12 ゲートの謎
6時ジャストにゲートが開きそこに飛び込んで車から降りて気づいた。
荷台に乗せていたスコップがなくなっていた。
うまく載せきれなくて、スコップの先を荷台から出していたのを思い出す。
落とした?
でもベルトが緩んでる感じはない。
……もしかして。
全部通りきらなかったものは、持ってこれない?
これはちょっと検証案件だな……。
「どうしたの、結花」
「あ、うん。ちょっと検証が必要なことできちゃったなって……」
私が気づいたことを迦楼羅に投げると迦楼羅も考えるように眉をひそめた。
「それって生き物も一緒かしら」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
「何も人体実験しようってわけじゃないわよ」
「当たり前でしょ。さて、荷物整理は明日にして、今日もさっさと寝よう。疲れたよ」
「お疲れ様。今夜は結花の好きなもの食べてゆっくり寝なさいな」
「そうする。明日は荷物の整理したら、島の反対側のほうにも行ってみよう」
「賛成よ」
さすがにカロリーバーは飽きたので、アルファ米のおにぎりと簡易コンロでお湯を沸かしてフリーズドライのお味噌汁で晩御飯にした。
そして早速持ってきた大型ランタンが役に立った。
部屋の中をしっかり照らし出す灯りはとても心強い。
それから持ってきたテントの中で2日ぶりの着替えをして頭もシャンプーシートで拭いたらちょっと気が楽になった。お風呂に入りたいけどどこかに入れるお風呂残ってないかなぁ……。
まだこれは贅沢な願いだな……。
「ねえ結花」
「ん?なぁに、迦楼羅」
「次に行く物資調達先なんだけど……提案があるの」
「え、何処?」
「本屋か図書館」
「本屋……?」
「あんた、ホームセンターで初心者向けの野菜作りの本乗せてたでしょ?あれ見て、アタシたちに必要なのは知識じゃないかって思ったの。防災知識に関しては結花はプロだからそこは全面的に信頼してるわ。でもこの島で生きるなら他に必要な知識はたくさんあると思うの」
「……言われてみれば。私、それは考えてなかった」
「それに今は張りつめてるけど、いずれ娯楽も必要になるわ。その時にネットのない今の状況じゃ、本があるとないじゃ確実に違うわよ」
娯楽。
……そんなこと考えてなかった。
でも確かにそうだ。
いずれ千里を連れてきたり、他の人もここにいるようになったりしたら、生活だけじゃ社会は成り立たない。
娯楽は、人間社会には絶対必要。ネットがないなら尚更だ。
「そうだね、その通りだよ。じゃあ次は本屋と図書館に行こう」
「あ、そうそう。ポケット見たらこれあったから結花にあげるわ」
迦楼羅がポケットから出したものを私の手に渡してくる。
一万円札が……2枚、3枚……10枚!?
「ちょ、こんなのもらえないよ!」
「だってもうアタシには必要ないものよ。それに、あんたお金払わずにものを持っていくのは嫌なんでしょう?会社のだって所謂社割で買えるものしか積まなかった。でしょ?」
「え、なんで……」
分かったの?
「わかるわよ。だって高そうなのポータブル電源とソーラーパネルくらいで、あとはそこまで高いものはなかったもの。あの短い時間で給料内で買えるものを選んでるんだろうなって思ったわ。他にも色々あったのに」
観察眼がすごい。
さすが元ホスト。
「だからこれで本屋で本買いなさい。あ、アタシのために料理本はお願いね。これでも料理はそこそこできるから、そのうちちゃんとしたごはん作ってあげるわよ」
「いいの?」
「だからアタシの楽しみのためにも本は必要よ。それにこれでも読書は好きなの。ホストやってると色んなお姫様が来るのよね。アタシの上客の一人にミステリー小説が好きな女性がいて、よく店に来てミステリー小説の話をしたもんだわ。ちなみにその人は、売れっ子のミステリー作家さんだったってオチなんだけどね」
なら、ミステリー小説の棚も行かなきゃ。
「……ねえ結花」
「なに?」
「本、ちゃんと選びなさいよ。アンタ、実用書ばっかり取りそうだから」
「実用書が最優先でしょ。あ、でもこの島の観光案内の本とかあったら欲しいな。細かい部分は違っても、自然環境は変わらないと思うから」
「それは図書館のほうがいいかもね。図書館なら、観光雑誌だけじゃなくて、各地域の歴史書とかもあったりするから」
「うん、分かった」
ちょっと眠くなってきた。時計を見ると午後8時。
でも辺りが真っ暗なのと浪の音が気持ちよくて眠くなるのが早い。
ランタンを無駄遣いするよりはもう寝ちゃおう。
「迦楼羅。もう眠い」
「寝なさい。明日は少し天気が崩れそうだから、起きたら荷物を濡らさないようにここに運び込みましょう」
「わかるの……?」
「少し木の葉っぱが項垂れてたのよ。水分を含み始めてる。雨になるかも」
「雨が降るなら、雨水をためるものを見つけておきたいな……。生活用水はどれだけあっても困らないから……」
「じゃあ明日は朝から雨が降り出すまでに雨水貯めておくものを探しましょう。ほら、もう船漕いでるじゃない。寝袋に入って寝ちゃいなさい」
「うん……おやすみなさい……」
迦楼羅がランタンの明かりを消してくれて、暗闇がやってきた。
海から聞こえる波の音が心地よくて、私は寝袋の中で目を閉じる。
髪集島での3日目の夜が終わっていく……。




