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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第百話 過去を越え、未来へ繋ぐ幸せ

 諸国会議から三ヶ月後、コルヴァンの教会で結婚式を挙げる二人がいた。

 コルヴァンは神父として、誓いの言葉を告げる。


「人は誰しも、過去に喜びや悲しみを抱えています。

 しかし、過去が二人の絆を強くすることはあっても、未来を妨げることはありません。


 新郎トキアスよ。あなたは、彼女の過去を受け入れ、これからの人生を共に歩み、いかなる時も彼女を守り、慈しむことを誓いますか?」


「誓います」


「新婦フォルンよ。あなたは、彼の過去を受け入れ、これからの人生を共に歩み、いかなる時も彼を支え、愛し続けることを誓いますか?」


「誓います」


「それでは、神の祝福のもと、二人が新たな夫婦として歩み始めることを認めましょう。

 誓いの証として、新郎トキアスから、新婦フォルンへ、誓いの口づけを」


 真新しいステンドグラスが、祝福するように二人を照らす。

 コルヴァンの言葉に、二人は向き合い、そしてトキアスはフォルンに掛かるヴェールをあげる。

 見守るのは羽澄、ミロル、そしてフォルンを現代で保護した時に、顔見知りとなった翔も駆けつけた。

 他に参列者は聖癒布の従業員である、リーノ、レイル、アイル、さらにヴォルクス。

 そしてお忍びでアルバスとパートナーとしてフィリネ、そしてストリも参加している。


 なにより一番場違いな存在……モズ国のカモイ国王がわざわざ平民のふりをして、祝いに来ている。


 そんなメンバーに囲まれて、照れくさそうなフォルンの表情に、トキアスは自然と笑みが溢れる。

 そして二人はゆっくりと、唇を重ねた。


――わあー


――パチパチパチ


 祝福に満ちた空気の中、二人はゆっくりと教会の外へ歩いていく。

 全員で外に出ると、そこには各ギルドの幹部と、神選会の教祖であるレンカクが祝福している。


 再婚ということもあり、身内だけの小さな式だ。

 それでもここには幸せが溢れている。


「トキアス様……また、私を受け入れてくれてありがとうございます」

「いや、フォルンも私を待っていてくれて、ありがとう」


 新郎トキアスの胸には、二つの勲章が輝いていた。

ヴォルクスも、一つ同じものを胸に着けている。



 それは三ヶ月前の話に戻る。


 ヴォルクスと共に監視指導役として、モズ国へ旅立つことが決まった日、トキアスが真っ先に会いに行ったのはフォルンだった。

 来客用の部屋に二人、隣り合った椅子に座る。


「仕事中に申し訳ない」

「大丈夫です、ストリ様が休憩を入れてくださいましたから」


 治療師ギルドの受付をしていたフォルンを、ストリが気を利かせて交代してくれた。

 フォルンと具術師の関係を誤解し、問い詰めた時以来、二人は以前の気まずさが多少薄れてきていた。


「フォルンに報告することがある」

「はい、なんでしょう」

「実は、最低でも五ヶ月……モズ国へ行くこととなった」

「……」

「これはモズ国が犯した罪に対する処置、決して危ないものではない」

「でも、軍事国家ですよね?」

「そうだ」

「少し前まで、戦争を起こされそうになっていたんですよね」

「……心配してくれるのか」

「当たり前ですっ」


 トキアスの言葉にフォルンは間髪入れず応える。

 そしてトキアスの目を、泣きそうな瞳で見つめる。


「十日近く、トキアス様が帰ってこられなかった時……私は不安で押しつぶされそうでした。

 それにモズ国は罪を犯し、それを止めたのはトキアス様とガルーダ国王です。

 恨んでいないとは言えないでしょう」


 フォルンのいう通りだった、その心配はもっともだ。

 潤むフォルンの瞳に、トキアスの決心は揺らぎそうになる。

 しかし、今回のモズ国への渡航は、トキアス自身の提案でもある。


「フォルン、私は監視指導役としてモズ国へ向かう。

 それは光栄であり私の使命だとも思っている」


 優しい声色でフォルンに伝えれば、泣きそうだった彼女は、目の奥に力強さを秘めた真剣な眼差しでトキアスを見つめた。


