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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
新・家族旅行?
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樹精の森

 問題のポイントが近づいてきた。

「パパ、もう少しだよ」

「……そうみたいだな」

 それは唐突に現れた。

 え、どういう意味かって?

 いやだってさ。

「まさか、こんなでかい森が唐突に見えだすなんて」

 想像してほしい。

 ほんの十分前までは、地平線の彼方まで確かに何もなかった。

 なのに。

 そろそろ見えるはずだって話をしていたら突然、見えたんだ。

 

 そう。

 高さ200mはありそうな、とんでもなく巨大な大木の立ち並ぶ原生林が。

 

 でかい。とんでもなくでかい。

 だけど。

「なんでここに来るまで、全然気づかなかったんだ?」

 何もない砂漠を来たはずなのに、なんなで見えなかった?おかしいだろ?

 普通、この高さなら何キロ、いや十キロ以上向こうから普通に見えないとおかしいだろ。

 どうして?

 

「たぶん結界のせいだねえ」

「結界?」

「ギリギリまでただの砂漠に見せることで近づく者を寄せ付けないのさ」

 オルガがそんな事を言った。

 ふむ、結界か。

 するってーともしかして?

「アイリス」

「なあに?」

「もしかして、センサーに異常出てないか?周囲の状況は?」

「だんだん遠くがわからなくなってる。後ろはまだいいけど進行方向は真っ白だよ」

「やっぱりか」

 俺はためいきをついた。

「オルガ、悪いけど自前で周囲の警戒できるかな?」

「うむ、ちょっと見てみよう」

「悪いが頼む……って何だそれ?」

「ん?ああ、情報板の一種だが?」

 

 オルガはタブレットに似たカタチの黒い板を持っていた。

 明らかに石版とかじゃない。もっと現代的かそれ以上の、なにか高い技術によるものだ。

 

「タブレット?」

「ハチの端末みたいな超絶高機能なものではないよ。

 魔力を原動力として動く非常に古い装置なんだが、構造も何も今はわからない。だが単純化されているのか、長い年月が過ぎた今も魔力を与えるだけで使えるんだ。目的に応じて使い分ける必要があるがな」

「目的?たとえば?」

 なんだろう。なんかこう、ものすごい予感がするんだが?

「たとえば、今持っているこの板は現在位置の把握に使うものだ。原理はわからないんだが」

「現在位置の把握!?」

「それはもしかして」

「いや、ハチのものみたいに世界の情報にふれる、といったものではないようだよ」

「なんでだ?」

「情報が古いからさ」

 クスクスとオルガは笑った。

「この板によると、ここはドランドールという国の郊外にある保護林らしい。樹精王の一体が生えているから、ここの周辺20kmほどは保護区に指定したという情報がある」

「ドランドール?」

 知らない名だな。

「うちの地図データには旧帝国領と出てるけど?」

「帝国としか出てないのなら、ミスミド帝国かアラテア帝国の事だろうな。このへんはその両帝国が滅びて以来、無政府地帯の扱いなんだよ」

「無政府地帯?」

「誰も住めない、道も、鉱山のひとつもない。そんなとこで誰が旗のたてあいなんかする?そういう事さ」

「……あー」

 現実的といえば現実的な話だった。

「バラサの町は?人間族がとりたがってるんだろ?」

「とりたがっているのでなく、自分たち以外の種族が砂漠に町を作ったのが許せないのさ。かりに町から住人を追い出す事に成功したら、おそらく焼き払ったうえにオアシスに猛毒を投げ込むか埋めてしまうだろう」

