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# 100 鍛錬の森 その1

「お帰り」レイは一言発してからシェリーを見たがシェリーはセバスチャンの方へ行ってしまった

「シェリーの話はまた今度かな? システムとか無機質とか言ってたけどなんだろうね?」独り言の様に呟いてレイを見た

「そうね。参考にしたいと思ったけど根本が違うって事かしら。まぁ結局自分に合った方法で鍛錬するしかないって事。サクラも手当り次第じゃなくて自分に必要なものはなんなのか考えて鍛錬しなさい」

「手当り次第って……出来そうな事にチャレンジしてみたいだけよ」

「……行くわよ」レイは妙な間を残して行ってしまった……う〜


「セバスチャンと天ちゃんはあちらの水場で身を清めて来るそうです」キョロキョロした私を見てシェリーが教えてくれる

「そうなんだ。うん、戦闘の後だし汗とかさっぱりさせたいよね」

テキパキとテーブルの準備を進めるシェリーの邪魔にならない様にとりあえず自分の席に着いた


天ちゃんが先に戻って来たので体をドライヤー魔法で乾かす

「天ちゃん、鍛錬の森はどうだった?」私はワクワクしながら天ちゃんに尋ねた

《うん。セバスチャンがね、凄かったよ。バシュッ! ズバッ! ズサァーって。カッコ良かったの》ハイテンションな天ちゃんは何やらアクションを取りながら話してくれる。ふわもこな天ちゃんの動きと擬音満載の説明では分かり辛いけどセバスチャンがカッコ良かった事は伝わった

「うんうん。セバスチャンの剣さばきはカッコ良いよね。天ちゃんは? 天ちゃんも戦ったの?」

《うん、少しだけ。ボクはね、セバスチャンのフォロー? に徹したの。最初はドキドキしたけどセバスチャンは強いからボク安心して一緒に戦えたよ》

「そっか。天ちゃんも頑張ったんだね。セバスチャンのフォローも出来て凄いね。偉かったね」

どうやら鍛錬の森での戦いはスムーズだった様で安心した。あとは詳細をセバスチャンが話してくれるだろう

「お待たせして申し訳ございません」セバスチャンが小走りにやって来る

「大丈夫だよ。帰って来たばかりだし少しテントで休む?」

「お気遣いありがとうございます。水場で休ませて頂きましたので大丈夫です」


「視察の成果を聞かせて頂けますか?」シェリーがセバスチャンの前にカップ&ソーサーを置きながら尋ねる

「ええ。収穫はありましたよ」セバスチャンはにこやかに微笑んでカップを手に取り「いただきます」と優雅にお茶を口にした。ほのかにハーブの匂いが漂って来た。私は自分のマグカップを両手で包み込みながらセバスチャンを見つめる

「シェリーのハーブティーは癒されますね……」と目を細めながらセバスチャンはティーカップをソーサーに戻す

「うんうん。シェリーって凄いよね。その時の体調や気分をホント分かってくれるって言うか……。いつもありがとうシェリー」私はシェリーにお礼を言ってマグカップのココアを飲んだ。うん、美味しい

「いえ、そんな……」と頬を染めて照れているシェリーはやっぱり可愛な。ふふっ


「鍛錬の森ですが……。中に入ると通常の『迷いの森』でした」

「通常?」……通常のってどういう意味?

「入ると地形が変化して迷う……と言う仕様の迷いの森でございますか?」

「ええ。森に入りしばらくすると魔物と遭遇しました。戦闘後、周りの地形が変化しました。来た道が消え前進する事のみが許される……そんな感じでしょうか」

「えっーと『迷いの森』は『出て来れなくなったり』『元の場所へ戻ってしまって先に進めない』そんな森だっけ? セバスチャン達はどうやって戻って来たの? いつの間にか入った場所に戻されたとか?」

「いえ、私も最初は地形が変化した事に戸惑いました。帰り道が分からなくなると。ですので予定より早目に出口を探す事を念頭に前進しました。戦闘を終える度に現在地が分からなくなる感覚でしたので。ですが……そろそろ出口を探そうと思った瞬間……出口がどの方向なのかが分かりました。出口に向かって道が伸びた感じでした。道なりに進むとすぐに森から出る事が出来ました」

「それは……出たいと願えば出口が現れるって事?」

「はい。その通りだと思われます。森に入り鍛錬に励み、そして終了する。森の中で移動している感覚ですが、実際は同じ場所からほとんど動いていないのだと思います。なので森から出たいと思った後の移動距離も短いものでした」

「なるほどなるほど……鍛錬で疲労してもすぐに出口に辿り着けるのはありがたいね。ノーム様の優しさ?」

「想定した時間より早く森から出る事が出来た為、我々は再度森へ入りました。鍛錬の森は自身のレベルに合った魔物が出現するのですが、一旦外に出て入り直すと最初に入ったレベルに戻るようでした」

「レベルが戻る? また一からやり直しなの?」

「申し訳ございません。言葉足らずでした。レベルが戻るのは出現する魔物のレベルです。我々のレベルは上昇したままでございました」

「そっか、良かった〜。入り直すとリセットされるのかと思っちゃった。でも面白いね? それぞれのレベルに見合った魔物が出るのはどういう仕組みなんだろうって思ってたけど、最初に入った所で個人レベルが測定されてるって事なのかな? ノーム様も仰ってたけど、普通は目一杯鍛錬して森を出るのか普通だからレベルの測定は最初の1回のみって事なんだろうね。ふむふむ」これは面白いかも……

「入り直すと魔物のレベルは初期値に戻る。と言う事ですが、その様に考えると合点が行きますね」

「一旦鍛錬を中止する時以外は森から出ない方が懸命かもしれません。魔物のレベルが下がるのでレベル上げに時間が掛かりますので」

「うん……そうだね……」

「サクラ様?」

「ん? あ〜使い方次第では面白いかな〜なんて思っちゃって」

「面白いって?」レイが珍しく前のめりだ

「うん。例えば前に戦った魔物ともう一度対峙したい時は一度外に出ればまた会えるって事でしょう? 苦手なタイプだったら再戦もありだろうし、もっと詳しくその魔物について知りたいって思ったら少しレベルを上げた状態で戻れば優位に立てて観察? 分析? そう言うの出来そうじゃない?」

「確かに……余裕のある戦闘を望む場合は再度入り直すのも宜しいのかもしれませんね」

「なるほど……流石はお嬢様です。何事にも意味を見出されて素晴らしいです」

「いやいやっ! そんな大仰なものじゃないからっ!」

「いえ、着眼点が素晴らしいとワタクシも思います」シェリーがふんわりと微笑む

「そ、そう? なんか照れるけど……ありがとう。えへ」うん、やっぱり褒められると嬉しいもんだね


「あっ、休憩スペースはどうだった? 見つけられた?」


――つづく――

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