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# 65 草原の泉

少し歩くと『泉』の様な水場が見えてきた

「あそこの泉の側に魔力草があるみたい。あそこから魔力が感じられるから」そう言って振り返りダイアナ達を見る

まだ魔物達に警戒しながらも足元の子達を踏んだり蹴飛ばしたりしない様に……慎重に歩いてある感じがして微笑ましく思った。このまま仲良くなってくれると良いな……


「わぁ〜綺麗な泉だね〜。泉の精霊? 女神様? とかが出てきそう」

神秘的な泉を前に私は感嘆の声を漏らす

ダイアナとアレスは……なんだが固まっていた……


「この泉は魔力水だね……凄く濃い魔力が溶け込んでる感じがする……この魔力水の泉でここの草原の草木が育ってるのかな?」

魔物さん達が泉の水を飲み始める

「ここは水場でもあるのね……」

「綺麗な水ですね……」

「魔物は飲んでるけど……人間も飲んで大丈夫なのでしょうか……」

ダイアナの言葉にアレスが「えっ?!」と目を丸くする

「チャレンジャーだね、ダイアナは」ふふっと笑って泉の水を鑑定してみる

『魔力の込められた湧き水。飲料可能。最大魔力値が上昇する場合がある』

「飲めると思うよ。自分で作った魔力水も飲んでみたけど普通の水と変わらなかったから……

ただ、ここの魔法水はかなり魔力が込められてるからどんな味がするかは飲んでみないと分からないけどね」

そう言うと天ちゃんが泉に顔を突っ込んだ

「てっ、天ちゃん!」

《サクラ様の魔法水と同じだよ。お水だけど……なんか違うかも……》

「天ちゃん……」ちょっと呆気に取られたが「あ〜味はお水と同じだって。でもなんか違うって……」

泉の水を手ですくってみる。「う〜ん……そう言われてみると少し手にまとわりつく感じ? サラサラじゃないね」

もう一度すくって口に含む。

「うん。別に何ともないよ。味は……水だね」

最大魔力値が上がったがどうかは分からない。伸び代的なものが影響するのなら私はもう無理なんじゃないかな〜とかも思うけどどうなんだろう。まぁ改めて鑑定してみる気はないからどっちでも良いんだけど。

「2人も飲んでみたら? こんな魔力水を飲む機会なんてそうないと思うよ」

「どうぞ」シェリーが2人にコップを渡している

……うっ……私は手で飲んじゃったよ……お行儀悪かった?

泉の魔法水をコップに汲んで……少し躊躇した感はあるけど「えいやーっ」って感じでコップの魔法水をあおる2人……そんな警戒しなくても良いのにね

「どう?」

「はい……確かに普通の水と変わらないですが……」

ダイアナの言葉にアレスも頷き、

「……なんか……身体の奥が温かくなった感じがします……」

「あっ、私もです。温かくなって来ました。心地よい温かさです」

「へぇ〜。私は何も感じなかったけど……」

2人のステータスを確認したい衝動に駆られたけど……ダメダメ! もう人の鑑定はしないって決めたんだから……とグッと堪えた

「もう一杯飲んでみます!」とダイアナが泉から魔法水をコップに汲んで再度一気飲みした

「どう?」

「……何も感じません……」ダイアナがちょっとしょぼんとする

アレスは「やれやれ……」って表情を浮かべたが何も言わなかった。ふふっ


じゃあ採取しようか!

