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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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40 子どもたち、風呂上がりのホストたちと出会う

 朝6時、表から車の音が聞こえ、市庁舎から出ると私の愛車が帰ってきた音だった。

 ……え、でも何?何かヘルメット被った不審者がいっぱい乗ってるんだけど?

 全員、無言で降りてくる。

 ――怖い。普通に怖い。


「結花ー!」

「その声で判断したくなかったんだけど!?」

 運転席から降りてきたヘルメットをかぶったツナギ姿の先頭の不審者は、迦楼羅だった。

「迦楼羅!ちょ、その恰好何!?」

「着替えて来たのよ。で、お風呂の準備できてる?」

「うん、源泉かけ流し&湧き水で温度調整済み。シャンプー、石鹸類とタオルのほかに必要なものある?」

「剃刀あるかしら?」

 あの騒動からずっと、きっとまともに髭剃りもできていなかったのだ。せめて人間の顔に戻してやりたいという迦楼羅の気持ちが私にはよくわかった。

「旅館かホテルのアメニティがあるから多めに持っていくよ。錆びてないの使ってね」

「分かったわ、ありがとう。子どもたちはまだ寝てるでしょ?」

「うん。桃ちゃんと千里と寝てる。私は起きてたから」

「ありがと。じゃあ、アタシはあの子らをお風呂に突っ込んでくるわね」

「うん。タオルとその他は置いてあるから、あとで私が自転車で剃刀持っていくね」

「お願い」


 車を見送って、そのまま市庁舎に戻る。

 ホテルから回収していたアメニティの剃刀を未開封のまま少し多めに入れて、お風呂上りに喉も乾くだろうからと思って昨日から冷やしていたペットボトルも入れて、自転車でお風呂場に向かう。

 まだ朝早い島の空気は少しひんやりしていて気持ちよかった。

 ブルーシートが見えてくると、はしゃいだ男の人たちの声が聞こえて来た。

「すげえ!風呂だ!マジで風呂だ!」

「タオルも石鹸もある!え、ここ天国?俺ら死んだ?」

「……温泉だな、これ。贅沢だが嬉しい」

「ここ何なんだよ、迦楼羅!」

「あとでちゃんと説明するわ。いいからアンタたちは人間に戻る作業をしなさい」


 水音が跳ねたり楽しそうな声がするほうへ行くと、迦楼羅の横顔が笑っているのが見えた。

 それは初めて見る柔らかな優しいものだった。


「迦楼羅、これ持ってきたよ」

「あ、結花、ありがと。うわ、水も?さすが気が回るわね」

「向こうで簡単に朝ごはんの用意もしておくから、お風呂あがったらみんなで来てね。新しい人は4人でいい?」

「ええ。よろしくね。アタシも少し食べるわ」

「任された」


 そのまま市庁舎に戻ると、朝ごはんの準備をすることにした。

 さて、何にしよう。胃にあまり刺激がないほうがいいよね……。でも私たちはちゃんとしたごはん食べたい。じゃあお味噌汁と畑で作った小松菜のおひたしと土鍋ごはん、かな?


 ご飯を炊いて、おみそ汁の具は小松菜だけで申し訳ないけど、今後増やせたらいいなぁ。それから小松菜のお浸し、と作っているとみんなぞろぞろと起きて来た。

「ゆかねえ、おはよ」

「おはよう、ユウキ。顔洗ってらっしゃい」

「はーい。行こ、彩羽ちゃん」

「うん」

 2人で手を繋いで、表の湧き水のところに顔を洗いに行くのは、もはや毎朝の微笑ましい光景だ。


「迦楼羅帰ってきたの?」

 桃ちゃんの問いに、味噌汁の鍋をかき混ぜながら答える。

「うん、四人連れて。今、お風呂に入ってもらってる。迦楼羅、ごはん食べるって言ってるけど、桃ちゃんどうする?」

「そっか。無事に帰ってきたなら良かった。あたしもいただくわ。味覚がどこまで戻ってるか確かめたいし」

「分かった。さ、朝ごはんの準備しよう。桃ちゃんと千里で、二階の会議室でテーブル用意してくれる?」

「了解」


 10人となると、さすがにいつもみたいにロビーでは無理だ。

 食堂として、二階の会議室を決めちゃうのもいいかもなぁ……。


 その時、外から悲鳴が聞こえた。

 ユウキと彩羽ちゃん!?

 ダッシュで二階から桃ちゃんが表に駆けていく。その後ろを同じく二階から降りてきた千里がモップを持って追いかけていく。

 私はフライパンを片手に追いかけた。


 表に出るとそこには、湧き水のそばでユウキの服のすそをぎゅうっと握る彩羽ちゃんと、彩羽ちゃんを守るように経つユウキ。ツナギ姿の見知らぬ四人の男におびえる2人を守るように、桃ちゃんと千里が威嚇していた。

 千里がモップを構えて震えながらも立ちはだかってる。四人の男たちは困ったように顔を見あわせていた。

 ……あー。


 迦楼羅がいない、と思ったら、車から荷物を抱えて現れた。

「アンタら、何やってんの!子どもがおびえてんでしょ!」

「い、いや、俺ら何もしてないです……」

「声をかけようとしただけで……」


「はいはい、全員ストップ!」

 フライパンを軽く鳴らして割って入る。

「誰も動かないで。まず、迦楼羅。説明」

「えっと、みんな。この子たちはアタシが勤めてた店の同僚なの。助けに行ってきたんだけど、かなり汚れてたから、まずお風呂に放り込んできたのよ」

「あ、確かに見た顔がいるわ」

 と援護射撃は桃ちゃん。その桃ちゃんの言葉に、千里もモップを下ろした。

「あれ、桃ちゃん先生……?」

 少し若い感じの青年が、桃ちゃんを知ってた。

「桃ちゃん言うな!」

「あ、その言い方、やっぱり桃ちゃん先生だ。って、その顔色どうしたんです?迦楼羅さんと同じドーラン塗ってんすか?」

「……」


 桃ちゃんが眉を寄せて押し黙る。

 ええっと、話すなら、朝ごはん食べながらのほうがいいよね?


「はい、そこまで。朝ごはんできてるから、みんなで食べよう!そこでそちらの四人は自己紹介よろしくね。こちらもするから」

 私の言葉を合図に、千里を先頭に、全員ぞろぞろと市庁舎へ向かっていく。その殿で、私と迦楼羅がため息をつく。

「ごめんね、結花。あいつらに悪気はないのよ」

「そう思っておくわ。まずは朝ごはんにしましょう」

「ええ」

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