「ごめんなさい、私は我が儘を言える立場ではないのに……あんなに酷いことをしたのですから」


 フォルンは浮気と洗脳による、トキアス殺害計画という裏切り行為のことを言っている。

 この事実は無くならない事実として、彼女の胸に刻まれている。


「もう、いいのだ。

 こうやってまた、フォルンと会話し過ごせるようになった。

 私は今が幸せだよ」


 トキアスがそう言うと、フォルンは少し嬉しそうに笑い、そして告げる。


「それでは、トキアス様の帰りを待ってもいいですか?」

「……いいのか? モズ国へ行っても」

「それはトキアス様の意思です、私が止められるものではありません」


 フォルンがにこりと笑いながら、言葉を続けた。


「ただ、トキアス様を信じて、帰りを待つことを許していただきたいのです。

 だけど、向こうで愛する人ができたのなら、私のことなど……」

「そんなことは絶対にない」


 今度はトキアスがフォルンの発言にかぶせるように、その発言を否定した。


「……嬉しいです、トキアス様」

「私は、フォルンほど愛せる人ができることはないだろう」

「私も同じ気持ちです……説得力はありませんが」


 苦笑するフォルンに、トキアスは優しく微笑みかけて――


「この役目、五ヶ月以上かけないことを約束しよう。

 そして無事に、モズ国から帰ってきたら……私と、もう一度結婚してほしい」


――プロポーズをした。


「っ……トキアス、様」


 フォルンの震える声、喜びと苦しみが入り混じっているのがわかる。


「私なんかが、いいのでしょうか……?」

「言っただろう、フォルン以外に愛せる人がいないのだ。

 フォルンに断られたなら、私は一生独り身だろう」

「私もです……トキアス様以外に、愛する人は現れませんから」


 フォルンもにこりと笑って。


「お許しいただけるなら、私はもう一度トキアス様の妻になりたいです」


 その言葉に絡む視線、そしてどちらともなく近付くお互いの唇。


――チュッ


 二人は一足早く誓いのキスをした。

 が、そこは教会でなくギルド会館の客室だと気付き、フォルンは顔を真っ赤にして、旅立つトキアスを見送るのだった。


 こうして結婚の約束をして、トキアスはモズ国へ旅立った。



「まさか三ヶ月で帰ってくるとはな」

「そうですね、よほどフォルンを一人にしたくなかったのでしょう」

「わしはリューゲル国と行き来していたが、行く度に国が進化していて毎回驚いたぞ」


 呆れたようなアルバスの言葉に賛同するストリ、ヴォルクスは感心したように呟く。


「見事なフラグのへし折りっぷりだわ」

「ママ、かなり不謹慎」

「フラ……なんの話だ?」

「コルヴァン君、気にしなくていいよ、現代の言葉だから」


他の招待客に囲まれ、にこやかに話している夫婦を見つめながら、羽澄たちも雑談をする。



 トキアスがモズ国へ行った本当の理由は、財政の改善についてだ。

 モズ国が戦争を行おうとした理由が、貧困な民たちを豊かにするため。


『ならば国を豊かにすれば、今後戦争なんて暴挙には出ないでしょう』


 トキアスはガルーダ国王に進言をする。

 商人であるトキアスの発言は納得できるが、問題はその方法だ。


『モズ国は土地や天候に恵まれず、砂漠はあるが森も鉱山もない国だ。

 どうやって豊かにする?』

『私に考えがあります、どうかヴォルクスと共に短くても五ヶ月で成果を出して見せましょう』


 こうして監視指導という名の、モズ国発展について着手する事となった。


 トキアスが考えたのは土地を利用すること。

 それは砂漠にある大量の砂だった。


 そしてトキアスはカモイ国王に進言した。


『砂を活用すればガラスを作れます、それを売り込めば財政が潤います』


 一般的なガラスは粗悪品が多く、不純物が少ないガラスは貴重で高価だ。

 モズ国へ最初の訪問時に採取し、きめ細やかで不純物が少ないことを確認していたトキアス。

 そしてもう一つ、ガラスを作れる希望がモズ国にはあった。


『トキアス殿、そう簡単に言うが、ガラスを作るにはいくつかの過程がある。

 どの国も挫折する溶解方法……これはどうするつもりだ?

