# 58 まったりとした1日
その日の夜、ダイアナから騎士団へ見習いとして入団したと転移魔法で手紙が届いた
私への手紙は短いものだったが、シェリー宛の手紙にはその日の報告としての詳細が届いたそうだ
シェリーは『報連相』が完璧なダイアナに嬉しそうだった……なんかごめん……
新しく加わった朝のルーティン……薬草さん達のお世話を終えて朝食を済ませると、ダイアナから届いた報告書? をシェリーから渡された
「ん? これってシェリー宛だよね? 私が見ても良いの?」
「はい。サクラ様への報告として書かれたものです。いきなりサクラ様宛にするのは失礼があるかもしれないからとワタクシ宛に送る事にした様です。全てワタクシが管理しても構いませんが……ご覧になりませんか?」
「そう……なんだ……うん、ありがとう。読みたい。……でも読み終わったら管理はシェリーに任せても良い? 私が持ってるとバラバラになりそうだし……」
「畏まりました。ダイアナには筆記用具等、多めに渡した方が宜しいかと存じます。おそらく……これらの報告とは別に個人的な物も書かれていると思いますので」
報告とはまた別の物……?
「……そうか……そうだね……そうかも……ダイアナは優秀だって思ってたけど、それはダイアナの努力があってこそなんだよね……凄なダイアナ……」
騎士団見習いとしての訓練を終えた後も自主練とかして鍛えてるんだろうな……
そして学んだ事はこうやって書面に残して……私達への報告の分まで作るなんて……大丈夫かな? ダイアナ……疲れてないかな? そんな事を考えながらダイアナの報告書を読んだ
そして、ダイアナに贈る文房具あれこれを購入する
ノートもだけど、整理のしやすいルーズリーフタイプやリングファイル・バインダー等も揃える
筆記用具には鉛筆やシャープペンシルにボールペンの他にも蛍光ペンやマジック各色に色鉛筆も入れる。定規や修正テープやテープのり……普通のスティクのりもあった方が良いかな?
ついこの間まで普通に使っていた道具を前に胸を締め付けられる様な感じがした……
気持ちを押し込めそうにしてから私は思い出し、「こういうの……ずっと普通に使ってた……なんかちょっと切ないね……」と素直な気持ちをシェリーにポツリと告げた
弱音? みたいな気持ちを吐露したらなんか不思議な感じなんだけど喉のつっかえが少し取れた気がした
「ワタクシも、サクラ様はこういった物を使用されていたのでしょうか……と考えていました」シェリーの穏やかな声に心が温まってシェリーと顔を見合わせた
ダイアナからの手紙には朝、騎士団との訓練の前にこっちに寄りたいとあった通りダイアナが元気に訪ねて来た
「サクラ様、今日のご予定を伺っても宜しいですか?」ダイアナがハキハキと尋ねる
「予定? まだ特に決めていないけど……」
「承知致しました。お出掛けなさる時は我々の誰かが護衛に付きますのでよろしくお願いします」と頭を下げる
「あ……ありがとう……我々ってダイアナとアレクとアレスの事?」一応確認する
「はい。町中では3人の内の誰かがサクラ様にお供します」
……それって私が出歩くと3人の訓練を邪魔するって事じゃ……
「ダイアナ、今日は特に用事もないから家に居るよ。神官殿……ペターソンさんに『温泉』の件でお話が出来る日程が決まったら連絡貰える様に伝えて貰えるかな? ペターソンさんには会う?」
「はい。承知致しました。ペターソン様にお伝え致します」
「それから……ダイアナにも内容を把握していて貰いたいからダイアナの時間も少し貰って良いかな? ペターソンさんとの打ち合わせの前にいつでも良いから」
ダイアナは目を丸くしたあと破顔した……かっ、可愛い……
「ありがとうございます! では早速! 本日の訓練が終わった後に参上しても構いませんか?」
「今日? 私は構わないけど……訓練始めたばかりで疲れてない? 落ち着いてからでも良いよ?」
「大丈夫です! 訓練はまだ基礎の基礎って段階ですから疲れはありません。逆に力が有り余ってる感じなんです。凄く……気力も体力も充実しています!」
