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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
生き抜く訓練
24/284

訓練開始・鹿

微グロ注意(寄生虫、解体)

 そんなわけで、予定を変更したわけだけど。

 海沿いにあるらしいツァールの町ってのは放置として、逆方向に向かう事にした。

 地図担当つまりアイリスいわく、80kmほども進むと道はなくなり、あとはポリット平原という200km四方ほどに広がる草原と湿原の連続する平らな土地になるという。

「ところどころ、小さな森がオアシスのように点在してるんだって。

 だからポリット平原には草原、湿地帯、水辺、そして森に住める動物や魔物がものすごくたくさんいて、人間たちの間では死の平原って言われてるらしいの」

「死の平原?」

 生き物の多い豊かな平原なのに、死の平原?

 なんか違和感あるな。

 ん、もしかして?

「アイリス」

「なあに?」

「その平原、もしかして猛毒もちのモンスターがいないか?人間に怖がられるような」

「猛毒持ち?どうだろ?」

「調べてくれ。もしかしたら、人間を待ち伏せして狙うようなやつがいるのかもしれない」

「ん、ちょっと待ってね」

 アイリスはタブレットをあれこれやっていたけど、うわって感じで目を剥いた。

「いるいる。クロモリゴケグモっていう毒蜘蛛のコロニーがあるって。噛まれると人間もやばいって」

「やっぱりか」

「やっぱりって……猛毒持ちがいるってどうしてわかったの?」

「わかったんじゃなくて、そうじゃないかと思ったんだよ。つまり推測だな」

 ほえ?と不思議そうな顔をしているアイリスに説明する。

「簡単な理屈だよ。

 草原と湿原、小さな森まであるエリアなんだろ?だったら動物とかたくさん居そうじゃないか?

 でも、こっちの人間たちはそれを死の平原と呼ぶわけだろ?

 変じゃないか。

 そんな豊かな土地なのに『死』って呼ぶ理由は何だ?」

「あー、そっか!」

「わかった?」

「うん、わかった!」

 まぁ、戦場跡なんかに物騒な名前をつけているケースもあるかもしれない。だから絶対じゃないけどな。

 

 

 一時間半後。俺達はポリット平原の入り口にいた。

 海辺にそって走ってきた砂利道は野原に溶けるように消えていて、ここからはただの平原。

 ま、どっちにしろキャリバン号は浮いてるし、信号も交差点もなかったから大差ないんだけどね。

「で、ここが問題の平原か」

 不定期に起伏のある平らな土地が、ずーっと向こうまで続いているようだ。

「見晴らしのいい丘の上に止めたいな。魔物が近くにいない丘に誘導してくれる?」

「わかった。あっちに行ってくれる?」

「おう」

 アイリスに誘導してもらい、丘のひとつの頂上にキャリバン号を止めた。

 キャリバン号を降りて横に立ち、再び風景を見てみる。

「!」

 おお、これはいい景色だ。

 山じゃないので圧倒的な高低差がないけど、それでも立派に高台だ。全体に凹凸(おうとつ)が少ないせいか遠くまでよく見える。

 そういや昔、似たような景色をどこかで見た気がする……北関東、いや東北かな?

 ずーっと広がる野原なんだけど、よく見ると起伏がちゃんとある。で、ところどころに小さな林があったり、遠くには森といってもいい規模の木々のかたまりも見える。小川や池もある?

 ああ、これはいいね。

 この雑然とした風景、いろいろな生き物が豊富に住んでいそうだ。

 遠くには何か動物の群れも見える。森にはもっと大きなものもいるかもしれない。

「パパ、あっちみて」

「お」

 アイリスが指差した方を見た。

「鹿?」

 比較的近いけど、そこそこの距離。そこに小規模の鹿の群れ。

「パパ、あれを射殺できる?一頭でいいよ?」

「やってみよう」

 革のホルスター(気がついたら腰についてた)から右手でマテバを抜き持ち、左手を台に構える。

「……」

 本来、拳銃は狩猟や射撃の武器ではない。

 拳の名にふさわしく対人用途、それも近距離戦闘用のものだろう。狩りをしたいなら猟銃を使うべきだ。

 でも、これは狩りじゃない。それにマテバもモデルガンみたいなもの。

 殺すという行為に慣れる、そして武器の扱いに慣れるためなんだから、合理性は気にするなってことだ。

 パン、と一発。

「え、避けた?」

 見えない弾丸を避けた?鹿が?まさか!

「じっと見てたからだよ」

「視線で気取られたってか!」

 さすが野生。

 そう言えば昔、見えてる魚は釣れないって言われたよなあ。生き物のカンってやつなのかね?

「別の鹿ねらってみて」

「おう」

 今度はさっさと撃ってみよう。

 再びパン、と一発。

「当たった!」

 一頭がもんどり打って倒れた。まわりにいた鹿がパーっと逃げた。

 ん?なんで全部一方向に逃げるんだ?

 よし、と取りに行こうとしたら、アイリスに止められた。

「パパはだめ、アイリスがいく。ラウラいこ?」

「わんっ!」

 なぜか行く気の幼女と子犬(ただし頭3つ)。

「まて、なんで俺が留守番?」

「これ見て」

「え?」

 タブレットの画面見せられてギョッとした。

 周辺の詳細図みたいだけど、ここと鹿のいるあたり?に赤マークがいくつもついてる。

 検索項目は……猛毒もちの魔物!?

