#28 アレスとアレク
和やかにおやつタイムを取りながら、アレスがポツリポツリと話してくれた……
「俺……小さい頃はあんまり身体が丈夫じゃなかったんです……だから力仕事とかも手伝えなくて……アレクは昔からあんな感じで元気一杯で……俺……ずっとアイツが羨ましかった……」
そう言って苦しそうな顔をする
「自分に魔力があるって分かった時は本当に嬉しくて……やっと村の役に立てるって……
……でも結局あんまり役に立ってないんですよね……俺……」
何だか悲しそうに……悔しそうにアレスが言った
「アレス? 私はアレスって凄いと思うよ、
精霊様の森でもアレスの魔法は凄かったし、それに常に冷静で戦局を読めるって言うか……凄く頼もしかったよ?!
そしてアレスはとっても物知りでしょう?!
私はまだほんの少ししかアレスと一緒に居ないけど、アレスが色んな事知ってる事を分かったよ?
だから村のみんなはもっともっとアレスの事知ってて、アレスの事頼りにしてると思うんだ……
うん、間違いないよ!!」
アレスがちょっと驚いた様に私を見た
「アレスはきっと、これまでに沢山の努力を重ねて来たんだよね……
だから今のアレスがいるんだと思う……
人ってみんなそれぞれに得意な事があったり苦手な所があったりするものでしょう?
だから協力し合うし、みんなの力が合わさって大きな力が生まれるんじゃないかな?」
アレスが頷く……
「それに!!アレスとアレクのコンビネーションは凄かったよ〜
息がピッタリで2人の戦いっぷりは気持ち良かった」
ちょっと戸惑った様に視線が動くアレス……
「アレスとアレクが居てくれたから……
精霊様の元へも行く事が出来たんだよ
どっちかが欠けてたらきっともっともっと大変だったと思う」
「いえ、サクラ様のお力なら俺たちが居なくても容易かったと思います」そう言ったあと背筋を伸ばして私に向かい
「……でも……そんな風に言って頂けて……俺……うれ……ありがとうございます!!」アレスが頭を下げた
「ふふっ、アレスももっと自分に自信を持って良いと思うよ
もちろん、これからもなりたい自分になれるように頑張らなきゃだけどね! 私も頑張る!!」そう言ってアレスの背中をバシバシと叩いた
「それから……みんな私の事買いかぶりすぎなんだよ……」小さなため息が漏れる……
「最後のあれなんて、ただ我を忘れて暴走しただけだし……
精霊様の護りがなかったら私はどうなってた事か……」
そう呟くと、
「暴走……??」とアレスが意外って感じの声を出した
「うん、私、虫が苦手だって話したよね?
特にあの……蜘蛛……
う〜思い出しただけで鳥肌が立つ〜」
そう言って腕をさする……
「あれがこの世の1・2位を争う位ダメなの……あれが大群で押し寄せ来たからもうパニクっちゃってね……でっ!!あの有り様……」
「そうだったんですか……
サクラ様にも苦手な事はあるんですね
……そう言えば絵も……」
「あ〜!!それは内緒にしてよね!!
みんなには絶対言わないで!!お願い!!」
アレスに手を合わせた
「わ、分かりました、言いません!!言いませんから!!」とアレスがアタフタした
そんな風にアレスの事を少し分かったおやつタイムを終えて、私たちはまた温泉データ作りに精を出した
☆☆☆☆☆☆
夕飯を終えて、私は『温泉』……精霊の森にある『天然の露天風呂』に来ていた
「やっぱり1日の締めはお風呂だよね〜」
そう言いながら温泉に浸かる
「あ〜やっぱ気持ち良い〜」
村のみんなにも声を掛けたら片付けが終わったら来ると言われた
みんなにも温泉好きになって貰いたいな〜
あれこれ忙しくて大変そうだけど、ここにも『脱衣所』作って欲しいな……
あっ……ここって精霊の森の中で精霊様の祠も近いよね……
普通に使っても良いのかな?
後で精霊様に聞いてみよう……
ここの温泉はこれからも村の人達が使って良いのか……
☆☆☆☆☆☆
翌日も温泉データ作りに勤しんだ
アレスが何やら私の手伝いをしていると知った村の人達が入れ代わり立ち代わりやって来て作業がなかなか進まない……って弊害もおきてはいたが……
画像のあるデータとは別にこの村……町の『大浴場』オリジナル部分の検討もした
普通の……ってか私の知っている『大浴場』には『洗い場』があるが、シャワーや蛇口はどうなんだろう?
