そいつの名は-2
昔、こんな話を聞いた事がある。
その話をしていたのは、キリスト系の宗教でありながら異端とされた宗教の牧師さんだった。
曰く、「人間が為すことの95%は神様が作り上げてくださります。残りの5%を為せるか否かが我々に問われているのです。つまり、どんなに辛い環境や状況でもそれは神様が与えてくださった機会なんです。だから、最後まで神様を信じて貫いてください。」とのことだった。
その牧師さんは、二年後に詐欺として訴えられ多額の損害賠償を請求されていた。
牧師さんは何を想い、何を為そうとしていたのだろうか。俺には分からない。人にそこまでの価値があるのか、いや、そもそも神は存在しているのか。
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「神は存在する。故に、我々人類の歴史は宗教によって支えられてきた。しかし、その神は我々の想像するよりずっと人間的な神だろう。」
吐く。
「それとも、我々が作り上げた神の像は存在するが、それを否定するのもまた我々なのかもしれない。」
言葉を吐く。
「どちらにせよ、我々人類に大きく加担している神が存在しているのか。これは人類に課せられた課題だ。それを証明しなければ、人類は永遠に進歩しない。」
その言葉を吐く。
「神は、存在するのだ。私は、神を見た。あの残虐で暴虐でありながらも慈愛に満ちた、そんな矛盾だらけで人間よりも人間らしい神を見た。」
伝えたいその言葉を吐く。
「人類が神から生まれたというのも納得だ。なぜなら神も完璧ではないからだ。その力は確かに完全に唯一のものかもしれない。だが、完璧ではないのだ。」
人類に伝えたいその言葉を吐く。
「きっと私は、俺は、神に恋をしたんだろう。」
子供の頃の夢に見た神を、人類に伝えたいその言葉を吐く。
「故に、俺は彼を、彼女を振り向かせる。この殺しにはそんな意味が含まれているんだ。」
絶望の色が見える。悪魔の嗤う声が聴こえる。神の哀しむ声が聴こえる。
「だから辞めない。俺は殺しを辞めない。彼女が俺に振り向いてくれる、救ってくれるその瞬間まで、絶望の闇へと堕ちていく。」
堕天使の大きく嗤う声が聴こえる。
さあ、問おう。
「お前はそれでも、俺を救ってくれるのか。」
「狂ってる!お前は狂ってる!!この悪魔!あ、ああ、悪魔の子だ!お前は悪魔の子なんだ!!」
酷い言われようだ。少しだけ昔話をしてあげただけなのに。
「今の昔話に出てくる青年の名はね、田中四三っていうんだ。じゃあ、その青年は今は何をしているのか。」
当てたら逃してあげるよ、と付け加えておく。
「本当に逃してくれるのか!?本当なのか!」
「うるさい。」
目の前で俺を狂っていると言った上にうるさいので、思わず左肩を撃ち抜いてしまう。
「グアアアアアアアア!!やっぱり嘘じゃねぇか!死ね!!」
本当にうるさいので、一発だけ威嚇射撃をする。
さて、これで黙って答えてくれるかな。