レイン・ドロップの場合
レイン・ドロップは困惑の渦中にいた。
「……あの」
「何だ」
レインの声に返事を返したのは、この国の第三王子、クラウド・ウェンザード殿下。
加えてレインの幼い頃からの婚約者であった。
お互いに仲の良かった祖父同士が決めた、所謂政略結婚の相手で。
伯爵家の娘として生まれた以上、家のために好いていない相手にでも嫁がなければならないのは理解していた。クラウドは三番目とはいえ王子であるから、身分だけ見れば伯爵家にとっては願ってもない程の良縁といえただろう。
しかし、この婚約者は昔からレインのことが嫌いだった。
人一倍努力をしなければ人並み以上にはならない不器用な自分とは違い、お調子者のくせに何でも卒なくこなしてしまうクラウド。
幼い頃から「クラウド様はもう一つ先を学んでおられますよ」とか「殿下の隣に立つのに相応しくありなさい」と言われて、嫌いな勉強も苦手なマナーも必死に努力をして、なんとか及第点をもらえるような日々であった。辛くて弱音を吐き出したくなる時も沢山あったけれど、それをクラウドに知られるのが恥ずかしくて、虚勢を張っては自分を取り繕うのに必死だった。
クラウドはきっとそんな自分の態度が気に入らなかったのだろう。幼い頃からレインの言うことに反発ばかりで、髪をひっぱられたり、物を隠されたり意地悪ばかりされてきた。蜘蛛のおもちゃを投げつけられたこともあった。あの時はつい頭にきて泣いて謝るまで責めたててしまったが、そういうことも疎まれている一因かもしれない。
だから今この年になっても、素直になれない自分がこの先もクラウドに好かれることはないのだろうと、ずっと、ずっとそう思っていた。
それなのに。
「お、降ろして下さい」
「何でだ、婚約者を膝に乗せて何が悪い」
なのにこの状況は一体どうしたことだと言うのか。
現在レインが居るのは王城にあるクラウドの執務室だ。厳密に言えば、更に理解したくもないが、執務室にいるクラウドの膝の上である。
彼曰く「仕事に疲れた俺を癒すのも婚約者であるお前の務めだろうが」とのことで、全く、本当に、これっぽっちも理解したくなかったが、レインの抵抗も虚しく入室と同時に抱き上げられこうしてずっと膝の上に抱えられている次第である。
「クラウド様あの…」
「少し静かにしていろ、気が散る」
だったら下ろせと言いかけて、書類を真面目に見つめるその端正な横顔にレインは言葉を飲み込んで赤くなった顔を俯けた。
あの時もそうだった。
「よし…終わったぞレイン……レイン、聞いているのか?」
「あっ、えっと、はい。お疲れさまでした」
「あぁ…それより、ちゃんと作ってきたか」
「は、はぁ…鞄に…」
レインがこの部屋に来てからクラウドによって応接セットの椅子へと放られたままの鞄を指差す。頷いたクラウドはレインを一旦下ろし、立ち上がるとその手を引いて応接セットの方へと移動した。
やっと降りられると思っていたレインは期待を裏切られ、再び膝に座るよう強要されてむしろさっきよりも近くなった気がする距離に内心めまいを覚える。
「どうした?」
「………何でもない」
赤くなった顔を見られたくなくて、レインは覗き込んでくるクラウドの顔にばしっと鞄から出した小袋を押し付けた。
「ほら、クラウド様ご所望のものですよ。どうぞお納めください」
「うん」
どこか嬉しそうにその包みを眺めるクラウドに毒気が抜かれる。昨日学園からの帰り際に「手作りの菓子がほしい」とねだられ、昨夜急いで焼いたものだった。何でも、ご友人が婚約者から手作りの菓子を貰ったと話しているのを聞き、自分もほしくなったとか。
「これだけか?」
「これだけですけど」
「もっとあっただろう、お前の侍女が言っていた」
「それはっ…」
不器用なレインは菓子を作るのも本当は得意ではない。練習しても大して上達しなかったそれを誤魔化すために、大量に作り上手くできたものだけをクラウドにあげていたというのに。何故クラウドにバラしたのかと、ここには居ない自分の侍女を思わず恨んだ。