ここは大きな町ではないから水道がないだけなのかもしれないし……
ちなみに水は『樽』に貯めおきして使ってる様だ
森から流れて来る綺麗な沢がが村の近くにあり、そこから汲んで来ているのだそうだ
洗い場にも温泉が湧いてくる浴槽を置き、そこで身体の汚れ等を落としてから『大浴場』へ向かうって言う流れを定着されると良いんじゃないかと考えた
浴場用のお風呂グッツ……椅子とか手桶とかの必要だよね……
『温泉の入り方』もしっかりと説明出来る様にしないと混乱するかも……なんて思いもある
最初に温泉を見た時のみんなの反応が多分この世界での一般的な反応なのだろうから……
う〜ん、簡単に『温泉の町』なんて言っちゃったけど、なかなか大変そうではある……
ある程度のデータが出揃ったら専門家……って言うか建築に携わる人に見てもらわないとなぁ〜なんて事を考えた
午後になってみんなの訪問も途切れてきて、本来の作業に取りかかる事が出来るようになった
アレスには引き続き絵を描いて貰い、私はシェリーと『大浴場の利用方法』について詳細をまとめた
『受付で代金を払う』『初めての人は利用方法を聞く』『脱いだ衣服を入れる籠なり箱なりを渡す』『カゴは預かって保管する』か、そのまま『好きな所に置いてもらう』か相談余地あり
盗難とかは無さそうだけど、間違って持ってく人も居ないとは限らないしね……
みんな同じ様な服装だからその心配がありそうな気がした
預かるんだとしたら『番号札』的な物が必要だよね
この世界の識字率がどれ位か分からないけど……
小さな子供でも分かる様にイラストにしたら良いかな〜なんて事を考えた
可愛いイラスト描ける人いないかしら?
入浴方法についても細かくレクチャーしなきゃならない気がする……
この温泉……『大衆浴場』に関わる事になる人には特に念入りに教えないといけないかな〜
人に何かを教える……って苦手なのよね……
誰か、そう言うのに秀でてる人に説明してその後は丸投げでお願いしたい……
これからの事を思うとちょっと憂鬱になりかけてる無責任人間……なのだった……
午後の作業も一段落させて休憩のおやつタイムと取る
あんまり変わった物を出すのもなんだから……と、今日はクッキー系にしてみた
飲み物は果汁系の紙パック飲料にした
オレンジジュースとりんごジュースだ
アレスが自分ばかり美味しいものを食べさせて貰って申し訳ない……って恐縮していたので他のみんなにもお裾分けでお菓子とジュースを持って行った
うん、アレスはやっぱりいい子だね……
それに比べてそんな気遣いが全く出来ない私はダメダメだわ〜反省……
クッキーを食べながらアレスに聞いてみる
「アレスっていくつなの? 」
「えっ? 年ですか? 16です」
「えっ?!じゅっ16?!」
16って高校生じゃない!!
年下だろうとは思ってたけどまさか高校生だったとは……
なんてしっかりしてるの〜
凄いわ〜私が16才の時とは大違いだ……
「……そう、16才なの……しっかりしてるね……じゃぁ、アレクは? 」
「同じですよ、16です。俺たち双子なんで」
「ふ、双子?!」驚きパート2!!
「似てないでしょう? 大抵驚かれます」
「そっか、双子なんだ……二卵生なんだね……」
「……二卵生……ってなんですか?」
アレスが不思議そうに聞いてきた
「あ〜、双子でもね、一卵性双生児と二卵性双生児って言うのがあるの、一卵性だと性別も同じだし、顔もそっくりなんだけど、二卵生の場合は性別も様々だし、似てない場合も多いのよ」
「……そうなんですか……初めて聞きました
双子なのに似てないって言われてたから……」
「そっか、似てない双子も沢山いるよ、不思議じゃないから」
「それにしても2人が16才って事がびっくりだよ〜、ホント2人共しっかりしてるよね、大人だよ」
「いえ、そんな事は……
この村のしきたりで17になったら村を出て他の場所で修行するんです、それまではここで外に出てもやって行けるように色々学ぶんです
他の村とかは15になったら1人前だと言われてるらしいので、俺らはまだまだです」
「修行? 他の場所で? 」
「はい、この村は『精霊様の森』を守る為にあります
だから、外部の人間は入って来れないんです
村の人間は、外の様々な町で修行して、この村に貢献するんです
商売人になったり冒険家になったり……
自分のやりたい事を決める為にも村で色んな事を学んで鍛錬してから外へ出るんです」
「へぇ〜そうなんだ、なるほどなるほど……
じゃぁ村の外の町にはこの村の出身の人が沢山いるって事なんだね」
「はい、みんなが帰ってくる時は本当に賑やかで楽しいですよ、外の世界の話を沢山聞けますし」そう言うアレスはとても誇らしげな顔をしていた
私はこの村の秘密が少し分かった気がした……
――つづく――




