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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
9/32

そいつの名は

 最近ハマっているものがある。それは、狙撃だ。ビルなどに立て籠もり、屋上からゾンビを狙い撃つ。これがなかなか楽しい。


 スナイパーは人を狙撃する時、基本的に頭を狙う。この理由は様々あるが、頭狙いのヘッドショットならほぼ間違いなく即死であるからだ。つまり、自身が撃った銃弾が狙った相手を確実に仕留めたという確かな情報をその場で得られるのだ。


 しかし、距離が離れていれば当然銃弾が逸れる。それが風の影響であれば風の影響を考えた上での考慮不足。それが重力によるものであれば、ヘッドショットではなくとも胸などの重要な器官が多い部位に当たるのだ。


 これらの事から、スナイパーは狙撃する時には頭を狙う。


 だが、これが意外と難しく、最初の頃は一日で十体程度しか殺せなかった。自分の腕が鈍っているのが感じられた。


 その日からずっと狙撃をしているのだが、今日は二十体以上を殺している。大きな成長だ。


 この一週間でおそらく百体以上は殺したんじゃないかと思われる。だが、一つの場所に留まり続けるというのは安全なように見えて実はかなり危険だ。


 理由は多々あるが、一番の理由は補給が全くできないといった点であろう。そこが備蓄のある場所ならまだ良いのだが、生憎とこのビルに備蓄は残っていなかった。


 しかし、俺の食料や水はかなり無くなっている。このままでは三日と持たないかもしれないほどに。


 よって、移動すべきなのだが、ゾンビの数が増えている。これが留まり続けるべきではない理由の二番目である。つまり、俺はゾンビに包囲された状態で食料が尽きかけてるという絶望的な状態なのだ。


「さて、どうすっかね。」


 候補としては、特攻を仕掛ける。グレネードを次々と投げてビル周りのゾンビを一掃する。自慢の剣術でばったばったと薙ぎ倒す。何も策はない、現実は無情である。これらであろう。だが、策と呼べるようなものは一切ない。


 これでは、日本人の事を馬鹿にできないではないか。自分も立派な無能というわけだ。


 ビルの中に駐車してあるバイクも取りに行かなければいけないこの状況で、ゾンビに包囲されているとは泣けてくる。


 きっと、今まで悪い事をしてきたから神様が意地悪をしてきたのだろう。神殺す。お前だけは俺が殺してやる。


 なんてことを考えながら、ボーっと景色を眺めていると、ゾンビの集団が移動していくのが見えた。


「どういうことだ、俺はここにまだいるぞ。俺以外の人間が現れたか。いや、それともゾンビが策を練ってきたか。」


 そこまで考えて、自分の考えに驚く。ゾンビが策を練る。これ以上ない矛盾である。そもそも、ゾンビとは死んだ人間の成れの果てである。よって、脳などの腐りやすい部分はすぐさま腐り、腐敗臭を漂わせながら歩いているのがゾンビだ。


 しかし、そのゾンビの脳が奇跡的に破壊されていなければどうであろうか。今俺が考えたのはこういったif.の話である。そんなことを考えるのは愚の骨頂であるか否か。


 今回だけは否であると断言したい。今以上に最悪な状況を想定し、その状況を潜り抜ける術を考えながら行動すれば、最悪は免れるということだ。


「まあ、ゾンビが動いていった今しかチャンスはないってことだ。」


 俺はすぐさま屋上の扉を開け、飛び出した。

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