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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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55 次に行く場所

 その日の夜、子どもたちが眠った後で大人たちと百合ちゃんとで会議が始まった。

 議題は、百合ちゃんの通っていた学校での物資調達ミッションがメインだ。

 まずは、学校の場所の確認だ。


「百合の学校なら、うちからならさほど遠くない。百合も自転車で通っていた距離だから」

 と英二さんが教えてくれた。

 簡単な手書きの地図だったけど、土地勘のある人なら問題ない場所みたいだ。

「なら、車なら片道1時間ちょっとってとこか」

「いや、道路状況を考えたら、倍以上は見ておいたほうがいい」

「そうね。私も何度か仕事であっちのほうには行ったことがあるけど、高速使っても片道一時間ちょっとくらいだったから、高速が使えなかったら、片道3時間近くみてもいいかもしれない」

「一応、自治体の避難場所には指定されていたけど、あまり便利な場所じゃないから、実際には避難場所にはなっていない可能性も高いと私思うんだ。うちの学校より、同じ市内にある小学校や中学校のほうが地盤も固いらしいしそれなりに広いから」

「なるほど。じゃあ、学校内は空の可能性もありってこと?」

「うん。騒ぎの時はもう夕方だったし、テスト期間だったから先生たちと家畜の世話組以外は校内に残ってなかったと思う」

「なるほど……。じゃあ、その人たちは避難状態で校内に残ってるかもってことだね」

「かもね」

 もし誰かいるのなら、今すぐじゃなくても人数次第では保護を考えよう。

 とにかく現地までは道路状況が悪い。ゾンビもいる。一日仕事じゃ終わらない可能性が高い。

 向こうにはこっちのことを知ったかもしれない略奪者の集団もいる。でもこれは行ったほうがいい場所だ。


「軽トラ二台での遠征にしよう。向こうで追われても、二台なら逃げ切れる」

 ツバサくんが言う。

「メンバーは、案内に百合ちゃんは必須。それから俺、迦楼羅さん、英二さんでどうだ?」

「何でその四人?」

「案内のために百合ちゃんにはいてほしい。それから何かしら戦闘になった時に戦える俺と迦楼羅さん、英二さんには物資を積む力仕事を頼みたい」


 なるほど、適材適所。


「英二さん、百合ちゃん、いい?」

 私が問うと、2人は頷いてくれた。

「じゃあ、その四人で向かってください。でも無理な調達はなしで」

 それで話は決まり、向かうのは明日の朝6時となった。

 もうその時間ならかなり明るい季節だし、略奪者たちもそんな朝早くからはいないだろう。それに向かうのは埼玉方面だ。向こうの機動力は正確には分からないが、そこまで追いかけられるほど燃料に余裕があるとも思えない。

 楽観ではなくそう思うのは、彼らが車を変えていないからだ。あのスモークの車がメインなら、他の機動力は大してないと思ってる。トラックでぶつかってこられたりしたら危険だが、今のところそんなことはない。つまりそこまでの機動力は持っていない。

「じゃあこれで決まりね。一泊二日の可能性も考えて各自泊まり準備を最低限。迦楼羅、お願いね」

「分かったわ。結花はこっちに残ってくれたほうがいい。アンタがここで色々判断して管理してくれるのが一番安心できるわ、こっちも」

「うん」


 迦楼羅が私を「帰る場所」として信頼してくれてるのが分かるから素直に頷く。


「百合ちゃん、学校内の案内図、分かる範囲でいいから書ける?」

「はい」

 ノートとペンを渡すと、百合ちゃんが考えながらそこに学校の見取り図を描いてくれた。

 校門から入って、真正面にメインの校舎、その裏に実験棟含む専門棟と倉庫。その近くに家畜小屋。グラウンドを挟んだ反対側に田んぼと畑。うん、こりゃ広いわ。


「校舎の裏口の近くには部活棟と自転車置き場があります。朝の作業や部活があった子は、裏口から登校してたんです」

「自転車があるのはいいわね。残っていたら何台かもらってもいいかしら?」

「乗る人がいない自転車はいいんじゃないですか?」

「それなら自転車部のものがいいかもです。部室に用具もあるし、割といい自転車使ってるって聞いたことあります」

「あら、それはいい情報ね」


 そこからリスト作成をする。


 ・自転車3~4台。

 ・自転車用具。

 ・種。

 ・肥料。

 ・鍬。

 ・手押しで使える小型重機。

 ・保健室の衛生用品と薬。

 ・可能なら鶏と餌。


 最低限これだけ。


 リストを全員に配布して、今日の会議は終了。

 ナオトさんたちの空き家の仕訳も進んでいて、その報告も受けた。シゲトさんと連携して、使える予定の空き家の水道のパッキンの交換を優先してお願いしている。

 

 やっぱり人数と集合知とプロは「力」そのものだなって心から思った。

 私は防災に関しては多分この中の誰よりも勉強してるしプロだけど、生活に直結する部分に関しては素人だ。だから私は私にできることをして、増やしていくしかない。そのためには……。



 翌日の朝、プロテクターとヘルメットで防御装備を固めた四人が一台目、ツバサくんと百合ちゃん、運転手は百合ちゃんのナビでツバサくん。二台目、英二さんと迦楼羅。運転手は土地勘のある英二さんで、迦楼羅は何かあった時の露払い。

 ゲートの通過時間は2秒足らず。それなりのスピードで突っ込む必要があるので、スパイクトラップを外し、直線距離ギリギリから発進することにした。

 子どもたち以外で見送ることにして、朝靄の中、二台の軽トラに乗り込む四人に声をかける。


「行ってらっしゃい、無理しないでね」


 無事に帰ってきてくれたらそれでいい。命さえ持って帰ってきてくれたらいいのだ。


 鳥居の向こう、青白いカーテンの刃を抜けて向こうに行った二台を見送り、私はしばらくそこに立っていた。

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