泉の周りに沢山生えている魔力草に手を掛け「頂いて帰りますね。ありがとうございます……」と採取を始めた

魔力草を摘み、2株ほど根ごと持ち帰る事にした。鉢に土と一緒に移して泉の魔力水で土を湿らせアイテムボックスに入れる

魔力草以外にも他の薬草類も採取する。これでまたポーションや万能薬、洗剤が作れる

「沢山採取出来たね。そろそろ戻ろうか」

採取をしてくれているダイアナとアレスに声を掛ける

「はい。沢山採取出来て良かったですね」

「魔物達もなんか、手伝ってくれた感じですよね」

アレスが魔物さん達を見る。その眼差しがさっきとは違う優しいものに変わっていて嬉しくなる

可愛い魔物さん達は「こっちだよ〜」「こっちにもあるよ〜」みたいな感じで私たちを誘導してくれたのだった

「そうだね。みんなありがとう」側に来た子達を撫でて行く

「また……会えるかな? また……会いたいね……」

私達は後ろ髪を引かれる思いで泉から離れた


魔物さん達は別れを分かって居るのか、私たちに付いてくる事はなく見送ってくれた

泉から離れてこの空間ともサヨナラかな……と思える地点の近くまで来て私は振り返った……

泉の真ん中に……ユニコーン? 輝く1本の角を持つ馬のような生き物……あれは精霊? が浮かんで居た……

側にはポニー? 子馬が2頭寄り添っている。お母さん……なのかな? ユニコーンだけど、泉の女神……そんな感じがした。私は自然と手を合わせて感謝の祈りを捧げた


「抜けた……みたいだね……」

「はい。フォレストグランの草原です」シェリーがそう言って地図を出す。現在地が点滅している

「不思議な草原……貴重な体験だったね」

「はい……ここと変わらなく見えるのに、こことは違う世界でしたね」

「そうだね……魔物が可愛いって思うなんてありえないよね……」

アレスとダイアナもしみじみとした口調になっている

「ふふっ、新たな言い伝えの誕生? 人懐っこい魔物がいる草原! ってね」

「言い伝えか〜。話しても信じて貰えないだろうな〜」

「うんうん。なんか夢でも見てた感じだよね」

「じゃあ、良い夢を見たお目覚めのお昼ご飯にしましょうか!」

「はいっ!」キレイにハモった返事が返って来た


「シェリーにお弁当を作って貰ったんだよ〜。楽しみ〜」

「オベントウ……ですか?」あれっ? お弁当ってないのかな?

「え〜っと、お出掛けして町から出たりしてご飯を食べる場所がない時に家から持って来る食べ物なんだけど……」

「携行食ですか?」アレスが怪訝そうな顔をする

「あ〜いや、そんな大仰な物じゃなくって、ハイキングとか遠足とかお花見とか運動会とか……え〜っと、とにかく遊びに行く時に食べるお昼ご飯なの……行楽弁当?」遠足とか運動会とかないし、行楽もない? だったら分かんないよね……

「見てもらった方が早いのではないですか?」シェリーが助け舟を出してくれる

「そ、そうだね……とりあえず準備しよう。木陰は……」

「向こうに大きな木があります」

「よし、じゃあ移動しよう」


レジャーシートを敷いて、タライに水を張って手を洗う。石鹸と浄水雲の優秀さも一緒に試して貰った

シェリーの作ってくれたお弁当は『お重』だった

「わぁ〜開けるのが楽しみでドキドキするね。シェリー、ありがとう」

蓋を取るとおにぎりが沢山入っている

「具は何かな〜」

「こちらから『塩むすび』」

「あ〜待って! 待って! 食べてみて確認したい!」

「……畏まりました。お好きなものからお召し上がりください」

2段目3段目にはおかずが綺麗に詰められている。卵焼きに唐揚げ、ウインナーにハンバーグにエピフライ! お弁当の定番の品々がこれでもかっ! と詰まっている

そしてブロッコリーやミニトマトも彩りに添えられている

「サンドイッチもございます」とバスケットを出してくれる

「くぅ〜豪華だね〜。どれも美味しそう! さっ、みんな食べよう!」

お重を食い入るように見つめている2人に取り皿とフォークを渡す

「天ちゃんはどれから食べる?」取り皿とお箸を取って天ちゃんに聞いてみる

《ボク全部食べたい!》そんな天ちゃんの声に「よし分かった! ちょっと待ってね」

おにぎりとおかずを取り皿に乗せていく。何だか食べ放題のビュッフェでてんこ盛りになったお皿みたいになってしまった

「はい、天ちゃんどうぞ」

《ありがとうサクラさま。いただきま〜す》天ちゃんが食べ始める

ダイアナとアレスもそれぞれお皿に盛っている

私もあれこれ盛り付けて「いただきます」

「お茶もございますのでどうぞ。ダイアナ、注ぎ分けて貰えますか?」水筒とコップを取り出しダイアナに声を掛ける

「はい。お任せ下さい」

お茶のコップを受け取り「ありがとう」と口を付ける。冷たく冷やされたお茶……麦茶? が喉を潤してくれた

「あ〜冷たくて美味しい〜」

「天ちゃんもどうぞ」《ありがとうダイアナ》

天ちゃんとの会話にダイアナも嬉しそうだ

美味しいお弁当をワイワイと食べて、食後のデザートまで頂き大満足の私たちであった

ちなみにデザートはコーヒーゼリーだった。程よい苦味とツルんとしたのどごしの良さも相まって満腹だったはずなのにペロリと平らげたのだった


町に戻ってからは、工事の進んでいるあちこちを案内して貰いながら、どんな街並みになって行くのか楽しみが更に増したのだった。


――つづく――

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