスもそうだけど、この子らは見た目で判断しちゃいけない存在だ。

 でもなぁ。

 確かにすごい力はあるのかもしれんが、なぁ。

 

 とうとう爆睡に移行したラウラを、3つの首がカクンとならないようにしながらすくい上げる。

 おお、よく寝てるわ。

 で、そのまま左肩の空間ポケットに入れてやる。よし。

 思わず笑っていたら、オルガがなぜかためいきをついた。

「どうした?」

「いや、今はとりあえず何もない。それより出発しないかねえ?」

「だな」

 追手だって、時間がたてば増える一方だろう。そろそろ動いたほうがいい。

「よし、片付けして出発すっか」

「おー」

「うむ」

 

 君はキャンプの片付けをした事があるだろうか?

 俺の場合、まずテントの中の荷物を片付け外に出す。これは片付けをしながら、平行してテントと寝袋をたたむ前に干すからなんだよな。

 え、雨の日にはどうするかって?

 雨の日は基本、連泊だったからなぁ。雨を推して撤収するというのは、屋根の下に移動することを意味したし。

 ま、それはいい。

 俺の場合はそんな感じだけど、オルガの天幕は少し勝手が違う。

 何しろ究極のワンタッチテントなだけでなく、乾燥も魔法でやっちまうらしいからな。

 いやホント、どこまで便利なんだよ。

 

 まず天幕の中の荷物を出し、キャリバン号も車庫から出した。

 で、余計なものが残ってないことを確認してから、おもむろに持ち主、つまりオルガが撤収の魔法陣を起動する。

「よしやるぞ。『収納』」

 その瞬間、面白いようにクルクルと天幕は巻き込まれ圧縮された。

 みるみるうちにサイズは小さくなり、昭和のブック弁当くらいのサイズの塊になってしまった。

 で、それをオルガがピッと回収して自分の魔法的なストレージにおさめて収納したんだけど。

「?」

 ヒラヒラと白いものが舞ったと思ったら。

 天幕の……たぶん寝室のあった場所に、白い布切れが。

 あれ、オルガの下着(ドロワーズ)だよな。

 

「……」

「……」

「……」

 うおい、なんでみな黙る。沈黙が重いよ。


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