表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/11

◇10 魔法対決大会の優秀者は。


最終話。

真ん中、三人称を挟むレティツィア視点。





 王都学園の魔法対決大会は、王都のお祭りイベントの一つでもあるが、今年は皇族が観戦すると聞きつけて大盛り上がりを見せていた。

 普段なら、身内が出ていない限り、顔を出さない皇族が観覧席に来ると言うことで、警備は物々しかったりする。


 エントリーした私とギルヴァルド先輩は、出場選手控室でまったりしていた。


 ルシオもそのうち来るが、あくまで会いに来るだけ。出場選手ではない。

 成績が届かなかったこともあるが、届いたとしても、私やギルヴァルド先輩の戦いを毎日のように見ていたルシオは『怖いから嫌だ』とのこと。

 ギルヴァルド先輩が『雑魚』と吐き捨てていたが、私とギルヴァルド先輩のレベルが高すぎるだけで、ルシオは平均なのである。雑魚ではないのだ。チョップを食らわせておいた。


 そんなルシオがやっと来たかと思えば、騒々しかった。


「やめろって!」

「放せ!」


 ルシオが止めようとしたが乱暴に振り払ったのは、チリエージャ侯爵令息のライシオだ。ルシオの兄である。

 ギロリと、私を嫌悪を剥き出しにして睨みつけた。


「この恥晒し! どこまで泥を塗れば気が済む!?」

「何をカッカしているのですか?」

「貴様の行いに激怒しているのだ!!」


 冷めた目で見上げていれば、一人でいきり立つライシオ。


「兄さんっ」


 咎める視線を向けるルシオを、私が兄と慕っていても兄と呼ばないのは、兄呼びで連想するのは実の兄だからだ。


「心当たりがありません」

「しらを切るか!? 自分が皇子殿下の婚約者候補だと吹聴しているそうじゃないか!!」

「いいえ。してませんが」

「ふざけやがって!! 親戚ってだけでオレ達まで被害を受けるんだ!! このふしだらな女の娘が!!!」


 真っ赤になって激昂するライシオが、手を伸ばしてきた。

 それが私に触れることはないとわかっていたので、微動だにしなかった。

 始めから控室の隅っこに待機していた騎士が、その手を掴む。


「な、何をする!?」と、ライシオが暴れるので、ポッキリと手首はへし折られた。

「うぎゃああ!」と泣き喚くライシオから目を逸らして、唖然と立ち尽くすルシオに目を向ける。


「ルシオ。ライシオはこれで除籍になるだろうから、家督を継ぐ覚悟をした方がいいよ」

「えっ!? ど、どういうこと!?」

「バカすぎるよね。タルタルーガ伯爵家も後継者をなくすんでしょ」

「デルタ侯爵家とその取り巻きもね」

「ねぇどういうこと!? レティツィア!」


 ギルヴァルド先輩が大人しかったのは、魔法対決大会で問題を起こすと出場停止のペナルティを科せられるからだ。それに対処は私についた騎士に総任せで十分である。


「レティツィア。上手い具合に僕達は最後にぶつかるから、それまでの勝負は一発で終わらせようよ」

「いいですよ。瞬殺しましょう」

「レティツィアさん!? 説明をください!」


 ルシオが泣きそうなので、宥めておいた。あとでわかるからって。


 私はすでに皇族の籍に移っているので、ルシオの兄の行いは立派な皇族冒涜罪が適用されるだろう。

 知らなかったでは済まない。もう子どもではないのだし、侯爵家の跡取りとして責任をとるべき。


 ちなみに、ライシオが激怒した理由は、言っていた通り『皇子殿下の婚約者候補になったと吹聴している噂』を聞いたからだろう。

 あのデルタ侯爵令嬢と結託したピニャータ達は、そういう噂を広めることにしたらしい。

 私が吹聴している、という噂で私に皇族冒涜罪を吹っ掛けて、本気で潰すつもりできている。

 魔法対決大会なんて観覧席で広め放題な場所となっているので、そこでライシオは聞いたのだろう。

