# 57 ダイアナの生い立ち その2
おやつタイムを和やかに過ごしてわたしはダイアナにどう切り出せば良いのか考えていた
「サクラ様……私には『固有スキル』がありません……サクラ様は私のスキルに関して何か思う所があったのですか?」
ダイアナの方から切り出してくれた……
やっぱりダイアナは観察力・洞察力に長けて空気を読む事も出来る
「うん……ダイアナのその社交性、コミュニケーション能力、秀でた観察力や洞察力……情報収集能力……加えて身体能力の高さ……私の聞いた『固有スキル』に当てはまる能力だと思ったの」ダイアナは目を見張って聞いている
「だけどダイアナは『固有スキル』を持っていないって言った……だからその『固有スキル』は両親から何らかの形で受け継がれるのかな? って想像したの。継承……って言うの? 代々受け継がれていくそう言う『固有スキル』があってもおかしくないのかなって」
ダイアナがゆっくり首を横に振るう……
「私の両親は私が10才の時に亡くなりました。私はそれから村長の家で育てられました……」
そう言ったダイアナは突然「違うっ!」と叫んだ……
「えっ? 違う……って……」
「私の両親は私が10才の時に村を出て帰って来ませんでした……」
「えっ?!」私は言葉を無くした
そしてダイアナは黙り込んだ……
まるで自分の思考の中に閉じこもってしまったかの様に私の声が聞こえない様だった
「サクラ様……今突然私の頭の中に両親が村から出ていった時の様子が入って来ました……
両親は決着を付けて戻って来る。と村長に告げました。村長から決着とは何だと聞かれてもこの村を巻き込む訳には行かないからと何も話さなかった……そして私……ダイアナの事を頼むと……もし自分達が戻っ来れなかったとしても、この村で生まれ育ったダイアナならこの『隠里』の人間として生きて行けるだろうと」
ダイアナが沈黙して静寂が訪れる……
「思い出しました……両親は……私達はしばらく家を留守にするから村長さんの言う事を良く聞いて待っててね。そう私に告げて村を出て行きました……私は村長さんの家でお世話になる事になりましたが両親はすぐに帰って来ると思ってた……だけど2人とも帰って来なかった……
でもっ! 私は今まで両親は死んだと思ってた! お葬式もしたし村の人だって! 何? どうして? どうなってるの?!」
ダイアナは混乱して頭を抱え込んでいる。その瞳には恐怖の色が浮かんでいた……
『記憶操作』そんな言葉が頭に浮かんだ……
私は立ち上がってダイアナの横に座りそっと肩を抱いた
ハッとした様にダイアナの視線が私に向く
「ダイアナ……ごめんなさい……私が貴女のスキルやご両親の事を尋ねたから……貴女の蓋をされた記憶が蘇ったのかも……ダイアナの知らないご両親と村長さんとのやり取りが見えたのは何故だか分からないけど……」
ダイアナの視線がさっきと同じ様にまたさまよい始めた……
「サクラ様、それは両親が私に遺してくれた記憶の様です……他の記憶……って言うか、両親の言葉を感じました」
ダイアナの瞳は先程の恐怖の色は消え、いつもの好奇心旺盛な瞳に戻っていた
ダイアナは眼をキツく閉じ言葉を続ける
「両親は……私に普通に育って平凡な毎日を生きて……普通に結婚して普通の倖せを手に入れて欲しい。と願っていました……だけどもし……もし仕えたい主君に出会えたら……その『能力』を解放しなさい。と……」
ダイアナは私に真っ直ぐに視線を向け「サクラ様、私はサクラ様に仕えたい。私に……サクラ様の為に生きる事をお許し下さい」そう言って頭を深々と下げた
私は困惑した……ダイアナの封印された記憶を掘り起こしたのは間違いなく私だ
そしてその封印されたされた能力を解き放つ事が出来るのも多分私なんだろう……
ダイアナは私に仕えたい。と言ったのだから……
でも……
「ダイアナ? 貴女のご両親は貴女に倖せになって欲しいと望んでいたのでしょう? だったら……」
「はいっ! 私の倖せはサクラ様に仕えてサクラ様のお力になる事です。私はなんの取り柄もなかった……だからサクラのお傍に居てもなんの役にも立たない……そう思っていました……でもっ! 今は私の中に眠っている力が分かります……この力をサクラ様の為に!」
ダイアナの目は真剣でキラキラと真っ直ぐに私を見つめている
でも……ダイアナの能力は危険物なのかもしれない……
ダイアナの身に危険が及ぶ様な事態は避けなければっ!
「ダイアナ? 貴女の中に眠ってる力は……もしかしたら危険な物なのかも知れない……だからご両親はダイアナにこのまま普通に生活して倖せになって欲しいと願ったんじゃないの? 力を解放する事は危険と背中合わせなんだと思うよ?」私はダイアナの瞳を真っ直ぐに見て言った
「はい……両親の事を考えても危険なのかもしれません……」逡巡する様に瞳が揺れたが、それはほんの一瞬でダイアナの瞳は真っ直ぐに私を捉えた
「サクラ様……私は私の中に眠る力の存在を知らなくてもサクラ様にお仕えしたいと思っておりました。今……私には自分の中にサクラ様のお役に立てる力がある事を感じています。……どうか……私に生きる道をお与え下さい」そう言って頭を下げる
私はダイアナの本気を……真っ直ぐな気持ちを受け止める覚悟を決めた……
「分かった……一緒に生きよう?!……でも条件がある……」
ダイアナの顔がパッと輝いてすぐにしおれる……
「条……件ですか? それはどの様な……」
「主君とか仕えるとかは無しで! 私達は友達でしょう?
