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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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13 島のルールを決めよう

 朝、目を覚まして外を見ると、空は雲に覆われていた。

 

 ――今日は降るな……。

 

 なのでまず今日最初の仕事として、迦楼羅と手分けして軽トラと軽自動車に積んできた荷物を全部庁舎の一階ロビーに運びこんだ。

 ついでに私の愛車を庁舎の屋根の下に入れておく。

 一台きりの大事な愛車だ。雨に濡らしたままにしておくのは嫌だった。


「そうだ、迦楼羅。これ被ってみて」

 私が迦楼羅の頭の上から被せたのは90Lの黒のごみ袋。手と首は出せるように切り込みを入れてある。

「ちょ、何よこれ」

「即席のカッパ。あとは雨降ってきたら頭はこれ被って」

 用意したのはゴミ袋の片側とハサミで切っただけの帽子。

「よくこんなの思いつくわね」

「ゴミ袋って汎用性高いのよ。防水・防寒・簡易トイレにも使えるし。とりあえず私も同じの作ったから、雨が降りだしたら使おう。まず今日は雨水を貯められるものを探すとこから」

「それなんだけどね。今朝、ここの市庁舎の裏を見たら、空のドラム缶がいっぱいあったわ。あれ使えない?」

「ドラム缶?それは最高だよ。すぐ見に行こう!」


 市庁舎の裏に行くと、確かに空のドラム缶がごろごろしていた。

 市庁舎だからこういうゴミはここでまとめて本土に持って行ってたんだろう。

 私と迦楼羅はドラム缶を起こして整然と並べた。

 中は汚れて錆びてはいたけど、生活用水ならそこまで気にしなくてもいいと思った。

 人は一人一日10リットル平均の生活用水を使うという統計がある。

 なら雨水も活用しない手はない。


「他にも何かないかな?」

「島なら各家庭に雨水タンクとかあるんじゃない?」

「あ、それはありそう。壊れてないといいな。早速集落のほうに探しに行ってみようか?」

「歩き?」

「もちろん。まだ雨は降りだしそうにないし」


 早速集落跡へと行ってみるとあったあった。

 一軒家の壊れかけた雨どいの下に雨水タンクが多種多様。固定されているからか転がっているようなものはなかった。きちんと洗えばまだ十分使えそうなものが多い。宝の山だな。

 念のため中をいくつか見てみると、まだ貯まったままのものもかなりあったけど、蓋を開けた瞬間、むっとした臭いが鼻を突いた。


「……これは無理」


 私は顔をしかめて中身を流す。

 あとできちんと洗う必要はあるけど、今日のところは雨水を貯めることを最優先にしないと。


 それをいくつか確認して市庁舎に戻ってくるとゴロゴロと雷の音が聞こえて、雲の色が濃くなってきていた。


 時間は12時少し前、だったけどゲリラ豪雨が勢いよく降り始めたので、外に出られなくなった。

 仕方ない、今日は行くつもりだったけど、島の探索も向こうに行くのもやめよう。特に向こうで雨が降っているか分からない状態で、びしょ濡れのごみ袋を着て動くのは目立つ。

 向こうの状況があれからどれほど悪化してるかは分からないけど、良くなってるとは考えづらい。でもまだ地方には届いていないだろう。だから、この島には1か月後の缶コーヒーがあったのだ。

 つまりあのパンデミック後、最低でも一か月以上はこの島に物資が届く世界が続いていたのだ。


「迦楼羅」

「何?」

「今日は向こうに行くのやめとく。だから、荷物の整理とノートの整理手伝って」

「りょーかい。まったくゾンビ使いが荒い子ねえ」


 外に出られないなら、中でできることを進める。

 今はまだここにいるのは私と迦楼羅だけ。

 あのゲートを通り抜けられるのが私たちだけだとは決まってない以上、いつかここに他の生存者も避難してくるかもしれない。

 ならその時に秩序を保つためのルールが必要だ。


 市庁舎のロビーの応接セットの埃を拭いて、向かい合って迦楼羅と座る。

「まず、ゲートのことからね」

「ゲートの?」


 私はテーブルにメモ帳を置いて、ペンを走らせた。


「毎日、決まった時間にだけ開く」

 記録を迦楼羅に向かって見せる。

「6時、9時、12時。三時間おき。3時だけは開かない」

 どうして3時だけダメなのかは分からない。

「青白く光る、ほんの2秒足らず。ううん、体感だけど、2秒もないかもしれない」

 それが繋がる時間だ。

「どうして3時だけ開かないのかは分からないけど、少なくとも一日6回は繋がる。これは記録を取ってるから間違いないと思う」

「うん、分かった」

「それと、約2秒以内に通り抜けられなかったものは、こっちには来ない可能性がある。……仮説だけどね」

「検証が必要ね」

「うん」


 ペン先が、少しだけ止まる。


「……私、あの部屋に友達を残してきたの。そのうち、千里を迎えに行きたい。2か月くらいは問題ない備蓄は残してあるから、すぐにどうこうってことはないと思う」


 顔を上げずに言った。


「それに」


 小さく息を吐く。


「ここで終わらせたくないの」

「何を?」

「人の生活を」

「……そうね。アタシたち二人だけじゃいずれじり貧だわ」

「だからここのルールを作らなきゃいけないと思ってるの。いずれここに人が増えた時のために」


 思い出す、避難所でのあのカオスな毎日。

 ルールなんてあってないようなものだった。

 あれはダメだ。

 ここをあんな風にはしたくない。

 必要なのは枠組みだ。


「ルールを破った時の罰則は厳しくしたほうがいいわよ」

「うん、それは決めてる。追放だよ」

「追放?」

「そう。あっちに送り返す。その為にも、ゲートの使用条件は絶対秘匿」

 少しだけ間を置いて、続けた。

「ここに置いておく理由がなくなった人間は置いておけない」

「なるほど。優しいのね」

「優しい?」

 どこが?

「それでも“追放”で済ませるなんて」

「……ゾンビなら殺せるけど、人は無理だよ」

「執行猶予はなし?」

「そこは状況次第かな」

「それなら、一発アウトなことだけ決めて、それ以外だと執行猶予とか?」

「一発アウト?」

「人に故意に危害を加えることは一発アウトでしょ」

「うん、それは確かに」


 ノートに島のルール、という項目を新しく作る。


 ・島のルール破りに関しては追放一択。

 ・ただし、執行猶予もあり。

 ・他人に危害を加えたら追放一択。例外はなし。

 ・労働は自分にできる範囲はする。

 ・自分の住む場所は自分で直して使う。

 ・水は配給分配。


「まずはこんなもんかな」

「そうね。あとから追加はできるわ」


 外のゲリラ豪雨はそろそろ治まろうとしていたが、私たちは話に没頭していた。

 

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