# 66 ギルド長達とギルドマスター
魔力草を沢山貰って帰った後、汗もかいたし天ちゃんと一緒に露天風呂へ出掛けた
疲れを癒し、ノーム様の祠へ寄って今日の不思議な草原の泉の話をする
《ほぉ、あれがこっちに干渉するとはのぉ……サクラに興味を持ったのかのぉ》そう言ってノーム様は目を細めた
「ノーム様はあの御方をご存知なのですか? あの御方は一体……」
《あれの泉は元来この精霊の森に在るべきものなのじゃ……あの泉はあれが管理しておったのじゃが……昔……人間で言う時間じゃと遥か昔になるじゃろうが…………あれは人間との諍いに耐えられなかったのじゃろうて……泉ごと姿を隠してしもうた……儂は……あれの好きにさせたのじゃが……これほどの時間が過ぎるとは思っておらんかったのぉ……》
ノーム様は懐かしさと後悔の念が混ざった眼差しを私に向けた
《サクラはあの泉の水がどんなものか分かっておるのかのぉ?》
「……はい……魔力のこもった魔力水で……飲むと最大魔力値が上昇する場合がある。と……」
《うむ。昔、あの泉の水を飲んだ人間は魔力を増したのじゃ……過ぎた力を持った人間共は……暴走した。あれは自分を責めた……人間を間違った方向へ導いてしまったのは自分じゃと……》
「そんな事は!」
《そうじゃ……あれのせいではない……じゃがあれは自分を許せず人間の前から消える道を選択したのじゃ……》
《あれは優しすぎるのじゃ……弱ったものは人間も魔物も区別なく癒しておった……》
「あっ……あの草原の魔物はみんなとても穏やかでした……泉の精霊様のお力なのですか?」
《そうじゃろうのぉ……あれの力で魔素が変化したのじゃろうて……進化か退化かは分からんがのぉ》ノーム様は何となく……嬉しそうな言い方をした……進化……退化……う〜ん……どう言う意味だろう?
《人間の事もほおって置けん事もあった様じゃし……儂もあれの事は好きにさせておったのじゃ……元気にしておるのなら心配なかろうて……》
「もしかして村の言い伝えですか?」
《そうさのぉ〜そんな昔話もあったかのぉ〜儂は知らんぞぉ。ふぉっふぉっふぉ〜》
むぅ……どうやら詳しくは聞かせて貰え無い様ではぐらかされてしまった
「また……お会い出来ますかね……またって言っても遠くからお姿を拝見しただけなので会ったと言って良いのか分からないですが……」
《どうじゃろうて……姿を見せたという事はそう言う事かもしれんのぉ。ふぉっふぉっふぉ》
あの不思議な草原と泉の精霊様の謎が解けて私は満足してノーム様の祠を後にした
ダイアナとアレスにポーションを使って貰いたくてお試し用に渡したのだが、2人とも速攻で使ってくれたようだった……
効果はこれまで使用したどの回復薬よりも良かったと言って貰えた。売り込みをする時には是非感想をアピールしてもらいたいものだ
そして……神官殿との面談がやっと叶う事となった
場所はギルドでダイアナにも同席して貰う。私1人じゃ上手く商品説明とか出来るか不安だし、シェリーとダイアナがいてくれれば心強い
ダイアナ情報によると……
ギルドは大きな建物で入口が2ヶ所ある。『冒険者ギルド』と『商人ギルド』だ
中は繋がっては居るがそれぞれのカウンターがあってそれぞれに業務が行える様になっている
両方のギルドに用事のある人は移動が楽で良いんじゃないかなぁ〜
私もダンジョンに潜ったり魔物の討伐をしたりしてギルドにお世話になるのだ!
2階はそれぞれのギルド長の執務室や面会室があるそうだだ。個別の商談もここで行うのだとか……
そして3階はギルドマスターの執務室。ギルドマスターは冒険者ギルドと商人ギルドの両方を管理する立場にあるらしい。具体的な仕事内容はギルドをまとめる事だとざっくり説明された……
ギルドマスターは騎士団とのパイプ役も兼ねているそうで、魔物の討伐等、冒険者だけでは手に余る事案は騎士団と合同で討伐に当たるのだそうだ
会合には私とシェリー・ダイアナ、それぞれのギルド長に副ギルド長、ペターソン殿……そしてアルベルト殿で行う事となった
何だかお偉いさんばかりで緊張するんですが〜。ってか何故にナンバー2のアルベルト殿がここに?!
