23 新しい能力 シェリー編
「じゃぁ次はシェリーが授かった能力について教えて?!」
「はい……ですが、正確にはワタクシの能力ではなくサクラ様の能力なのですが……」
「んっ? どうして? シェリーが自分の意思で出来る事なんだからその能力 はシェリーのものでしょう? 」
「それは……」
「う〜ん、シェリーはもっと自分に自信を持った方が良いと思うよ。
私の能力なのかもしれないけど、それを使いこなしてるのはシェリーなんだから!
シェリーは凄いよ?
私はこれまで沢山シェリーに助けられて来たんだから。
そうでしょう?
これからも私の力になってよね?!」と、ウインクしてみせた……我ながらちょっと恥ずかしい事したかも……
「ありがとうございます
……これからも誠心誠意お傍で仕えさせて頂きます」
……相変わらずだなぁ〜
ふふっ、でも頼もしい相棒なんだよ
☆☆☆☆☆☆
サクラ様……本当にごめんなさい……
ワタクシがあんな物言いをすればサクラ様がどうお答えになるのか想像出来ていたのに……
サクラ様のお気持ちを試す様な真似をしてしまった……
本当に申し訳ない……
ワタクシは……サクラ様のお役に立ちたいだけなのに……
自分に力がないのがもどかしい……
精霊様に新たな能力を授けると言われてワタクシはやっと自分の力で何かが出来る様になると思ってしまった……
精霊様にお聞きしたら……
《お主の能力かじゃと?!う〜む、そうとも言えるがそうではないとも言えるかのぉ〜
厳密に言えばお主の存在そのものがあやつ……サクラの能力じゃからのぉ〜
しかしじゃ、能力を使う事をあやつはお主に一存しておるであろう?
お主が使えるのじゃからお主のものなんじゃないのかのぉ〜
……お主にはお主にしか出来ん事が沢山あるじゃろうて……
難しく考え過ぎん方が良いぞぉ〜
ふぉっふぉっふぉっ〜》
ワタクシにしか出来ない事なんて……
☆☆☆☆☆☆
「シェリー?!シェリー?!」
何か考え事でもしてるのかな?
珍しくシェリーの反応がない……
「……っ!!まずひとつは先程もお伝えした通り『自力移動』が可能になりました」
……粛々と進行するシェリー……
……うん、いつものシェリーだ……
でも私の熱弁へのリアクションは無しなの?!
……まぁ、いっか〜
「そして、アイテムボックスの機能拡張になります」
「機能拡張?!アイテムボックスの?!」
「はい、精霊様より、アイテムボックスに『ゴミ箱』を追加して頂きました
これにより、不用品を処分する事が出来ます」
「ご、ゴミ箱〜〜っ?!
凄っ……なんて素敵な機能なのぉ〜
欲しかったわ~ゴミ箱!!」
「お喜び頂けると思っておりました」
シェリーが嬉しそうに言う
「じゃぁ、じゃぁ、早速アイテムボックスの中のゴミを処分してして!!」
アイテムボックスの容量を圧迫している訳ではないけど、やっぱりゴミがどんどん増えるのもやな感じだったから『ゴミ箱機能』は嬉しいな〜
「あっ……でもゴミ箱に入れたゴミは何処に行くのかな? 」
「それは……分かりません……ただ、誰にも迷惑は掛からないから安心せよと精霊様は仰られました」
「そう……迷惑掛けないのなら問題はないけど……何処に行くんだろうね? 」
「ただ、一度ゴミ箱へ入れた物は再び取り出す事は出来ませんのでお気を付け下さい」
「……了解っ!!」
なんか……ブラックホール的なヤバい感じなの?
まぁ、捨てられるんだから良いか……
「それともうひとつ……こちらは見ていただいた方が早いので、テントを出したいのですが……」
「んっ? テント? じゃあ外に行く? ここじゃ狭いよね?!」
と、みんなで外へ出る
「ん〜、でもここでテント出すの変じゃない?!
村の中でテント張るってのも」
…………
「ちょっとお出掛けしようか? 」と提案する
《お出掛け〜?!何処に行くの?!
ボクも一緒に行く〜行って良い?!》
「もちろんよ! みんなでお出掛けしましょう!」
天ちゃんが嬉しそうにはしゃぐ
「サクラ様!!」
私達の方へアレクがやって来た
「お食事の支度が出来ました」
えっ?!もうそんな時間なの?!