「あれは、じ、自分用です」
「焦げたものが自分用なのか」
「……もういい加減降ろして」
「お前にねだられるのは悪い気はしないが断る。次は全部持ってこい。お前が俺のために作ったものは俺が全部食べる」
「は……」
ぽんぽん投げつけられる甘い言葉にレインが絶句するのも構わず、クラウドは涼しい顔をしている。
真面目に阿保みたいな睦言を言う姿は、つい数日前では考えられなかったものだ。
そう、このクラウドの態度を急変させたのは、引き金を引いてしまったのは。
あの茶会の時に自分が迂闊にも溢した、何気ない一言だったのだろう。
“私、クラウド様のこと好きかもしれません”
週一回の半ば義務のようになっていた二人だけのお茶会で、目の前にいるというのレインの方を見ることもせず、庭を眺めている横顔に、あぁ黙ってると格好いいのになぁなんて思ってしまったから。
ぼんやりと考えていたら、うっかり口から漏れてしまったそれ。あの時のクラウドの豆鉄砲を食らったような顔は仕方ないだろう。嫌いな相手から好意を向けられても困惑するばかりだ。
その時の自分はと言えば、なんてことを口走ってしまったのかと焦りながらも、どこか冷静に自分の気持ちを考察していた。
レインはクラウドのことが嫌いな訳ではない。
言動が子供っぽくて、誉められるとすぐに調子にのって空回る残念なところはあるが、学業や武芸、執務に関しては問題なくこなせているし、態度は大きいが基本的にレイン以外には優しいので人望はある。優秀な兄二人を抱える第三王子という立場ではそれだけでも十分な素質だ。それに出来ないことに対して文句は多いが投げ出さないところは好感が持てるし、何より顔が良い。
それでも自分がクラウドと今更恋愛ができるとは思えなかったし、返事が欲しくて言ったわけでもなかったから、しどろもどろしながら上手く表現できない自分の気持ちを確かめるように言えば、眉間に深い皺を寄せた相手の表情が目に入る。
あぁ、困らせてしまった。
嫌いなレイン相手だったとしても、気を使ったのか言葉を選んで返された返事に、自分も他人事のように「そうですか」と返した。否定されたというのに案外傷付かない自分に拍子抜けする。
やっぱり、レインのこの感情は気のせいだったのだろう。
結局、レインの態度に気を悪くしたらしいクラウドは「仕事があるから」と席を立った。普段と同じ「お疲れさまでした」の声をかけるも、結局一度も相手が振り返ることはなかった。
思えばこの時からだ。
クラウドの様子がおかしくなったのは。
学園では必要以上に距離を詰めてきたり、レインが吐いた悪態にすら笑ってみたり、忠告や小言を素直に聞くようになったり。
進まない勉強の最中に「王子ともあろう者が友好国の名前を間違えたら格好つきませんよ」とレインが窘めたのにも、どこか嬉しそうに笑うばかりで。
クラウドの従者に「悪いものでも食べたの?」とか「具合が悪いの?」とか何度もしつこく問いただしてしまったくらいには、クラウドの様子はおかしかった。
最初はあんなことを言った自分をからかっているか、それとも気を使ってくれているのかのどっちかだと思っていた。
けれど、クラウドと喧嘩をすることが少なくなって、冷えきっていた関係が少しずつ改善されて、レインもいつからかこのままの関係がずっと続けばいいと思うようになった。
それなのに。
“信じられるか!!”
夜会の最中に、たまたま会った友人と話していただけだったのに、クラウドは何か誤解をしたままレインをバルコニーへと無理矢理引きずっていった。
話の最中に強引に割り込んできた挙げ句、友人にまで暴言を吐き、挙げ句無理矢理引っ張られ。かっとなってよく覚えていないが、売り言葉に買い言葉でどんどん口論が酷くなっていってしまった。
少し離れた場所でスノウ達がおろおろしてるのが分かったけど止められなかった。
どうして。
貴方は私のことが嫌いなのでしょう?
