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# 69 大衆浴場オープン……前

私は入口横の隙間から外の様子を確認した

「うわっ!」思わず声が出た

まだオープン前だと言うのに人だかりが出来ていた。ここに集まってるって事は全員お客様なの?

「とりあえず外で話をして来る。シェリー、中に待機列作れるか支配人に確認してしてくれる?」

「畏まりました」

「うん。お願いね。ダイアナ、一緒に来てくれる?」

「はい。喜んで!」

……ダイアナのこのノリはよく分からないけど……まぁいいか、頼りになるのは間違いないんだし


入口の鍵を開けてもらい外に出る

「サクラ様! 今日から営業だろ? みんなで来たぞ」最前列に陣取っているのはユーラシアン王国から顔馴染みになって、今はここフォレストグランで飲食店を経営しているナタリーを初めとした従業員一同だった

「ナタリーさん、皆さん! ありがとうございます。来て頂けて嬉しいです」

「ワシらも来たぞ〜」後ろにも既に馴染みになっている商店の皆さんから声が掛かる

「皆さん! ありがとうございます! 来て頂けて嬉しいです〜!」私は声を張り上げる

「それにしても凄い人数ですね。この町の大半では無いですか?」ダイアナが集まってくれた人達を見て困惑の表情を浮かべる

「だね~。正に嬉しい悲鳴だね」私はダイアナに笑いかける

「……はいっ、確かに有難いですが、この人数は無理ですね……」


どうしたものかと考える……早くから集まってくれたみんなの気持ちを無下にしない様に……

「ソノーラス、拡声器」私はそっと唱えた。手に拡声器が握られる

「キンっ」ちょっと耳障りな音が出て辺りが静かになる


「皆さん! 大衆浴場エルドラドのオープンに足を運んで下さりありがとうございます! 営業初日……皆さんに来て頂けるのか不安な気持ちで一杯でした。でも……こんなに沢山の方に来て頂けて……とっても嬉しいです! 本当に……ありがとうございます!」頭を下げると何故だか歓声が上がった……

「あ、ありがとうございます……」とりあえず手を振りつつ笑顔を振りまく


《サクラ様……》シェリーの声が頭の中で響く

《シェリー》私も声を出さずに返事をする

《待合室の準備をして頂いております。ダイアナとアレス様に順番待ちのお客様を把握する為の用紙をお渡ししました。アレク様にはお客様の誘導をお願いしております》

シェリーの言葉に振り返るとダイアナ・アレス・アレクが来てくれていた

「ありがとう。よろしくねっ」ダイアナ達にサムズアップした


「皆さん! 今、中でお待ち頂ける様に準備を進めています。一度に全員は無理なので、順番にお呼びして中へ入って頂いても宜しいですか?」私の問いかけに

「もちろんだよ。みんな! サクラ様たちの指示に従おうぜ〜」ナタリーさんが後ろを振り向きみんなに声を掛ける

「おぉ〜!」「はいっ!」あちこちで声が上がる

「ナタリーさん、皆さん、ありがとうございます!」

ダイアナとアレスを見ると2人は頷いて前に出た

「ダイアナとアレスが皆さんのお名前を確認します。男性と女性に分かれて下さい。誘導はアレクが担当します。ゆっくり移動して下さいね」


アレクが前に出て来て「では右側、ダイアナがいる方に女性、左側のアレスの方に男性に集まって貰います。慌てずゆっくり移動して下さい。2人ずつ並んで列を作って下さい!」アレクの声に少しずつ移動が始まる

ダイアナとアレスも並んでくれた人達の名前を順番に書いている。流石だね……2人共聞くことなく皆の名前を知っている様だった

アレクは移動する人達を上手く誘導している。少し高い場所から見ているとアレクが交通整理のお巡りさんの様に見えた


「皆さん、移動しながらで良いので聞いて貰えますか?」私は拡声器で声をかけ始める

「皆さん、今日は何を持って来てくれてますか? 入浴に必要な物を紹介しますね! まずは必ず持って来てもらいたい物! 温泉に入ると水浴びをした時と同じ状況になります。なので体を拭く乾いた手ぬぐい、タオルを用意して下さい。びしょ濡れでは帰れませんから」

群衆から笑いが起こる

「他には体を洗う手ぬぐい。これは普段体を拭いている手ぬぐいで大丈夫です。なくても体は洗えますがあった方がより綺麗になると思います。それから、清潔な肌着もあると良いと思います。スッキリさっぱりした後に綺麗な肌着を身に付けると気持ち良いですよ。手ぬぐいや肌着を袋など入れ物に入れて持って来ると濡れた手ぬぐいや着替えた肌着を入れて帰る事が出来るので便利だと思います」

