表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/70

63 山羊捕獲大作戦! 中編

 まずある程度山羊のいる場所を調べないと話にならない。

 山は広いのだ。

「まずは偵察だな」

 英二さんが立ち上がる。

「山羊の動き、時間帯、数。ある程度把握しないと進められない」

「同意。あと“逃げ道”も確認したい」

 ツバサくんが続く。

「追い込みやるなら、どこに散るかも読まないと」

「じゃあ偵察は三人」

 私は指を折る。

「シゲトさん、ツバサくん、それと――」

「俺が行く」

 遠藤先生が手を上げた。

「山羊の動きは多少分かる。役に立つはずだ」

「じゃあそれで偵察組は決まりね。残りは捕獲準備。大工組はテキサスゲートを作る準備と囲いの資材を先に揃える。余裕があれば山羊小屋の準備も」

「山羊小屋に関しては、私たちがお手伝いできます」

 と手を挙げてくれたのは百合ちゃん含む女子高生組。

「仔細は了解だ」

 親方たちが立ち上がる。

「木材は裏の倉庫にある。鉄パイプもまだ残ってたはずだ」

「ロープと網は漁のやつ流用できるな」

「よし、それ使おう」


 どんどん動きが具体化していく。

 その流れの中で、次にやらなければならないことを考える。


「山羊小屋を置くなら、鶏小屋の近くでいいのかな?」

「きちんと囲いをすれば問題ないです。ただ、湿気は大敵だし、日よけの屋根もあったほうがいいです。それから柵は高めに」

 ただ捕まえれば終わりじゃない。

「……鶏小屋の横、空いてるスペースあったわよね」

「あそこなら風通しもいい」

「仮設でいいなら、あそこに囲い作れる」

「柵は高めがいいな。山羊、跳ぶぞ」

「あと屋根は?」

「簡易でいい。雨避けくらいはいる」

「湿気が大敵なら高床式がいいのか?」

「はい。それが理想的です」

「餌は……草か。あとは野菜くず」

「この島なら困らねえな」

 会話が、少しずつ“その後”へ進む。


 そして。


「ねえ、山羊さんきたら、みんなで、名前つけてもいい?」


 ――ユウキが手を挙げて発言してきた。

 全員がそっちを見る。


「……名前?」

「だってさ、ここでみんなで飼うんでしょ?」


 その言葉に。

 少しだけ、空気がやわらぐ。


「……そうね」

 私は小さく笑った。

「捕まえられたらね」

「やった!」

「まだ捕まえてねえからな!?」

 ツバサくんがすかさずツッコむ。

 笑いが広がる。

 けれど――その笑いの奥に、ちゃんとある。


 “捕まえて終わりじゃない”

 “育てて、増やして、繋げる”


 その意識が。


「……いい流れね」


 隣で、迦楼羅が呟く。


「ええ」

「ええ。ちゃんとみんな“次”を見てる」


 その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。


(卵)

(次は山羊乳)

(その次は――)


 どこまで行けるかなんて分からない。


 でも。

 