辺りを見渡すと確かに日が暮れかけて来ていた……
「ありがとう、すぐ行くね」
アレクに答えて、シェリーと天ちゃんの方を向く
「残念だけど、続きはまた後からだね……」
う〜残念がってるのは私自身だ……
早くシェリーの能力の続きを聞きたいよ〜
☆☆☆☆☆☆
今日も村の方々と食卓を囲む
大人数での食事風景も見慣れては来たけど……
隣に座っているアレクに小声で聞いてみる
「ねぇ、アレク? ここではいつもこんな風にみんなで食事するの? 」
アレクが驚いた様に……そしてちょっと照れながら?
「いえ、そんな事はありません
ただ今は……みんながサクラ様と食事を一緒にしたいと言うので……」そうはにかみながら言った
「……っ、そうなんだ……それは……嬉しいね……」
私もちょっと照れながらそう言った
「本当ですかっ?!良かったぁ〜」
アレクが眩しい笑顔で笑った
そんな無邪気な笑顔で喜ばれると何だかむず痒いんですけど~
アレクが少し大きな声を出したので、視線が集まる
「あっ、ごめん!!サクラ様がみんなで食事するのを嬉しいって言って下さったんで嬉しくって」
その言葉に食卓を囲むみんなも笑顔になる
……視線が集まってなんかめっちゃ恥ずかしいんですけど〜
何か言わなきゃいけない? なんて思い、
「えっと、皆さんありがとうございます
みんなで食べるお食事は一段と美味しいですよね
……さぁ、食べましょう! いただきます!」
何だか号令を掛けたみたいになっちゃったけどお食事タイムがスタートした
食事をしながら周りのみんなに
「温泉、どうだった?」と昼間の温泉の感想を聞いてみる
やはり、温泉はもちろんお風呂自体に馴染みがないので最初は戸惑ったとの声が大多数だった
でも、実際に入ってみた感想はとても良いものばかりだった
「気持ち良かった」「さっぱりした」
「疲れが取れた」って感想が多かったかな?
そして「体調が良くなった」って声も
小さな切り傷・すり傷はアッという間に治った様だ
どうやら『回復薬』の効果にかなり近いらしい
地球の温泉より効果が速攻だったり回復薬並の治療効果まであるなんてホント異世界ぽいな〜なんて思ってしまった
これからここは『温泉の町』として発展して行けるかな?
そして、更にダンジョンのある町としても……
食事を済ませた後も、今後の町づくりについて皆が熱く語る
どうやら既に人材や資材などが村へ向かっているらしい
連絡手段はどうなっているのか不思議だったが、魔法道具の転移システムで手紙のやり取りが出来るのだそうだ
ここの村は『精霊様の森』の守人という事もあって魔力の高い者が多いらしい
この村を離れて生活している者たちは、『精霊様の森』に何かあった場合にいつでも戻って来れる様に連絡を取り合っているのだそうだ
今回の『精霊様の森』の騒動も連絡が行っており、多数のこの村出身の者たちがこちらへ向かって出発しているとの事だ
ただ、この村は『隠れ里』的な他とは隔離された場所にあるので帰って来るのも時間がかかるのだとか
まずは『精霊様の森』のピンチに駆け付けて来ている者たちがそろそろ到着するようだ
転移魔法で人も転移できないのか尋ねてみた
手紙が送れるならなら人は? と単純に思ったのだが……
転移魔法の魔法陣はとても複雑で繊細なものなのだそうだ
人間を転移出来る程の魔法陣が作れる者はそう居ないらしい
『そう居ない』って事は作れる人も居るって事よね……とぼんやりと考えた
しかしそうか……
『瞬間移動』的な事は出来ないって事なのかな?
『ルー〇』とか……『キメ〇の翼』とかはないの?
ここの温泉にはまた入りたかったし、
ダンジョンにも行って見たかった……
だけどこの村を離れたら戻って来るのはなかなか骨が折れそうな感じがする……
う〜ん、だからと言ってここにこのまま留まる訳にも行かないしな〜
とりあえず、ここにいる間は温泉に入り倒そう!!
と心に決めたのだった
――つづく――
補足です……
シェリーは便宜上【AI】としていますが
『感情』もあり人間と変わりません
身体を持たない知識の豊富な人間の様な存在だと思って頂けると幸いです




