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#35 ユーラシアン王国

翌朝、馬車に乗って王都を目指した

遠くからでも高くそびえ立つ壁が確認出来る

入口には衛兵と思しき方々が鎧姿で立っている

素朴な疑問だが、動き辛くないのかな……どうしても思ってしまう

身を守る為には必要なんだろうけど……


☆☆☆☆☆☆


あまり触れたくはないのだが……

朝、私は昨夜渡されたドレスを身にまとっていた

久しぶりに少しだけメイクもしてみた……

自分で言うのもなんだか、

「満更でもないじゃん! 」なんて思っていた

それなのに……


アレクとアレスを前に

「どうかな?」とクルっと一回転してみる

「「………………」」無反応だった……


「もうっ! こういう時は「お似合いです」とか「素敵です」とか、言うものなのよ!……たとえ思ってなくても……」ちょっと不貞腐れる


「お似合いです……」

「素敵です……」

「棒読みっ!!ぜんっぜん気持ちが入ってない! もういいっ!」


そして騎士(ナイト)な皆さんと目が合った……

「お、お似合いです……」

「す、素敵です……」

右に倣えで同じ反応だ……

なんか凹む……ドレスを脱ぎたくなった……


その点? クラーク王とアルデルト殿は大人だ

「サクラ様、良くお似合いです」

「本当に……お綺麗です」

にこやかに褒めてくれた

「ありがとうございます」私はドレスの裾を摘んで会釈した

社交辞令と分かっていても褒められると嬉しいものだ

そう! 私は褒められて伸びるタイプなんだからっ!


馬車に乗り込む前の出来事だった


☆☆☆☆☆☆


隣国の国王一行が来る事は伝えられてあった為か、すぐに先導してくれる


白馬に乗った騎士……馬車にはドレス姿の自分……おとぎ話の世界に迷い込んだ気分になる


馬車から見える景色は街並みに変わって行く

お店らしき建物も見えて来てテンションが上がり、窓に張り付く様に外を凝視した

「サクラ様、はしたない振る舞いをなさってはいけません」シェリーにピシャリと言われてしまった

「はい……」私は大人しく前を向いて座り横目で通り過ぎる町並みを眺めた


「サクラ様、この国の国王なのですが……」

「はい、どんな方なのですか?」緊張から自然と背筋が伸びる

「そんなに気負わなくて大丈夫ですよ。

我々は彼が王子だった頃から付き合いがあります。

要らぬ先入観を与えてしまうのも考えものかとも思いましたが……

人としての彼はとても信頼のおける人物だと私は思っております」

真っ直ぐな瞳でクラーク王はそう告げた


「ありがとうございます。

少し緊張がほぐれました」

と、私はにっこりと笑顔を向けた


『人としての……』か……

「『王』という立場に立つと色々ありますよね……」とポツリと呟いた


城下町を抜けしばらくすると城門が見えてきた

大きな門に衛兵が控えている

重たそうな門扉が開き馬車は城内へと進む

なんか緊張してきた〜


『これぞお城』って感じの城内……

広くて豪華で……

これは間違いなく迷子になる……

絶対にはぐれない様にしなければ……

キョロキョロしたい衝動を抑えて前を行く背中を見つめて歩く


そして程なく『謁見の間』に案内される

イメージ通りに赤い絨毯が入口から伸びている

そして数段の階段の上には『王座』

王様とお妃様?

それに王子様と思われる青年が3人


そして部屋の横にはずらりと並ぶ煌びやかな衣装をまとった人達……あれはもしかして貴族の方々なのかな?

う〜ん、王との謁見って言うから王族だけかと思ってたけど……

なんか周りの視線が痛いですが……

そして、何やら敵意な様な嫌な感覚がまとわりつく……


部屋の中央を過ぎた辺りでクラーク王が立ち止まる

王座に座っていたユーラシアン国王が立ち上がり、クラーク王の前に歩いてくる


えっ?!王様……それ……玉座から降りて良いの? 内心で動揺する


「久しぶりだな、クラーク」

にこやかに手を差し出すユーラシアン国王

「あぁ、久しいなアルフレッド」と差し出された手をがっちりと握り握手を交わすクラーク王


……王との謁見がこんなフランクで良いのでしょうか?

それともこれが普通なの?

なんて思ったが、周りも少しザワついている……

やっぱりこれは異例?