自分で考えたことなのに、レインは自分が傷付いていることに気付いて唇を噛む。ぐるぐると暗い感情が渦巻いて、怒りを収めることができなくなっていた。
言っては駄目だと頭で分かっているのに、口から溢れる言葉を止められない。クラウドを睨み付ける。
自分が、好きかもしれないなんて言ったから。だからクラウドは態度を変えてしまったと言うのなら。なんて酷い人なんだろうと思う。
レインの言葉に一つも反論することが出来ないのはそれが本当のことだからだろう。
肩にかけられたままだったクラウドの手を振り払って突き飛ばして離れる。そのまま呆然とするクラウドを置いてレインは踵を返した。
侍女のスノウが「いいんですかあれ」と聞いてきたが、腹立ちが収まらなかった自分はそのままクラウドを無視して立ち去った。
それから一週間。
レインは徹底的にクラウドを無視して過ごしていた。
クラウドは自分のそんな態度に最初のうちこそ苛立っている様子だったが、一日、二日と過ぎていくにつれ叱られた犬みたいにしょぼくれた顔をするようなった。
何故貴方がそんな顔するの。
私は悪くない。元々私を嫌っていたのは貴方でしょう。そういう対象には見られないとか言ったくせに何なんですか。
「また喧嘩したんですか?」
「べつに…」
「別にって顔をしてませんよ」
「放っておいて。それに悪いのは私じゃないもの」
「わぁご機嫌斜めですね。殿下の従者さんも、殿下の機嫌がすこぶる悪いって言ってましたよ」
「っ」
クラウドの名前に肩を跳ねさせたレインに「そんなに気にしてるなら早く仲直りすればいいのに」とスノウが嘆息する。
「気にしてないし」
「呼び掛けを無視して通り過ぎた後に後悔して何度も振り返ってるくせに何言ってるんですか」
「っ!?」
「数日前から使用人達から苦情が出てますよ。焦げたクッキーはこれ以上食べられないって」
「な、あれは…!!」
「上手く焼けるのを待ってたらいつまで経っても謝りに行けませんよ」
「っ………」
すっかり論破されレインは返す言葉もなく黙り込む。
「……大丈夫ですよ、きっとクラウド様もレイン様と仲直りしたいと思ってますよ」
「……そんな訳ないわ…だってクラウド様は私のこと嫌いだもん…」
「どう見てもそんなことないのになぁ…」と、呆れたようにスノウが言うのにレインは俯いて、自分の手元を見る。
そこにあるのは、今朝ようやくまともに焼けたクッキーの袋。
思い出すのはクラウドの顔。
「……………スノウ」
「馬車の用意ならできてますよ、レイン様」
「うん……ありがとう…」
スノウに背中を押され、揺れる馬車の中もそわそわと落ち着かない。
なんて言おう。なんて言われるだろう。自分から謝るのは嫌だけど、喧嘩したままはもっと嫌。
そんなレインの葛藤は、クラウドの執務室に入った瞬間、杞憂に終わる。
「………クラウド様?」
「…………」
文机に片頬をつけて眠り込んでいるクラウドに小さく呼び掛ける。目を覚ます様子もないその姿に、残念だと思うよりも安堵が勝って肩から力が抜ける。
「…………」
横顔しか見えない寝顔にレインはそっと手を伸ばす。硬そうに見える灰色の髪は意外と柔らかい。