全員の紹介を終えて私は軽くパニクっていた……
そんな私の視線と動揺を読み取ったのか、ペターソン殿が私に声を掛けてくれる
「今回の会合内容は国の一大事業と成りうるので、国としての責任者も同席した方が良いとダイアナに言われたのですよ。ダイアナから予め話を聞いていますが……まず詳細を知るのは今後この国を導いて行かねばならぬ人間に絞らせて頂きました」
……ダイアナ……一体どんな話の持って行き方をしたの〜?!
ちょっと青くなりながらダイアナに視線を向けると、そこにはドヤ顔をしているダイアナが居た……グッジョブじゃないから~
「あ……ありがとうございます。これからお見せする物が国の利益に繋がると良いなって思ってます。今日はよろしくお願いします」私はとりあえずそう挨拶をした
秘書の様な方が持って来てくれたお茶を飲みながらギルドについて話をしてくれる
『冒険者ギルド』『商人ギルド』共に『ギルドカード』を発行し、それが身分証代わりにもなるそうだ。カードにはそれを持つ者の能力に応じて数段階の種類がある。経験と実績によってランクが上がるのだそうだ。私もギルドカード欲しい〜
「わ、私も登録出来ますか? 詳しく内容を聞かせて頂きたいのですが!」前のめり気味になった私はシェリーに窘められる……
「サクラ様、それはまたの機会にお願い致します。今日の会合の目的をお忘れない様に……」
「はい……」
しょげた私が可哀想に見えたのか……ペターソン殿が「この後でも日を改めてでも構いませんのでギルドに関しては詳しく説明させて頂きますので」そうにこやかに言ってくれた
「ありがとうございます」私は一気に浮上して元気を取り戻す
「ギルド内も案内させて頂きますね」と商業ギルド副ギルド長ジェイコブ殿が何だか出来る営業マンの様な微笑みを浮かべた
この人に任せれば大丈夫って思ってしまうオーラを兼ね備えた物腰の柔らかな人だ。副ギルド長なんて役職についているのだから仕事はバリバリに出来る人なんだろうな〜
ギルド長のトーマス殿の方は私がどんな人間なのか見極めようとしている感じがする。何だか隅々……心の中まで見透かされてしまいそうな視線を感じた
でも……それが不快に感じないのはそれはトーマスのお人柄なのかもしれない
そして冒険者ギルドのおふたりは逞しい身体付きで凄く強そうに見える。若かりし頃の武勇伝が沢山ありそうな感じがする。
強そうで迫力があるのに怖い感じがしないのは、その眼差しがとても優しいものだからなんだと思う
『気は優しくて力持ち』って感じ?
「あの……ギルドマスターは今日はいらっしゃらないのですか?」ふとギルドの最高責任者? ギルドマスターがいない事に思い当たり尋ねてみる
「すみません……ギルドマスターは不在でして……」神官殿がすまなそうに頭を下げる
「お仕事ですか?」小首を傾げると冒険者ギルド副ギルド長のジェームス殿が「マスターは視察……と言うかダンジョンの調査に同行しております」何だか困惑した表情に見えたのは気のせい?
「魔素が濃くなって来ている場所があってそこにダンジョンが出来るのではないかと調査団が向かったのですが……マスターは……血の気が多いヤツでして……自分の目で確かめたいと後を追って出て行ったのですよ。呆れたヤツです」肩を竦めながら冒険者ギルドギルド長のテオドール殿が言ったが、細められた瞳にはマスターへの愛? 信頼? そんな感じの感情が見て取れた
「ギルド長はマスターの事を信頼していらっしゃるんですね」私がそう言うと
「信頼?!いやっ、あいつはもう言っても聞かないヤツなんで……」何故か動揺するテオドール殿……
他の皆さんも苦笑混じりの笑顔でテオドール殿を見つめている
ふむ……マスターは暴走気味ではあるけれど……それが許されてしまう……みんなに愛されてる憎めないキャラって感じなのかな?
なんとなくダイアナを見ると瞳をキラキラさせていた。もしかしたらマスターの事もダイアナは知ってるのかな? 後で話を聞いてみよう!
――つづく――