そんな内なるサクラの動揺をよそに、アルフレッドと呼ばれたユーラシアン国王の視線が私に移る


私の前に来ると、国王は片膝をつき手を差し伸べた

私は反射的に王の手を取る

「サクラ様、アルフレッドと申します

お目に掛かれて光栄です

こちらからご挨拶に伺う事が叶わず申し訳ございません

御足労頂いた事、感謝致します」


「どうか、お立ち下さい」

私はアルフレッド王に声を掛ける


アルフレッド王が静かに立ち上がり優しい眼差しを向けてくれた

「初めまして、桜美咲(さくらみさき)です。

こちらこそお目に掛かれて嬉しく思います。

この度は突然の訪問、失礼致しました」

私はそう言い頭を下げた


この一連を目の当たりにしていた貴族がハッとした様に一斉に声を上げる

「無礼な!」

「アルフレッド王、 こんな小娘に……」

「何故王が膝まづかれて……」


ザワつく謁見の間……

うんうん、だよね〜、私もそう思うわ〜

この展開に私が一番驚いてるんだから

まぁ、「小娘」とか言われる筋合いはないと思うけど……


「静まれ!

この方をどなたと心得える!」

アルフレッド王のよく通る声が響く


……わぁ〜なんかどっかで聞いた事のあるセリフだわぁ〜


謁見の間がシンとした瞬間、これまで姿を消していたノーム様の緑の球体が現れ光り出す

眩い光と共に……

何っ! この圧倒的な威圧感……『覇気』?


ふと周りを見渡すと全員がひれ伏していた……

うわぁ〜なんか既視感(デジャブ)〜


《我が名はノーム、土の精霊王じゃ

我が名においてサクラに害をなす存在(もの)には容赦はせぬ!》

謁見の間を静寂が支配する


《アルフレッドよ、配下には物申す事もあるが……お主は信頼に足る者の様じゃ

クラークを……フォレストグラン王国の手助けを頼んだぞぃ》

声を和らげノーム様がアルフレッド王に告げ、消えた……


えぇ〜ノーム様〜この後の事は……


「サクラ様、御無礼をお許し下さい」私に頭を下げ、続けて

「クラーク、すまない」

アルフレッド王がクラーク王にも頭を下げる


クラーク王は「アルフレッド」と声を掛け

がっしりと握手を交わした


なんか……言葉は要らない? 的な感じでしょうか?

私はクラーク王の隣で微笑んだ……


アルフレッド王は平気そうですが、貴族の皆さんと王妃様や王子様はノーム様の圧のダメージが酷そう……


「部屋を移そう」とアルフレッド王が出口を示す

「後は任せた」そう言い残し出口へ向かって歩き出した


「お待ち下さい、少しだけ……お時間を頂いても宜しいでしょうか?」

私はアルフレッド王に声を掛け、

謁見の間の居る人達に両手の手ひらを伸ばし……

「安寧を……」と呟いた

うん、これでノーム様の圧で萎縮した気持ちがほぐれるはず

「お待たせしました」と振り返ると、アルフレッド王とクラーク王が驚愕の眼差しで私を見つめていた……


うっ……なんかまずい事した?

私はただ、皆さんの気持ちを楽にしたかっただけなんだけど……


「サクラ様、ありがとうございます」

アルフレッド王は豪快な破顔を見せて私の手を握った

……もしかしてこの笑顔が『素』なのかな?

私のアルフレッド王の好感度が上昇した


部屋を移動し、改めて王族の方々を紹介してもらった

マリー王妃、スチュアート第一王子、ライアン第二王子、クリストファー第三王子、オリビア第一王女


覚えられない……《シェリー頼んだ……》

《……畏まりました》


アルフレッド王はとても気さくで親しみやすい方だった


王妃は……う〜ん、『王妃様』って感じでちょっと取っ付きにくそう……


第一王子のスチュアートは王妃に似た感じ

第二王子のライアンは王と似た雰囲気をまとっている

第三王子と第一王女はまだ幼くどちらとも言えない


私の印象はこんな感じだった

と言っても、アルフレッド王以外は簡単な挨拶程度で退室したので、第一印象に過ぎないのだけれど……


ついでに言うと、貴族の方々も『王派』と『王妃派』に分かれている印象だった

私に敵意の様な者を向けたのも『王妃派』かなぁ〜


そんな感じで王との顔合わせも終わり……

豪華な晩餐も頂き……

豪華な部屋で休む事になった……


――つづく――

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