机の上には沢山の書類。学園から帰った後もこうして執務に追われているのを知っている。レインに対してはあんなふうだけど、誰にでも分け隔てなく真摯に向き合える誠実さも持っているのを知っている。そして、毎日疲れているだろうに、嫌いなレインとの週一回のお茶会の時間も必ず作ってくれる優しいところも。
「………私、やっぱりクラウド様が好きかもしれません……」
今更気付いてしまった、気付きたくもなかった想いに、涙が零れる。これ以上この場にいるのが辛くて、クラウドの傍へクッキーを置いてレインはその場を後にした。
この想いは実らない。告げることももう叶わない。
きっと一生この不毛な想いを抱えてクラウドの隣で義務的に自分は生きていくのだろうと思っていたのに。
そんな感傷は突然呼ばれた自分の名前に掻き消される。
自宅の門の先で馬車から降りたレインの後ろから名前を呼んだクラウドは、乗ってきた馬から勢いよく転げ落ちるように降り、レインに駆け寄ってくる。
数メートル手前で固まったように動きを止めたクラウドは、何かを逡巡するように口を開いては閉じるというの繰り返していた。
まさか具合でも悪いのかと駆け寄って具合を確かめようとしたレインの手はその頬に触れた瞬間振り払われる。
「触るな」と叫ばれて、急速に心が冷えていくのが分かった。
そうだ。この人は私のこと嫌いなんだった。
もしかしたらクラウドも会いにきてくれたのかと一瞬でも思った自分が馬鹿みたいだ。そんなことある筈ないのに。
払われた手を自分の胸元できつく握り締め、泣くまいと歯を食い縛る。
そんなレインの様子に焦燥を浮かべたクラウドは「違う」と叫んだ。
「違うって言ってるだろう!!」
「私が嫌いだから触られるのも嫌なんでしょう」と感情に任せて叫んだら、怒ったクラウドに本気で怒鳴られた。
肩を竦ませた自分に、クラウドは泣きそうな顔で「好きだ」と言った。
「っ!?」
「好きなんだ!!俺は……お前がっ…!!」
「え、あ…!?」
「お前が俺を好きだって言ったよりもずっと前からっ…俺は…っ!!」
言われた言葉の意味が分からなくて一瞬呆ける。都合のいい幻聴だろうか。それとも白昼夢でも見ているのだろうか。幻だとしても肩に食い込んだ指が痛い。心臓がうるさい。顔が熱い。
「お前が俺を好きだと言ったから…!!なのに本気にするなとか…!!」
「く…クラウド様?」
「勝手すぎるだろう!!お前は俺のことを本当に好いているのか!?」
クラウドがぜぇぜぇと肩を弾ませながら言いきる。肩を掴まれ頭を揺さぶられるままだったレインは、クラウドの目にもうこれ以上ないくらい赤い顔をした自分の姿が写っているのに気付いて言葉を失った。
「お前は俺のことをっ………あっ」
「……………」
漸く自分の言ったことの意味を理解したのか、間抜けに口を開いたクラウドにレインは問う。
「え…と…クラウド様、は…私のことが好きなのですか…?」
「う、あ…」
さっき言われたことが間違いでなければそうなる筈だが、信じられなくてクラウドを見つめ返す。
「だから、ここのところずっと態度がおかしかった、とか…?」
「ち、ちが…」
ずっとおかしかったのそのせい?さっきのあれが照れ隠しだと言うのなら、今までされた意地悪も全部?
「違うのですか?」
「いや……違くは、ない、けど…!!」
違わないの?本当の本当に?
クラウド様が、本当に?