通常の火炎魔法では温度も継続時間も足りず、粗悪な者しか作れない』

『ええ、だから工業が発達しているパゴーニ国で、僅かに生産されているだけです』

『その通りだ、ピーコック国王も割に合わないから手を引きたいとぼやいていた』

『それはそうでしょう……しかし、この国にはパゴーニ国にはないものがあります』

『なんだ、それは』

『……その話の前に、魔法鑑定をご存じですか?』


 突然話を変えるトキアス……そして話を変えられ続きが気になるカモイ国王。

 しかし国王はトキアスの物言いを無礼だと思わずに、興味を持ち始めていた。

 これがキアスの商人術とも知らず、質問を繰り返す。


『ファルケ国の魔法鑑定士だろう? それがどうした?』

『私が持つこの腕輪は、ファルケ国の協力を得て、魔法鑑定が数日使えるように施されています』

『なんと……それはどうやって』

『申し訳ございませんが、私はそこまで口は軽くありませんよ』


 にやりと笑いはぐらかすトキアスに、カモイ国王だけではなく、護衛の騎士たちも聞き入っていた。


『私はこの国でしか見たことがないのですが……陽光収束魔法(ようこうしゅうそくまほう)を持つ騎士がおります』

『よう……聞いたこと無い魔法だな』

『私も初めて知りましたが、太陽の光を集めて物に封じる魔法です。

 その魔法があれば、閉じ込めた太陽の光で砂を溶かすことが可能なのです』

『なんと……して、その者はいったい……?』

『お教えするのは簡単です……ただ必ず約束してください、私とヴォルクスを信じ、ガラス産業を発展させると』

『……わかった、トキアス殿とヴォルクス殿を信じることを約束しよう』


 それからカモイ国王は、トキアスの指示に従い、ガラス製造の施設作りに着手する。

 ヴォルクスに溶鉱炉の構造、ガラスが作れるようになったらガラス細工の作り方を教えた。


 そこからこの三ヶ月で、軍事国家から軍事とガラス産業が栄える国として名をとどろかせつつある。



「ああ、我が友よ……結婚とはなんともめでたい」


 カモイ国王は新郎新婦に、心から祝いの言葉を捧げた。

国王がお忍びをしてまでリューゲル国に来たのは、国を発展させ、国王自ら友と認めたトキアスを祝うためだ。


 すっかりトキアスとリューゲル国に恩を感じているカモイ国王は、友好関係を結びミロルの別世界転移魔法で行き来しやすくなっている。

 トキアスとヴォルクスには、功績を称えカモイ国王から勲章を贈られた。

 そしてトキアスはガルーダ国王からも、名実ともに大商人と認められ、勲章を送られた。


「本当にリューゲル国と戦争にならなくてよかった……これも全てトキアス殿のおかげだ」

「それはお互い様でしょう、我が恩人のコルヴァンの教会と、国のシンボルとも言える神選会大聖堂のステンドグラスをプレゼントしてくれたのですから」

「いやはや、こんな高級ステンドグラス、見たことがございません」


 話に入ってきた神選会教祖のレンカクが、カモイ国王に深々と頭を下げる。

 フォルンも教会のステンドグラスに視線を注ぐ。


「本当に美しい……この教会に来るといつも見惚れてしまいます」

「コルヴァンも泣いて喜んでおりましたよ」


 トキアスは大げさに言うが、コルヴァンは毎日魔法で掃除するほど大切にしている。


「これは友好の証だ、我が国を発展させ……必ずリューゲル国には恩返しをすると約束しよう」



 こうして幸せな時間が続き、最後にフォルンのブーケトスをする事となった。

 足が不自由なフォルンを支えながら、トキアスも一緒にブーケを投げる。


「この幸せを、お裾分けしますっ」


――ポーン


――わーっ


 投げられたブーケは、太陽の光を浴び、ふわりと羽澄の手に吸い込まれていった。


「わっ」


 そのまま受け取ると、コルヴァンの手が肩に回る。


「よかったな、羽澄」

「うんっ」


 嬉しそうにほほえみ会う羽澄とコルヴァン、そんな二人を周囲も幸せな気持ちで見守るのだった。


第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜【完結】


以上を持ちまして本編終了です。

ここからは毎日ではないですが、番外編をいくつか書いて終わろうと思います


もし万が一、番外編にリクエストありましたら、教えていただけると嬉しいです。


登場人物(聖骨院も含めて)

鷹野一家

 主人公:鷹野 羽澄(整体師)

 母親:鷹野 ミロル(アクセサリー作家)

 父親:鷹野 翔(かける)


神父:ルーメン・コルヴァン(元聖拳士)


大商人妻:ハルビア・フォルン

大商人:ハルビア・トキアス


リューゲル国王族

 第二王子:ヴァルディア・アルバス

 第三王子:ヴァルディア・ストリ

 国王:ヴァルディ・ガルーダ


ファルケ国 王妹娘セレーヌ・フィリネ


神選会の教祖:チャルボ・レンカク


宝晶生成術兼鍛冶屋 大将:アルケミ・ヴォルクス(ドワーフ)


モズ国 国王:アウトリ・カモイ





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