# 98 鍛錬の森へ その3
「後で分かる?」レイに聞いた方が良いのかな?
と思い視線をレイに移す
「ちょっと天と打ち合わせしただけよ。終わったなら外に行きましょう」レイはスタスタとテントから出て行く
「えっ? ちょっとレイ! 待ってよ」慌てて追いかけたけれど話してくれるかな〜
テントから出ると外にはシェード付きのテーブルとイスのセットが用意されていた
「わあ〜。なんか快適そうなセッティングがされてる〜。凄〜い! セバスチャン! ありがとう」
「夕飯までにはまだ時間がございますし、早々にテントの中、と言うのも味気ないと思いまして。こちらでお寛ぎ下さい」セバスチャンが恭しくお辞儀する。執事セバスチャン全開だ
「お茶の準備を致しますね」シェリーの言葉に「ありがとう。お願いします」とにっこり頭を下げてチェアーに腰を下ろす。なんだかリゾート地にでも来た気分だ
「では、私は鍛錬の森を少し視察して参り《ボクも行く〜》ます」セバスチャンの言葉を遮る様に天ちゃんが叫びセバスチャンに張り付く
「視察? ボクも……って、天ちゃん?」
「夕飯までにはまだ時間がございますので少し森の様子を見て参ろうと思ったのですが……天殿?」
《ボクも一緒に行く。ひとりで行っちゃダメだよ、セバスチャン》
「いいんじゃない? 一緒に行けば。止めたってセバスチャンは森に入るつもりなんだろうし、天もついて行くわよ?」レイがまるで決定事項の様に言い切る
「なるほど……そう言う事ですか……」セバスチャンはレイと天ちゃんを見比べる様に視線を移すとひとり頷いた
「セバスチャン、貴方の事は凄いと思ってるし認めてる。でも単独行動は認めない。天は実戦の経験もあるしバディとしてはうってつけでしょう? 貴方には大人として、天の手本になる様な行動を期待するわ」
「ちょ、ちょっと待って? なに? なんかセバスチャンと天ちゃんで森に入る体で話してる? わ、私も」
「『視察』と仰りましたね? 目的を忘れずに決して無理はしないで下さい。有益な情報をお待ち致します。天ちゃん、セバスチャンを頼みますね」
《うん。ボク頑張るよ》うっ……思いっきりシェリーと天ちゃんに遮られる私のセリフの続き……
「畏まりました。では行って参ります」セバスチャンは天ちゃんと共に森の中へと消えた……
「えっ……あっ……うっ……」タイミングを完全に逃した……
「サクラ、今はセバスチャンの好きにさせてあげても良いんじゃない? これまでもずっとひとりで頑張ってたみたいだし」
「そうですね……少し位の先行は……それに天ちゃんが一緒なら攻守共に安心ですし」
「ちょ、ちょっと待って! 何? この流れる様な展開は! いつの間にこんな話になったの?」
「ワタクシはレイの策に乗っただけですが……。レイはこうなる事を予測していたのですね?」
「まぁ……これまでのセバスチャンの様子を見てるとひとりで先走しりそうだったからね。天をお守り代わりに連れて行く位は妥協出来るでしょう」
「賢明な判断かと」シェリーが頷く
「サクラ様、お茶の準備を致しますのでそちらでお寛ぎください」
「うっ……分かった……」セバスチャン達は行ってしまったし……とりあえずシェリーのお茶の準備が終わるのを待とう
「どうぞ」
「ありがとう。いただきます」私はカップを手に取る
「私、訳わかんないんだけど……」上目遣いにシェリーを見る
「サクラ様はお気づきではございませんでしたが……セバスチャンは深夜や早朝にひとりで鍛錬しておりました」
「気配を消して出て言ってたからサクラが気づかなかったのも無理ないわ」レイが続ける
「夜中に? 外で? 鍛錬?」
「手合わせしてたサクラなら分かると思うけどセバスチャンは相当強いわね。でもレベルは1」
「自身の能力を遺憾無く発揮する為にもレベルアップは必須……少しでもレベルを上げておきたかったのでしょう」
「ひとりでの鍛錬じゃたかが知れてる。でも実戦も難しい。この国は結界で護られてる事もあって魔物も極端に少ないからね」
「鍛錬の森での本格的な戦いの前に少しでも強くなっておきたいのでしょう。彼らしいですね」
「まぁ、サクラを護る事に関しては手段は選ばず。周りが見えなくなるって感じ? 誰かさんと同じで」レイがチラリとシェリーに視線を向ける
「サクラ様をお護りするのはワタクシの使命ですから」なにか? と続きそうな視線をレイに向けてシェリーが言い放つ
「シェリー、気持ちはとっても嬉しいんだけど……私がみんなを守りたいんだよ? 私もそれなりに強いと思うんだけど……」
「どっちでもいいじゃない。強くなって損は無いし、セバスチャンのレベルが早々に上がれば明日からのレベルアップの修行が楽になるんだから。セバスチャンもあたし達も良い事尽くめじゃない」
「なるほど……ウィンウィン? 」
「レイの目的はそちらでしたか?」シェリーがレイを睨む
「ですが天ちゃんをお供に付けたことに関しては評価致しましょう。ワタクシ達にも事前に……いえ、今回はこれが最善……でしたのかもしれませんね」シェリーは大きく息を吐いてヤレヤレ……的な表情をレイと私に向けた……んっ? なんかひとりで納得したっぽい?
「ねぇ、セバスチャンが内緒で鍛錬に出掛けてたって言ったけどふたりはそれに気付いてたの? 気配を消して出掛けてたんだよね?」
私の問にシェリーが少し戸惑いの表情を見せる
「はい……ワタクシも気持ちはセバスチャンと同じですから」そう言ってシェリーは微笑んだ
「ワタクシも……自分に出来る鍛錬をしておりました。セバスチャンが出掛ける気配もその時に察知出来たのです。普通に休んで居れば気付かなかったと思います。この様なご報告は避けたかったのですが……出来ればお忘れ下さい」シェリーが少しはにかんで肩を竦めた。うっ……射抜かれる……
「えっと……セバスチャンもシェリーも凄いね。私の知らない所で頑張ってたんだね……ん? じゃあレイも?」
「忘れて欲しいってシェリーに言われなかった? この話はもうお終い」レイはセバスチャンが用意してくれてたクッションに移動して丸くなり目を閉じた
「え〜……つれないな〜」唐突に話を打ち切られてしょげる
「お茶受けを持って参りましょうか?」シェリーの言葉に私はすぐに食いついた
――つづく――




