何てこと…私がお持ち帰りをするなんて
なっなんであんたがここに居るのよ?
この年になって、まさかまさか初お持ち帰りやっちまったのか?いったい私は何をやったんだ
李々子は目を白黒させてパニックになりながら
「何で、何で君がここにいるのよ」
と聞くと巧馬は悲しそうな顔をして
「やっぱり俺のこと覚えてないんだね」
と言った。
李々子はますます混乱して行き
まさか何があった?私ってば何をしたのよ?
完全に何かやらかしてるよねそうだよね。
「初対面の人と朝を迎えるだなんて私は初めてなんだよー」
とへたり込んだ李々子を見て巧馬はクスッと笑い
へー初めてなんだ
なんだか楽しくなって
「あー本当に大変だったな~リーコさんたら俺の…をなかなか放してくれなくて本当に大変だったんだから」
と言って李々子を覗き込んだ。
ちょっとその言い方って何よ
俺のって何よ何なのよ
そんな中途半端なところで大事な話を止めるんじゃないわよ
「あのさあ俺のっていったい何かなぁ教えてくれる?」
と聞くと
「俺のは俺のってことだけど」
と言われ
嘘でしょまさかとんでもない所なのかしら、いやいやあり得ないし…
きっ気になって吐きそうだよ
みるみる青ざめる李々子。
「わっ私ったら何てことを」
捕まるのよ警察に捕まるのよね私…
うなだれる李々子に
ちょっと待てリーコさんあなたねどんな想像してるんですか
と巧馬は焦り
「リーコさんリーコさん聞いて」
と言ったが自分の世界に入ってしまった李々子は聞きもしない。
「お願い反省するから警察だけは許して、こんなこと知ったら親がなくから」
と言い出した。
だから待てって本当にどんな誤解をしてるんだ
「だからリーコさん聞いて」
と言うと今度は意味不明な言葉を李々子は呟き出した。
その想像の方が怖いんだけど
巧馬はそんな李々子を見て
ヤバイいじめすぎた。これ以上やるとどうなるか分かったもんじゃない
と思い李々子の前にしゃがんで
「ごめんなさい嘘ですから何もありませんでした本当です。
リーコさんが俺の服をつかんだまま爆睡したから帰れなかっただけだから」
と必死に言う巧馬を李々子は見上げ
「本当?」
「本当…ゆっくり思い出してよ」
と言うので昨日のことを思い出そうとしたが何も思い出せない。
困った顔の李々子が
「本当に服をつかんだだけなのよね」
と巧馬に聞くと
腕をつかまれて動けなくなって結果的には添い寝するこ事になったけど…
「うんそれだけだよ」
で良いよなうん
と自分に言い聞かす巧馬の前で
良かった良かったその程度ですんで
いや良くない
この歳にもなって、たいして飲めないお酒を飲んで意識までとんで覚えてないなんて…最悪じゃないの
あまりの李々子の狼狽えように
覚えてないからってそんなに狼狽えなくても…
もし本当に何かあったら大変な事になってたな
もしリーコさんが他でお酒飲んで酔っぱらって…
ヤバイ酔っ払ったリーコさんは部屋から出すなだな
想像の上をいく李々子の壊れっぷりに引くどころか自分以外にはその姿を見せないでほしい
と巧馬は思った。
初っ端から自覚もなしに焼きもちを妬いている巧馬に李々子が
「まあそのなんでしょうね、とりあえずご迷惑をおかけしたようでどうも…」
と言うので巧馬はつい
「ん?なに聞こえないんだけど」
と意地悪をした。そんな巧馬に李々子は
はぁ何を聞こえないふりしやがるんだコイツ
と思いながらも
「だからお世話になりました」
と言うと巧馬は優しく微笑み
「はいっお世話しました。じゃあご飯食べてそろそろ用意しないと遅刻するんだけど」
と言い時計を見るように言った。
「えっもうそんな時間?ヤバイよヤバイよ」
時間を確認して焦ってよけいにウロウロする李々子に
「リーコさんいったん落ち着いて、遅刻しそうなのは俺だから」
と言うと李々子はピタリと止まり
「遅刻って私じゃないの」
「うん俺」
と言いにっこり微笑む巧馬に
コイツ本当はスッゴい悪党だよね
と思いながら
「そうならそうと言いなさいよ何でワザワザ分かりにくく言うのよ」
と言うと巧馬はキョトンとして
「だってアタフタするリーコさんがすごく可愛くって」
………暫しの沈黙
しまった思わず言ってしまった
と巧馬が李々子を見ると
ふっ今さら私のご機嫌を取ろうだなんて百万年遅いって言うのよ
と鬼の首をとったかのようにニヤつき
「そんな手に私はのりません」
と言うので巧馬は誤魔化そうと笑顔で李々子を見て
「そんな手があったんだ」
と言うと目を李々子はパチパチして唖然と巧馬を見た。
そんな李々子を見て巧馬は
この人って本当に天然なんだな、可愛い
とまた微笑んだ。そして
「じゃ俺そろそろ帰るからね、それと近々店に行くんでバイトの件よろしく」
と言い鞄を取ろうとして
「あとメール来てたよ音なってたから」
と言い鞄を持って玄関へ、そんな巧馬に李々子が
「ちょっとバイトって何なのよ」
と聞くと
「だから俺のバイトの話の事だよ思い出してね、それよりメール見なくて良いの?もう行くからね」
と言い出ていった。
なっ何なのよあいつ…
どっどうした私、胸が鼓動が苦しい…私はこのまま死ぬの?嫌だヤバイじゃない
とパニックになっていた。
巧馬はエレベーターの中で
俺は何をやってんだ勢いで泊まるってどうよ。
しかもあそこで可愛いって言うか!でも本当に可愛かったんだよ。
それにしたってリーコさんたら俺の横で服をつかんだままガッツリ寝て放してくれないし…寝顔可愛いし
こんなこと俺だって初めてなんだぞ
「はぁ夢の中にいたみたいだ」
と言って鞄の中から一枚の紙を出し
「バイトのチラシ持っててよかったったくしっかりしろよな俺」
エレベーターを降り外に出た巧馬は空を見上げてため息をつき駅に向かって歩いていった。
李々子は急いでシャワーを浴びご飯を食べて用意をしていると徐々に記憶がよみがえって来た。
確かに、こうなったら飲んでしまえ~って腕をつかんだままコンビニに入って梅酒と酎ハイ何本かかごに入れて…
家に連れ込んで服の裾を握りしめて…あれって添い寝じゃない
きゃーなんもないわけないじゃん初添い寝したんだよしかも年下だよねヤッパリ警察行きかも
とうるうるしたあと
あれ?コンビニの支払いは?支払いどうしたっけ…ウゲッ私ったら払わせちゃったよ
「よそう今は考えるのをやめようなんか情けなくなるから。そういやあバイト?とあとなんだっけ」
そう言って家を出ようとしたときメールを思いだし
「そうだ確かメールが来てるとかって言ってたよね」
と携帯の画面でチェックをすると
「これだ店長からか…今日休み…」
これはなんてタイミングがいいの、きっと私をみかねて神様がくれた休日なのね、ありがと~神様
ありがと~店長
李々子は天をあおいで手を合わせた。