 ちょっと考えれば愚かな行為だからあり得ないとわかるはずなのに、やれやれだ。



 私とギルヴァルド先輩は順調に勝ち進めば、決勝戦で対決することになる。

 仕組まれたのかな。まぁいいけど。


 魔法対決大会は開催され、私は三年の生徒と一回戦を行った。

 ポンッと風魔法で吹っ飛ばして勝利。

 歓声が上がる会場で、皇族の観覧席を見上げると、お父様は片手を上げて、お母様も顔の横でヒラヒラと振ってくれるし、ニールオン殿下も満面の笑みで手を振ってくれる。

 私はカーテシーで応えておいた。


 ギルヴァルド先輩もまたボンッと爆発で吹っ飛ばして勝利。

 この魔法対決大会は、魔法防御の魔法道具のブローチをつけて試合をするので、死ぬ恐れはおろか怪我もそれほど心配はない。吹っ飛ぶけどね。


 ボンボン、ボンボン。

 私とギルヴァルド先輩は開始直後に相手を吹っ飛ばして勝利をおさめた。


 そうして、あっという間に、決勝戦。

 まだ公にしていないので、私の家名はまだタルタルーガ。


 レティツィア・タルタルーガvsギルヴァルド・ヴェレッタ。

 開始。




   ◇◆◇◆◇




 ピニャータ・タルタルーガ伯爵令嬢は、認めたくない義姉のレティツィアを潰そうと躍起になっていた。

 ケイトリン・デルタ侯爵令嬢もまた、余裕綽々で登城を繰り返すレティツィアが目障りで潰したい。

 二人の目的は一致した。

 レティツィアの排除。二人の頭にはそれしかなかった。


 取り巻きに噂を広げさせて、皇族冒涜罪で断罪されるように仕向ける。

 それはあまりにも大きな罪。危ない賭け。そして、リスキー。

 ちなみに、賭けはすでに負けている。


 いかに自分達の足がつかないように、取り巻きを使って言いふらしても、所詮浅知恵。

 元々目をつけられていたこともあり、その悪事は筒抜け。


 魔法対決大会を絶好の機会として、嬉々として『レティツィア・タルタルーガ伯爵令嬢は自分が皇子殿下の婚約者候補になったと言っている』という話を広めた。

 それはレティツィアに悪意を持つ貴族達がふるい落とされる絶好の機会にもなっている。


 レティツィアが出場するなり、「あれが例の自称皇子殿下の婚約者候補」と囁いた。


 大抵の貴族はそれに対して、関わらないように避けるが、中にはライシオのように嫌悪を露にする。そして「なんて不敬な」と批判した。歓声に掻き消されたが、ブーイングを上げた。

 けれどもすぐに、レティツィアがボンボンと魔法で瞬殺して勝利をすると、そのブーイングも上げられなくなる。


 思うように、レティツィアのヘイトが集まらないとピニャータもケイトリンも、苛立ちを隠せなくなっていた。


 そうして、あっという間に、決勝戦。



 試合開始直後に一撃で相手を倒していたレティツィアとギルヴァルドだったが、決勝戦は違った。


 二人はほぼ同時に浮遊魔法で浮上。

 手を突き付け合うと、複数の魔法陣を展開して、放った。


 レティツィアは光魔法。ギルヴァルドは火魔法。

 砲撃の威力で連打のぶつけ合い、光の破片と火花が散りばめられる圧巻な戦い。

 それだけでは攻撃の手を緩めず、レティツィアはもう数個の魔法陣を展開して、小さな光魔法の攻撃をギルヴァルドの背後を狙って放つ。ギルヴァルドはもう片方の手を翳して、魔法障壁で防いだ。

 この時点で、二人の魔法レベルは、すでに上級魔法使いを軽く超えていた。


 当然、いきなりのハイレベルな戦いに、観客は唖然。静まり返るほどだった。


 ヴォンッ。


 ギルヴァルドの闇魔法が全ての攻撃魔法を、中央で呑み込んだ。

 増幅する黒い闇が塊になってレティツィアに向かう前に、レティツィアはそれを水魔法で包み込むと光魔法を加えて光で消し去った。闇魔法を、水魔法で効率を上げて光魔法で浄化。