「……なんでそこまで」

「さて、理由などないだろう。あえて言えば、それが人間族だと言える」

「そうなのか?」

「わたしが知るだけでも、獣人族の技術開発などを少なくとも数十件は妨害し、テロなどで破壊している。その執拗さと執念はおそれいるばかりだよ」

 それはひどい。

「そこまでやらかしてるのに、なぜバラサは大丈夫なんだ?」

「砂漠のど真ん中の不便さもそうだが、あそこの開拓民は危険な中央大陸である事を飲み込んだ上で来ているんだ。つまり、ああ見えて子供以外は荒くれ者ぞろいって事さ。

 ふたりで飲んだ、あの屋台のおかみさんもそうだぞ?」

「あの、タイ人の子孫のおばちゃんが?」

「うむ。確か元冒険者で、女たてらにとんでもない猛者だったと聞いてる」

 へえ。

 そんな話をしていたら、アイリスが警告を発してきた。

「ごめんパパ、警告!」

「なんだ?」

「センサー全部落ちた!有視界以外は全くわかんないよ!」

「おっと!」

 そこまで来たか。

「オルガ、話はまた後で」

「うむ」

 森はもう目の前だ。

「入り口は……あるな。竜王の森の街道くらいのやつが」

 いかにも「おはいりください」ってサイズなのが気になるが。

「よし、入ろう。

 アイリス、ラウラ、オルガにササヒメも注意してくれ、何か気づいたらいつでも頼む!入るぞ!」

「わかった!」

「わんっ!」

「……うむ、了解」

「クゥン」

 アイリスとラウラは元気よく、そしてオルガとササヒメはおっかなびっくり。

 その返事を確認してから、俺たちは徐行で中に入っていった。

 

 

 森の中は、ひとことで言えば「異様」だった。

 見た目はごく普通の森だ。ただ木々が地球ではもうあまり見られないクラスの原生林なんで、まるで巨人の国に入ったみたいな気分になるが。

 そしてなによりも。

「なんだここ」

「どうした?」

「いや。虫も鳥も全然いない。いる気配もないな」

 寒いわけじゃないだろう。そして、ちょうどよさげな低木もあるし、地面はフカフカだ。

 これがもし日本なら、たっぷり腐葉土ができて、そこいらのブッシュには虫だらけ、掘ればおそらくミミズもいて、さらに蜘蛛の巣もたくさんありそうなもんなんだけど。

 なんでこう、動物がぽっかりと抜け落ちてる?植物ばかりじゃないか。

 そしたら。

「そりゃそうだ、ここに動物は居づらいだろう。いたとしても、もっと奥だろうね」

「というと?」

「ハチ、このあたりの木々はすべてトレント種だ。それもおそらく防衛用の兵士に相当するものたちだろう」

「なに!?」

 思わず窓の外を見た。

「……兵士にしては動いてないぞ?俺たちって侵入者がいるのに?」

「それはたぶん……ああ、アイリス嬢に聞けばわかりそうだねえ」

 え?アイリス?

 みるとアイリスが、まるで悪いものでも食べたような顔で固まっていた。

「お、オイ、アイリス」

「パパ……どうしよう」

「え、どうしようって?」

「……中に、中に進めだって」

 へ?

「中に進め?誰がそう言ってるんだ?」

「……」

「アイリス?」

「ハチ、ここは言うとおりにしたほうがよさそうだぞ」

「お、おう」

 オルガに言われるまま、俺は奥に進んだ。

 

 路面には大きなでこぼこひとつなく、道を妨げるものもなかった。

 ただ、アイリスは黙っているし、ラウラも不安げにクウン?と俺の顔を見てくるだけだ。

 みればオルガの肩から見えているササヒメの3つの顔も同様のようだが。

「気にするなハチ」

「そう言われても」

 とうとうオルガまで渋い顔になった。

「呼んでいるのはおまえのようだ。わたしの事も呼んでいるが、来るかどうかは任せるそうだ。

 ケルベロスたちやアイリス嬢については、敵対しなければ何もしないと言っている」

「……誰が?」

「それはハチ、君が自分で確認したほうがいい」

「……」

「さぁ、いきたまえ」

「お、おう」

 そういうと、再びアクセルに足を乗せた。

 しばらく進むと、巨大に開けた空間に出た。

 円形の、ドーム型の球場がひとつ余裕で入る空間。それくらいの大きさの広場で、中央には見上げるぼの大木が、まるで競うように三本だけドーンとたっている。それ以外は何もない。

 なんだ、この広場?

 考えていたら、頭に声が響き渡った。

 

『よくきたな、異世界の少年とその仲間たちよ』

「!?」

 な、なんだ?

 唐突に頭の中に声が響き渡った。

 

 わけがわからない。

 わからないが、とりあえずひとこと。

 

「すみません、俺、少年じゃないんで」

 あとその言い方、昔の和製RPGみたいなんで勘弁してくれ。

『どのみち千年と生きていないのであろう?ならば少年で問題ない』

「さいですか」

 千年未満は全部ガキかよ、どんだけ気が長いんだ。

 俺は頭をかいた。


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