みんな真剣に聞いてくれているのがよく分かって嬉しかった

「それから最後に! これが1番重要かもですが……」

一瞬場が静まり返る……

「受付時に入浴料を頂きます! お金を忘れずに持ってきて下さいね!」

そうにっこり言うとあちこちで笑いや声が上がる

「お風呂上がりに飲むと美味しい飲み物も販売してますのでそちらも良かったらお試し下さい!」


「お〜ちゃっかりしてるね〜宣伝かい?!」気のいい親父さんから声が掛かる

「ふふっ、商魂たくましい皆さんの姿をいつも見てますからっ!」と胸を張ってドヤ顔の笑顔を振りまく

「サクラ様も一端の商売人かい?!」軽口が飛び和やかな雰囲気に辺りは包まれた


「よしっ、じゃあ俺は商売に戻るかな。エルドラドにはまた今度寄らせて貰うよ」

「おっ、そうだな。俺も今日の所は引き上げるかな」

「だなっ。今日の客入りはもう十分そうだし」

「ふっ、俺は次は一番乗りを狙うぜ!」

口々に言って「じゃあ!」って感じで私に手を上げて背を向ける

「あ……ありがとうございます! 絶対また来てくださいね! 待ってますからっ!」

私は去って行く人達にお礼を言って手を振った


「サクラ様、私は着替えを取りに家に戻ります」

「私も」「僕も」と声が掛かり列を離れて行く人達もいた

「用意が出来たらお呼びしますのでここでもうしばらくお待ち下さい」店舗前で待ってくれている人達に声を掛けて私達は一旦中へ戻った


「それにしても……みんなの手際良さにはびっくりだったよっ! 凄いねみんな」尊敬を込めて皆を見つめた

「凄いのはシェリー様とダイアナです。俺とアレクは言われた通りに動いただけですから」アレスがシェリーとダイアナに視線を向ける

「……もしかしたらこの様な事態になるのではないかと予測を立ててました。問題がなければそれで良いし、もし想定外の人数が集まった場合はどうすれば良いかシェリーと相談してたんです」

ダイアナの言葉に私はびっくりして目を見開いた

「えっ?!この状態を予想してたの?」

「はい。大衆浴場の営業開始は宣伝しておりましたから……」シェリーの言葉に続けアレスが

「それにサクラ様が関わってるって知ったら大衆浴場に行こうって思う人はかなりの人数になるでしょうからね」

「そう言われてみればそうだな〜」アレクがのんびりした声を出す

「でも……正直ここまでの人数とは思っていませんでした……」ダイアナが悔しそうな顔で呟く


「開店前に人が集まり始めるだろうから並んで待って貰える様に動こうと思ってたんです……従業員の方々にはそれぞれの仕事があるから私たちで動こうって相談してたんです」

「そっか〜。それであんなにテキパキと動けたんだね。それでも凄いよ。あれだけの人数を混乱する事無く整列して貰えたんだから。ありがとうダイアナ、シェリー、アレス、アレク」私は改めてみんなにお礼を言った


「凄いのはサクラ様ですよ……」ダイアナが呟く様に言う

「うんうん」とアレスが頷いている

「私? 私は何もしてないよ。集まってくれた皆んなにお礼を言って宣伝しただけだし……」

改めて考えてみると入浴に必要な物を改めて紹介してドリンクの宣伝をしただけだ……なんか恥ずかしくなって来た……

「サクラ様のお言葉で、今日は諦めて後日出直そう。って思ってくれた人が沢山いました。それも自主的にです。その人達のおかげ我々は入店をお断りしなければならない事態を避けられたんです。……凄いですよ、サクラ様は……」

「えっ?!そうか……帰ってくれる人が居なかったら大変な事になってたかもだね……おぉ〜みんなそれを分かって仕事に戻ったりまた来るって言ってくれたのかな。凄いね皆んな。流石フォレストグランの国民だね〜人柄が溢れてるわ〜」

私はなんだか倖せな気持ちになりテンションが爆上がりした

「……えっ? いや……まぁ確かにそれも無くはないでしょうけど……」

ダイアナとアレスが見つめ合っている……んっ? どうした?


「サクラ様、待合室の準備が整いました」従業員さんが声を掛けてくれる

「はい。分かりました」返事をして「じゃあもうひと頑張りしてくれるかな?」と皆んなと入口に向かった


――つづく――




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