 続いて、頭上に魔法陣を展開して、氷柱の雨をギルヴァルドに注ぐ。

 ギルヴァルドは風の刃で粉砕して、氷の破片を撒き散らした。


 次第に観客は唖然から立ち直り、声援を上げ始める。歓声が沸いた。


 光魔法と火魔法の押し合いを再び始めつつ、それぞれの得意魔法をぶつけていく。

 相殺の繰り返し。

 強力な魔法を使い続けているため、魔力の消耗は激しい。それに浮遊魔法も継続的に魔力を消費していた。あっという間に魔力は減っていき、疲労が浮かぶのはギルヴァルドの方だ。

 汗がにじんだ顔を見て、レティツィアは仕掛ける。

 三つの魔法陣から放つ光魔法の光線で攻撃しつつ、巨大な魔法陣を用意して、物質量で押し負かそうとした。

 今までの手合わせでそうしたように。


 その前に、ギルヴァルドも動く。

 今までの手合わせでそうされることは見越していた。だから、トドメを刺すこの瞬間を待っていたのだ。

 瞬間移動の魔法でレティツィアの背後をとった。

 攻撃を放ったが、反射的に作られた魔法障壁が間に合い、レティツィアは無傷。

 完成した巨大な魔法陣からの魔法攻撃を受けて、ギルヴァルドは落ちた。



 勝敗はついた。

 割れんばかりの歓声が上がり、最高潮に盛り上がった。




 あまりにもハイレベルな魔法勝負に呆気に取られたケイトリンは、我に返る。

 ピニャータもレティツィアへの歓声を聞いて、醜い恨みの表情を歪ませた。


 これではレティツィアのヘイトを実感出来ないが、ちゃんと種は蒔いた。逆に優勝者として目立つレティツィアが『自称皇子殿下の婚約者候補を騙る』悪事が知れ渡る。


「「(あの女はもう終わりよ!!)」」


 二人が愉悦に浸るのも、表彰式までだった。



 何故か表彰式は学園長の代わりに、皇帝がトロフィーを手渡したのだ。

 その上、しゃがんで皇子のハグを受けているレティツィア。挙げ句、皇子を抱き上げる。仲睦まじげに笑い合う二人。


 あまりのショックに、ケイトリンは扇子をへし折った。

 自分こそは、次期皇妃になるべき存在だと思い込んでいるため、目の前が怒りで真っ赤になった。



「この場を借りて、重大な発表をする」


 会場に声を響かせる魔法道具のマイクで皇帝は、告げる。


「此度の優勝者、ここにいるレティツィア嬢は、紛れもない私の血を継いだ娘である。よって、皇族に迎え入れて、レティツィア・タルタルーガはレティツィア・ルーナ・ミネラーレ皇女となる!」


 一拍遅れて、観客は騒然とした。


「十七年前、ある貴族が悪どくも私を陥れるために罠に嵌めたことにより、レティツィアは密かに生まれることになった。だが、レティツィアは自分の意思で今まで混乱が起きないよう隠れてくれていた。レティツィア皇女の真の姿を見てくれ」


 皇帝の合図を受けて、レティツィアはまとめていた自分の髪を解くと同時に髪色も解いた。

 皇族の証、月光色の髪。


 皇帝が肩を抱けば、父娘にしか見えない二人に、観客一同は息を呑んだ。



「そ、そんな……嘘でしょ……」


 ケイトリンは、顔を真っ青にした。

 目の敵にしていたレティツィアが、皇女だったなんて。

 これでは、広めようとしていた噂は使い物にならない。

 実の姉弟で婚約者などありえないのだから。


 皇族冒涜罪が適用されるのは、むしろ自分達。


「嘘だ嘘だ嘘だっ! 皇女? アイツが皇女なんて……!!」


 ピニャータは、信じたくないと頭を掻きむしった。

 ふしだらな娘の忌み嫌われっ子。

 そうでなければいけない。そうなのだ。

 皇女なんてありえない! 嘘に決まっている!