「近づくと危険ってことか?」

「そ。アイリスとラウラは平気だけど、パパは死ぬよ?待ってて」

「お、おう」

 なるほど死の平原か。

 さっき鹿が逃げた方向、あっちには敵がいないってことか……あぶねえなオイ。

 しかし。

 魔物はびこる平原に幼女と子犬(ただし頭3つ)。で、男は留守番。

 なんというか……情けない図だよなあ。

 そんなことを考えているうちにも、ひとりと一匹は鹿にたどりついた。

 ん?何か魔法みたいなのをかけて……何やってるんだろ?

 それからアイリスは、自分よりも大きな鹿の頭を抱えると、普通にてくてく歩いて戻り始めた。

 おいおいすげえな。

 でも、それだけでは終わらなかった。

「んな!?」

 突然、そのアイリスにでっかい蜘蛛のばけものが襲いかかったんだ。

 どこにいたんだ!?

 でもそれにラウラが襲いかかって、あっという間に倒してしまった。

 ……あー。

 で、ラウラはその、自分よりでかいバケモノ蜘蛛を引きずってもどってくると。

 やれやれ、チートどもめ。

 

「ただいまー」

「おかえり」

 戻ってきたアイリスとラウラ。それぞれ、鹿と蜘蛛のバケモノをつれてるんだけど。

 これは……近くでみるとまた、でかいな鹿。

 地面に置いてもらい、スマホで撮影してみた。

 するとタブレットで検索が走り、鹿の情報が出た。

 

『ルルーン』

 現地名で直訳するとツノシカ。ケラーナ大陸でよく見かけるタイプの鹿。

 

 そのまんまだな。

 ちなみに目の前の鹿は角が小さい。子供だから?それともメスだから?

 そこまではわからない。

「詳しいデータはないんだな」

 研究者はいないとしても、民族学的なもの……民話や伝承くらいはあるかと思ったんだけど。

「こっちの蜘蛛はどうかな?」

 元来、蜘蛛はあまりすきじゃないけど、デカすぎるせいか家にでる大きい奴のイメージはないね。むしろ洋ゲーに出てきた牛ほどもありそうな化物蜘蛛のイメージに近い。

 

『クロモリゴケグモ』

 中型の蜘蛛の魔物。地下に潜み、近づいた獲物に襲いかかる。人間も捕食対象になる。

 

「あ、魔物なんだ。もういいぞラウラ、悪かったな」

「わんっ!」

 食べようとしていたのを止めて撮影したので、言葉とジェスチャーで「もういいよ」と教え、頭をなでてやる。

 通じたようで、ラウラは蜘蛛の胴体に猛然と食いついて食べ始めた。

「食いつきがいいな。魔物のほうがいいってか」

「それもあるけど、この手の大きい蜘蛛やカニの魔物はケルベロスの好物らしいよ。毒も平気なんだって」

「そうなのか?」

「うん。陸上活動にたくさん魔力を使うから精霊分が豊富なんだって。そうなの?」

「俺に聞かれてもね……あ、もしかしてそういうことかな?」

「え?」

「いや、だから、蜘蛛とカニだろ?共通するのは、節足動物ってことだろ?」

「えっと?」

「わからないか?つまり、こいつらは外骨格……でかくて重い鎧があるわけだよね?」

「うん」

「水中ならともかく陸上では、重い鎧は不利になる。動きが鈍くなるし、無理もきかなくなるからね」

「あー、それで魔力で支えてるから、だから精霊分が豊富ってこと?」

「あくまで推測だよ?」

「うんうん!」

 これは人間でもそうだ。

 昔の地球で、重装歩兵って兵種のいる地域があったそうだけど、槍を使う騎馬兵に弱かったという。騎馬兵はその突進力を槍に集約させ、重装を打ち破る。そうなると重装歩兵は今までのメリットを失い、ただの的になってしまったんだ。

 防御力に優れても遅いものは、紙装甲でも機動力が高くその防御を破れるものにやられる。戦車が爆撃機やヘリに倒されるように。一種の相克ってやつなのかもな。

 

「さ、鹿をさばくよ?準備はいい?パパ?」

「俺、足つきはやってことないんだけど」

「大丈夫、アイリスができるから」

 え、そうなのか?

「パパ……アイリスはパパのガイドだよ?当然、狩りも獲物の処理も基本知識に入ってるよ?」

「なんでまた?」

 なんで、そこまで必要なんだ?

 そういうと、アイリスは俺を残念な子を見る目で見た。

 な、なんだよう。

「パパ。パパの住んでたとこではコンビニ?お店でなんでも買えたのかもだけど、ここにはそんなお店ないよ?」

「!」

 それは。

「それに、人間族が仮想敵な状況でしょ?すくなくとも中央大陸を出るまでは、自給自足でいかないとダメな可能性もあるわけだよね?」

「……そうか」

 そりゃ、確かに狩猟の知識もいるわな。

「なるほどな、納得したよ」

 そういうと、アイリスはにっこり笑った。

 

「じゃあ、鹿の解体始めよっか!」

「お、おう。俺は何をすればいい?」

「とりあえず見てて。時々触ってもらうから包丁は持っててね」

「?」

「今重要なのは、生き物の血肉に慣れてもらうためだもん。解体とか処理は後回しでいいよ」

 あ。

「ああ、そうだったな……わるいな世話かける」

 そう言うと、アイリスは一瞬、キョトンとして。そして

「気にしなくていいよ、これがアイリスのお仕事だもん!」

 そういうと、得意げにふんぞり返るのだった。

 

 え?鹿の解体は解説しないのかって?

 いや、勘弁して……あのね、鹿ってむちゃくちゃ虫いるんだぜ、ノミだのダニだの……ひいっ!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 久しぶりに読んでみましたが、なんで仔ケルベロスの名前をГランサ」のままにしなかったんですか?
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