# 94 鍛錬の森への出発前
さて、いよいよ旅立ちの日が明後日となった。明日は町の人達が『送別会』をしてくれるらしい
最初の目的地が『迷いの森』こと『鍛錬の森』なのでなんだか少し申し訳ない気がしないでもないのだけれど、町のみんなの厚意に甘える事にした
明日は朝からみんなとお食事会だし、翌日は鍛錬の森へ出発だ。今日は休息日って感じでまったり過ごす事になっている
セバスチャンが気合いを入れて作ってくれたスイーツにシェリーの入れてくれる癒しのドリンク……こんなに倖せで良いのかしら? なんて思いながらソファで寛ぐ
ふと思い出した事を口にする
「ねぇ、今まで訓練して来たけどさ、レベルって上がってないよね? どうしてかな? 実戦じゃないから? ……でもダイアナやアレス・アレク達は修行したり騎士団での訓練でレベルが上がってるよね? どうして私たちは上がらないのかな?」
これまで疑問に思いつつも誰も触れなかったのでそのままになっていた事を口にした……のだけれど……何故かみんな黙ったまま私を見つめる……
「お嬢様……」セバスチャンがみんなを見渡した後、代表して(?)って感じで口を開いた
「お嬢様、ここは亜空間です」
「うん。そうだね」それが何? なんて思いつつセバスチャンを見つめる。もしかしてあほ顔になってた?
「ここは通常の空間とは隔絶された場所になります。レベルが上がらないのはその為です。個人スキルは個々の持つスキルになりますので何処にいても影響はございませんが」
「えっ?! そうなの? そうなんだ……そうか……ここは普通の場所じゃないから……って事なのね……分かった。……みんなは知ってたの? だから疑問に思わなかったんだね……」う〜なんか恥ずかしすぎるんですけど〜
「サクラの居た世界には亜空間なんてなかったんじゃない?」
「あっ、うん。なかった。空想の世界だね、亜空間は」もしかしたらどこかで研究されてたのかもしれないけど……なんて事も思う
「良かったじゃない。ひとつ賢くなって」
「うっ……レイは一言多いよ〜。まぁ確かにひとつ新しい事を学んだけどね」
「レベルは上がってはいませんが、これまで積み上げて来た経験は身に付いています。『鍛錬の森』での修行が楽しみです」セバスチャンがにっこりと微笑む。レイもセバスチャンもフォローしてくれた感じが嬉しい
「うん、そうだね。ありがとうセバスチャン。特訓の成果を鍛錬の森でぶつけよう」
「そうでございますね」シェリーも穏やかに微笑んでくれた
「今日は休息日ではありますが、鍛錬の森でどの様に連携して行くか話し合っておきませんか?」セバスチャンからの提案だ
「作戦会議だね。うんうん。どんな風に戦う?」
「レベルが1のシェリー・レイには出現する魔物のレベルが低い内は攻撃に専念してもらうと良いのではないでしょうか。まずは経験を積む事が先決だと思います。その後、各々の磨きを掛けたい部分に力を入れるのが良いかと」
「攻撃力を先に育てるって事?」
「はい。前衛に出る事は無いに等しいでしょうが後方からの援護射撃があると連携が更に強固なものになります。実戦の中で身に付けて行く事が最善かと」
「ワタクシも同意見です。前衛はセバスチャンに任せますが、後方からの支援には援護射撃も含まれますから」
「いいんじゃない。それで」レイは相変わらずクールだ
《ボクは?》天ちゃんは少し不安そう?
「天ちゃんも序盤……訓練を始めてしばらくはシェリーとレイに攻撃を任せてみて? 天ちゃんは私と一緒でシェリー達よりはレベルが高いからね」
《うん。分かった。レイ、シェリー頑張ってね》
「ありがとう。天ちゃん」シェリーは言葉を返したがレイはチラリと天ちゃんを見たが『ふんっ』て感じで視線を逸らした
翌日は朝からダイアナが迎えに来てくれてパーティー会場へ案内してくれた……もはや送別会のレベルではなくパーティーって感じの規模に見えた
「町の大半の人が参加します。それぞれ仕事もあるので入れ代わり立ち代わりって感じにはなると思いますが」ダイアナがそんな風に説明してくれた
立食パーティー風に周りに沢山のお皿が並んでいる。どのお皿にも美味しそうなお料理が盛り付けてある
《サクラさま、あれ全部食べても良いの?》天ちゃんが上機嫌に聞く
「そうだね。どれも美味しそうだね。食べるの楽しみだね」私もキョロキョロしながらテンションが上がる
「天ちゃんはひとりで行動してはダメですよ。迷子になりますから」シェリーに言葉に素直に頷く天ちゃん
「迷子になんてならないでしょう。天なら上から見渡せばすぐに見つけられるわよ」ボソリと呟いたが天ちゃんには聞こえないボリュームなのがレイらしいと思いレイに笑顔を送る。……速攻そっぽを向かれてしまったけど……
神官殿……いや、ペターソンさんが迎えに来てくれて奥へ案内してくれる。なんか大仰になってて緊張して来た
「サクラ様、皆がサクラ様方の無事のお戻りを願っております。どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ありがとうございます。そんなに長く留守につもりはないですけど」なんだか照れる……
「それに何があったらすぐに連絡して下さいね。私で役に立てる事があればすぐに戻って来ますので」そう答えると周りの人達からも笑顔が向けられた
私たちのテーブルにはひっきりなしに町の人達が挨拶に来てくれた
こうしてみんなと接していると本当に町の人工が増えたんだな。って思うのと同時にこの町の人達ほぼ全員と仲良くしてたんだなとちょっとびっくりした。そして、みんなが仲良しで 私もその中の一員に加えて貰えてる事がとても嬉しかった
挨拶に来てくれる人が途切れなくて私はテーブルから動けなかった。でもシェリーやセバスチャンがあれこれお料理を持って私はお料理を頂きながら町の人達と会話を交わした
セバスチャン・シェリーはここでも執事&秘書の能力を発揮してくれた
人の名前と顔を覚えるのが苦手な私にさり気なく人物像を教えてくれる。料理を提供しているお店の店主さんが来た時はそのお料理が私の前にあったりと至れり尽くせりだった。レイは天ちゃんの相手をしてくれて一緒にお料理のテーブルを回っていた
「シェリーもセバスチャンも楽しんでる? ちゃんとお料理食べられた? 私のフロォーに付きっきりじゃないの?」少し落ち着いた頃ふたりに声を掛ける
「ありがとうございます。楽しんでおりますのでご心配なさらないで下さい」シェリーがにこやかに返事を返してくれる
「そう? ふたりが側に居てくれるのは心強いけど、ふたりに迷惑掛けたくないって気持ちもあるから……ごめんね、ありがとう」
「お嬢様こそお疲れではございませんか? 別室を用意して頂いておりますので休憩を挟む事も可能ですので。いつでも仰って下さい」
「ありがとう。ふたりが居てくれてホント良かった。レイも天ちゃんの相手をしてくれて……町の人達はこんなにあたたかくて……私……ホント倖せ者だね」思わずほろりと来そうになりながら笑顔をふたりに向けた
――つづく――