ダイアナが晴れ晴れとした顔で答える
「ダイアナ? 飛ばし過ぎはダメだよ? 加減はしっかり考えてね? 私は……ダイアナが無理をしないか心配だよ…… 」私はそう言って視線を落とした
「ありがとうございます。サクラ様……」
さっきまでの元気ハツラツな声ではなく落ち着いた声に驚いててダイアナを見る
「なんか……くすぐったいって言うか……そんな風に心配して頂けてホントに……嬉しいです……」
ダイアナがなんだか今にも泣き出しそうな表情で微笑んだ
「大丈夫です! 私の役目はサクラ様をお守りする事です。鍛錬はもちろん欠かしませんが、肝心な時に使い物にならなければ意味がありませんので!」
ダイアナは真っ直ぐな瞳に私は安心した
「分かった! ありがとうダイアナ。訓練頑張ってね。でも……やっぱり無理はしない様に!」そう言って私はダイアナを見つめた
ダイアナもニコッとしながら頷いてくれた
ダイアナを送り出した後、私は天ちゃんと遊んだりアコギを爪弾いたり……リラックスした時間を過ごした
「こうやってまったり過ごすのは良いね……昨日から連休って感じでゆっくり出来たわ〜」
ソファに座って天ちゃんを撫でながらシェリーの入れてくれた紅茶を飲む。う〜ん、やっぱりシェリーの入れてくれるお茶はどれもサイコーだよぉ〜
「そうでございますね……慌ただしい毎日でございますから……これからは少しゆっくりと活動して下さるとワタクシも安心です」
シェリーの言葉に「うっ……」と詰まる
「善処します……」そう言って笑い合った
お昼ご飯を食べた後も私はゴロゴロと過ごしていた
なんだか異世界転生が夢の中の話で目が覚めて「変な夢見たなぁ〜」なんて言いながらゴロゴロしている様な錯覚に一瞬囚われる……
改めて考えると、もしかしたら私はこの現実を受け入れられなくて……あれこれ動き回る事で現実逃避してたんじゃないかな……
そして今……私はリラックス出来ている
やっとこの世界が私の今なんだって事を受け入れる事が出来たのかもしれない……
「シェリー……今思ったんだけど……」私はこの事をシェリーに打ち明けた
「左様でございましたか……思い返せば……確かにサクラ様はいつも突き進んで……余裕のないお顔をされていらっしゃいました……今はとても穏やかなお顔をされていらっしゃいますよ……」
「うん……これからはもっと余裕を持って考えたり行動したりする……いや……出来そうな気がする。これからもよろしくね、シェリー」
「はい。こちらこそよろしくお願い致します」
そんな風にダラダラ……いや、のんびり過ごしているとダイアナがやって来た
「お帰り! ダイアナ。早いね?!」時間はまだ15時位だった……
「はい。私たち見習いの基礎訓練はまず基礎体力の向上からですので合同訓練の後は自主練になりますので」ハキハキとダイアナが答える
「自主練……ってどんな事するの? 基礎体力向上訓練?」
「それぞれですね……走り込みをしたり筋トレをしたり……まずは身体作りです。私も習った事を一通り実践しています」
「ふんふん」と頷いて……
「それって見学とか出来るのかな? 私もそういう基礎トレーニングってやってみたいな」
「……畏まりました。確認してみます。……あの……私から説明させて頂いても構いませんが……あっ、サクラ様が宜しかったらですが……」
「?!ダイアナが私に教えてくれるの? え〜! 嬉しい〜! ……あっ……でもダイアナの自主練の邪魔になるから……」
「邪魔だなんて、とんでもないです! お願いします!」とダイアナが頭を下げる……
「いやいや……お願いしますは私のセリフだから……」ふふっと笑うとダイアナが首を傾げる
「じゃあ、指導お願いしても良いかな? ダイアナ先生?」
「せっ、先生?!」ダイアナが目をクルクルさせる姿が可愛かった
私はダイアナに「まずは柔軟から!」と体をほぐすストレッチを習った
騎士団バージョンとダイアナ指南書バージョン……
なかなかハードなメニューだった……
ダイアナはシェリーに更に事細かくレクチャーしている……
私は安易にやってみたいなんて言った事を少し後悔していた………