そうだね……これからは『仲間』……『家族』になりましょう? 」
そう言ってニッコリすると
「ありがとうございます!」とダイアナが頭を下げる……その瞬間……ダイアナの身体を眩い光が包んだ……光が徐々に小さくなりダイアナの中へ消えて行く
「サクラ様……このダイアナ、身命を賭してサクラ様にお仕え……いえ……精進致します……」
膝まづいて俯くダイアナに私はため息ひとつ……
「身命は賭さなくて良いから! 安全第一! 命を大事に! 良い? ダイアナ!」
「はいっ! 承知致しました!」嬉しそうに返事をするダイアナだったが本当に分かってくれたのだろうか……
「シェリー・天ちゃん! これからどうぞよろしくお願いします」ダイアナはシェリーと天ちゃんに頭を下げる
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」シェリーが柔らかな声で挨拶を返す
《ダイアナもボクたちの家族になったの?》天ちゃんの疑問にシェリーが「そうですよ。ダイアナもワタクシたちの仲間……家族です」と答える
《分かった! ダイアナ……えっと……よろしく!》
ダイアナは目を見開き口をパクパクさせながら私と天ちゃんを交互に見て「い、今頭の中に響いた声は天ちゃん……なのですか?」
「うん、そうだよ……天ちゃんの声は私達にしか聞こえないから……ダイアナは私達の仲間、家族になったからね。天ちゃんの声も聞こえる様になったんだよ」
ダイアナは躊躇いがちに天ちゃんに近づいて「天ちゃん……天ちゃんに触れても良い?」と尋ねる
《ん? いいよ?》天ちゃんの不思議そうな声がした瞬間、ダイアナは天ちゃんをそっと撫でて抱きしめた……
「天ちゃん、私ずっと天ちゃんをなでなでしたかったの……天ちゃんと話が出来るなんて……嬉しい……」
感激しているダイアナにわしゃわしゃされながら、困惑しつつも嬉しそうな天ちゃんだった
そんな2人を微笑ましく見つめながら「シェリー、ダイアナにもここに住んでもらう? 部屋もあるし……」
そんな会話に目ざとく? ダイアナが反応する
「サクラ様、そのお申し出はとても嬉しく魅力的なのですが……私にはしなければならない事があります。その為にも私はここでサクラ様とご一緒する訳には行きません」ダイアナがキッパリと言う
今まであんなに私の側に居たがってたのに……何だか振られた様な気分になってちょっといじける……
そんな私の微妙な顔色に気づいのか?
「サクラ様のお傍には居たいのですが……先程、私の中に『指南書』が現れたのです。これから私が『固有スキル・隠密』を極める為に私は学ばなくてはなりません。全ての指南書を極めた時……私はサクラ様の手足となる事が出来るのです。その為の努力は惜しまないつもりです!」
ダイアナが高らかに宣言した……
「ダイアナ? 無理をしたらダメだよ? 無茶な事もしないでね?」私は張り切るダイアナに一抹の不安を覚えた……
「ダイアナはまず何を始めるのかしら?」
私の不安を他所にシェリーが尋ねる
「はい。まずは私も騎士団に入って見習いから始め身体を鍛えます。戦いの基本・基礎を学ぶには騎士団へ入団する事が1番の早道ですから」
「そう……でもダイアナの身体能力は高いのでしょう? 他の騎士との力に差があると問題が生じるのでは?」シェリーが指摘する
……確かに……ダイアナなら凄いスピードで強くなるのではないだろうか?
「ご心配なく! 騎士団では基本を学ばせてもらうだけです。その後の鍛錬は別にしますし、不自然に見える行動はしませんから」ダイアナは胸を叩く
「安心しました。それから……ダイアナがサクラ様に仕えて下さるのは頼もしい限りですが……」
「その点もお任せ下さい! 私は『隠密』……サクラ様との関係はこれまで通りに振る舞います。私のスキルもサクラ様を主君としている事も悟られてはなりません」
「ありがとうございます、ダイアナ……」シェリーは満足そうにダイアナにお礼を言う。なんか私だけ蚊帳の外?
「サクラ様、ダイアナに『転移魔法の魔法陣』を授けては如何でしょう? 紙やノート等の筆記用具と一緒に。連絡や報告に最適だと思います」
「あーうん。任せる……」
なんかシェリーとダイアナは『阿吽の呼吸』で分かりあってる気がする……
優秀な新人秘書が入って来て嬉々と教育しているシェリーを見ている様な感じがした……
「なんかよく分からないけど、ふたりに任せるよ。私の許可なんていらないから。ふたりの思う様にやって……あーでも後からでも良いから聞かせて貰えると嬉しい……かも……」
「畏まりました。『報連相』は基本ですので……」
「サクラ様、シェリー、天ちゃん、私はペターソン様の所へ行って騎士団入団を決めて来ます。護衛に関しても明日には正式通知が来てサクラ様への連絡もあるかと思います。今日はこれで失礼致します」ダイアナがペコリと頭を下げる
「ダイアナ、先に必要な物を渡しておきます」そう言ってアイテムボックスからさっき言っていたあれこれを取り出す。使用方法を確認してダイアナは自分のアイテムボックスにそれらを収納した
「サクラ様、ダイアナがここへ出入り出来る様にお願い致します」
突然声を掛けられて????となる……
「あっ、入口だね。外に行こうか」
私は外に出て入口が分かるように「ステルス可視」とダイアナに魔法を掛ける
「入口が見えれば入って来れるからね」ダイアナに告げる
また目を丸くしているダイアナに
「ダイアナ、ここへの出入りは自由ですが、人目に付かない様に気を付けて下さいね。それからあそこに設置してあるのは防犯カメラです。外の様子は家の中からでも分かる様になっています。詳しくはまた後日説明致しますね」
シェリーの言葉に頷いてダイアナは町へ向かって走って行った
――つづく――