だらだらと汗を掻き乾いた声を震わせて動揺しまくっているクラウドを見ていたら、段々冷静さが戻ってきたレインは、ついいつもの悪癖が出て「そうですか…クラウド様は私のことを好いているのですね?」とからかうように言ってしまった。
どうして素直になれないんだろうと後悔を覚えるけれど、だって信じられないのだから許して欲しい。
レインは試すようにクラウドの反応を見る。
いつものクラウドなら、レインのことを嫌っていたクラウドだったらきっと激昂して喧嘩になって終わりだ。
けれどレインの予想を裏切り、クラウドの顔はいつまで経っても赤いままで。
「お前のせいだろう!?お前がっ…あんな事言わなければ俺だってこんな…!!」
駄々をこねる子供のような様子に、思わず噴き出したレインは、焦れたクラウド腕を引かれて腕の中に閉じ込められる。
「とにかく、お前のせいだ!!責任を取れ!!」
余りに必死な様子に可笑しくて殺しきれなかった笑い声が唇から漏れる。
髪を引っ張ったのは構って欲しかったから。
物を隠されたのは帰って欲しくなかったから。
素直に聞き入れたのは心配されて嬉しかったから。
話に割り込んできたのは単に嫉妬したから。
全部自覚してなかっただけだったなんて。
本当に馬鹿みたいだ。クラウドも、自分も。
「笑うな」と憤慨するその声すら愛おしくて、レインもクラウドの背中にそっと腕が回してみる。
「れ、レイン…?」
「……本気にしていいですよ」
「っ!?」
「多分、私も勘違いじゃないんだと…思います」
自分で言った言葉なのに恥ずかしくて、ぶわっと顔に熱がのぼる。抱き締められる腕の力が強くなって苦しかったけれどどうにも離してほしいとは思わなかった。
「……その“かも”とか“多分”とか止めろ」
悔しそうに言い淀むクラウドのまっかになった耳を横目に見つけたレインは笑った。
「…私もクラウド様が好きです」
言葉にしたことで、曖昧だった感情がはっきりと熱を持った気がした。
無自覚ではあったけれど、ずっと想っていた漸くクラウドと気持ちが通じあったこと。
どこかふわふわとした幸福感に包まれていたレインは、この時はまだ、自分がとんでもないスイッチを踏み抜いてしまっていたことに気付いていなかった。
「食べさせてほしい」
「ご自分で食べられるでしょう」
「断る」
「断らないでください…」
さっきから頑なに菓子を食べさせることを要求してくるクラウドと押し問答を繰り返していたレインは赤い顔のまま顔を背ける。
睨み付けたいけれどそれができないのは、クラウドの顔に自分が弱いからだ。
「俺はお前のことが大好きだからな。お前も俺のことがだーい好きなんだろう?何も問題はないじゃないか」
「クラウド様本当はまだ怒ってますね!?」
あの時、何時ものように虚勢を張ってしまい調子にのって「クラウド様は私のことが大好きなんですね」とか言ってしまって、本当に後悔している。
もう以前のような虚勢を張る余裕はない。
レインのことを嫌っていた筈のクラウドは、あの出来事の後、今までの態度が嘘のようにレインを溺愛し始めた。
今のように膝の上に抱き上げられたり、膝枕を要求されたりは日常茶飯事になり、「顔を見ないと仕事がはかどらない」とか訳の分からない屁理屈をこねられたり、「かわいい、すきだ、あいしてる、ここにいろ、どうになりそうだ」など、字面だけで砂糖を吐きそうなひたすら甘い言葉を囁かれる訳の分からない時間が多くなったり、とにかく訳が分からない。
そしてクラウドの攻撃はそれだけではない。このたがの外れた自覚済みクラウドがあちこちで惚気を撒き散らすものだから、このところレインは学園でも王城でも果ては自邸でも、何処に行っても生暖かい目で見られている。本当に調子が狂う。
「そんなに嫌か…?」としょんぼりと言われたら拒否することどできやしない。なまじ顔が良いのだから本当に質が悪い。調子にのるから絶対言わないけど。絶対。
仕方なく溜息を吐いて、赤い顔を見られないようそっぽを向いたままクッキーを一つクラウドの口に運んでやる。「硬いな」と文句を言うくせにクラウドは満足そうだ。
「俺はこんな幸福を十年も無駄にしていたんだな。なんて勿体無いことをしていたんだ…十年だぞ。十年もお前を愛でる時間を無駄にしていたんだ。昔の自分を殴ってやりたい。あぁ早く結婚したいな。もう二度とお前が自分の気持ちを疑う余地もなく甘やかして早く俺だけのものにし」
「やめてください!!!!」
お願いですクラウド様、やめてください。
恥ずかしくて死んでしまいます。
レイン・ドロップ
伯爵家の長女。他人に対して見栄をはってしまいがち。本当はクラウドに対してコンプレックスを持っているが、それを悟られたくなくてクラウドの前では虚勢を張って影で努力している。青髪青瞳で社交界では至高の青とか呼ばれているが、色味の偏った自分の姿があまり好きではない。クラウドの顔は好き。後に中身もなんだかんだで好きだったんだなと気付く。うっかり溺愛されるようなってからは恥ずかしくて死にそうな毎日を送る羽目になる。