 確実に一歩ずつ。


「……よし」


 小さく息を吐く。


「今日は準備と偵察。実行は明日以降」

「了解!」

「怪我だけはすんなよ」

「無茶はしない」


 短い言葉が、重なっていく。

 そのとき。

 外から、風が吹き込んだ。

 少しだけ、土の匂いがした。

 山の匂いだ。

 その先に――まだ誰の手にも入っていない“資源”がある。

 そして同時に。

 危険もある。


「……負けないわよ」


 誰にともなく、呟く。

 それは。

 ゾンビにでも。

 他の生存者にでもない。


 この世界そのものに対しての言葉だった。



 山へ向かった三人を見送り、私たちはまず山羊の飼い方について、百合ちゃんたち三人に教えてもらうことにした。

 鶏の小屋の掃除をしていた三人が、一番詳しいのは美奈子ちゃんだ、と彼女を差し出してくる。


「私の分かる範囲で良ければ……」

「うん、お願いしたいの。マニュアルを作れば、みんな同じことができるから」

「あ、じゃあいいものあります」

「え?」

「学校で使ってた、山羊の飼育マニュアル持ってきてるので」

「え、そうなの?」

「はい。もう学校に山羊はいなかったけど、この記録が私たちが学校で頑張ってた思い出だから手放せなくて……」

「うん、役に立つと思うよ。じゃあ内容を共有してもらえる?」

「はい、もちろんです」


 美奈子ちゃんが見せてくれたマニュアルには細かく色々と書かれていた。

 が、ふと一つ目に留まった項目があった。


「予防接種……?」

「はい。基本的に家畜にはワクチン接種が義務付けられてます。実際、病気の危険を考えたらしたほうがいいです」

「……困ったな、さすがにそれはここにはない」

「田所先生は獣医師の資格持ってますから、ワクチンさえあれば、先生ができます」

「なら、ワクチンを次は手に入れる必要があるね」

「鶏たちは雛の段階で必要なワクチン接種は終わってますけど、これから生まれてくる子たちには打ちたいですね。基本的には獣医師のところに行けばワクチンはあるはずです」

「ありがとう。そういうことはやっぱり知ってる人が強いね。頼りになるよ」

 私がそういうと、美奈子ちゃんが照れたように笑ってくれた。


 田所先生を呼ぶと、教えてくれた。

「学校に行けば、家畜に使っていた予備のワクチンがあります。専用の冷蔵庫で最優先で電力を回していたから、残っていれば使えるはず。小さな冷蔵庫だから、大して電力を使わなかったから。ただし、冷やしたまま持ってこないといけないからクーラーボックスが必要です。もし学校にもうなければ、お世話になっていた近所の獣医師さんのところに残っていればいいんだけど……」

 もう真夏になりつつある今の季節だと少し厳しい。

 保冷剤を作るしかないか……。


 クーラーボックスにアルミホイルの壁を作って、片栗粉で作った氷を保冷剤扱いで作る。煮沸した水から作れば融けるスピードも少しは遅くなるはず。


 でもまずは捕獲してからだ。それからでないと意味がない。

「分かりました。山羊のワクチンについては捕まえてから考えましょう。鶏のほうは?」

「基本的に雛の間に必要です。生後三週間がリミットね」

「三週間か……。今、子どもたちが温めてる卵が羽化するとしたらいつ頃ですか?」

「そうね、あと10日ってところかしら」

「なら、一か月以内には欲しいですね」

「ええ」


 私の頭の中でスケジュールが構築されていく。

 山羊を2週間以内に捕獲、その間に柵付きの小屋を作る。

 そのあと、ワクチンを取りに向こうへ行く。

 時間に限りがあるから、すぐ戻ってワクチンを使う。

 日帰り仕事になる。


「待って、学校じゃなくてもあるかもしれない」

 そう言ったのはすみれちゃんだ。

「先生、覚えてないですか?前に、みんなで見学で新宿の会館に行きましたよね?あそこなら一通り家畜用のワクチンも扱ってましたよね?」

「あ……!そうね、そうだわ。あそこならある」

「新宿に扱っているところがあるんですか?」

「ええ。農業組合が畜産のワクチンも扱っているのよ。その施設が新宿にあるの」

「ならそっちに行ってみましょう。新宿のほうが近いし」

 ただ、あの大きな街だと、ゾンビも生存者も多そうなのがネックだ。

 それでも新宿なら、あの大きな街なら、まだ使える物資が残っている可能性も高い。

「よし、新宿で考えましょう」

「なら、場所と品物が分かる人員が必要ですね。私が行きます」

 と田所先生が志願してきた。

「お願いします」

 分かる人に行ってもらうのが一番いい。護衛と運転手に、迦楼羅とツバサくんかな?私の軽ならもう一人いける……。なら、遠藤先生にお願いしてみようか……。


 大工組が、女子高生組に教えられて、高床式の柵付きの小屋を作り終えたころ、山羊の捕獲に向けて、いよいよ本格的に動き出すことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