 そんな高貴な血を継いでいるわけがないと現実を否定した。



 ケイトリンとピニャータ、それと取り巻きの数名は一斉に騎士団に取り押さえられた。


「皇族冒涜罪にて、拘束する」

「いやぁ!! 離して!!」

「な、何よ! 何もしてない! あたくしは何もしていないんだから!!」


 言い逃れをしても無駄である。

 レティツィア皇女の発表に合わせて、首謀者と度が過ぎた取り巻きは牢獄に入れる手筈だった。

 レティツィア皇女を貶めたこともあるが、ニールオン皇子の名も利用したことも悪い。

 当然の報いだ。


 そばで連行される姿を目撃した一部の観客以外は、この騒動に気付くこともなく、素晴らしい魔法の腕を披露した皇女の誕生を祝福した。




   ◇◆◇◆◇




 魔法対決大会で優勝したら、トロフィーを渡したいとお父様がワガママを言い出してしまい、ならばその場を借りて私の公表をしてしまおうとお母様も言い出してしまい、そういう話になった。

 会場には多くの平民も観戦するし、貴族向けにはちゃんとお披露目のパーティーを開けばいいということで、決定。


 目の前で決まったそれに『まだレティツィアが優勝するとは決まってないけど?』とギルヴァルド先輩がむくれた。



 まぁ、私が勝って優勝しましたけどねっ!



 密かに私を陥れようとしたピニャータ達は牢獄に入れられた。首謀者のピニャータとデルタ侯爵令嬢は、身分剥奪の上、極寒の修道院行きが決定。


 叔父夫妻が情状酌量を私に訴えたかったのか、面会の申し込みが来たが、総無視しておいた。


 私に暴力未遂を犯したライシオは、除籍処分が下されて、チリエージャ侯爵家の家督は次男のルシオが継ぐことが決定。

 むしろ、皇女の私と親しいルシオは褒め称えられたそうで、気持ち悪いとげんなり顔だった。頑張れ。



 残る問題は、ギルヴァルド先輩との縁談。


「ちょうどいいじゃん。公爵位の次期夫人の座が空いてるから、ギルヴァルドの嫁に来なよ」

「ふざけるなよ。誰が娘より弱い男の嫁にするか! 治安騎士団をまとめる公爵家なら、強くなってから出直して来い!」

「わかった、決まりだね。ギルヴァルドが勝つまで勝負だ!」


 ヴェレッタ公爵様にうっかり言質をとられたお父様は、延々と勝負はさせないと制限を設けた。

 婚約を勝ち取る勝負は三回まで。



「ギルヴァルド先輩が、真面目に後継者になるなら、別に構わなかったのに」

「僕は勝つよ。後継者だって余裕でこなすよ。皇帝陛下を納得させてみせるから」


 フン、と鼻を高くするギルヴァルド先輩は、何度も登城して会いに来たが、その都度、ニールが割り込むのでおかんむりになった。


 ギルヴァルド先輩が膝枕してご満悦だったところを、突撃して押し飛ばしたニールは結構な力を持っていた。ビックリ。



「この腹黒!」

「うえーん! お姉様、いじめてきます!」


 ほぼ私の取り合いの時間だった。



 婚約を懸けた勝負は、三回目にして戦法を練りに練って仕掛けてきたギルヴァルド先輩が勝利をもぎ取ったので、婚約は無事成立。


 ツンデレ暴君は、素直に大喜びして、私を抱き上げたのだった。






   ハッピーエンド



最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

去年あらすじだけメモしたネタを、思い出したら気になってしょうがなくなり、うっかりプロット立てずに勢いで書き上げました。この癖はついつい出てしまいますね、気をつけねば。


タイトルは『皇帝の隠し子』だけでいいんじゃないかと思うくらい、皇帝sideのエピソード寄りだったので、暴れん坊ヒーローとのエピソードは少なめだったように思います。

サラッと読めたならいいかな←


いいね、ブクマ、ポイントをよろしくお願いいたします!



2024/02/29

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