断罪の剱
あすかは軍事演習を行うための暗い洞窟の中で、再び、自らの国の皇太子を守るために剣を獣に向けた。
それは断罪の剱であった。
「だから私はこんなところで屈している暇はない。あの日を境により一層、白裂王家を守り抜くと誓ったのだから…。」
あすかは目の前に跋扈した狼らに数歩近付いた。
そうして、改めて武家の誇りでもある剣と盾を構えると、狼らの威嚇を跳ね返すほどの咆哮を上げた。
「殿下を御守りするのが、今の私に与えられた使命なのだから!」
すると、狼らは負けじとあすかに襲い掛かった。
強靭な脚で飛び跳ね、鋭利な爪を振り下ろす。
それに合わせて、天剱家の剣が斬りかかる。
先程よりも激しい動きで回転しながら狼らを斬り捌く。
「天剱流剣術『桜』」
あすかは身体を捻りながら空中へ飛び跳ねると、共に周囲に飛び掛かっていた狼らを斬り裂いた。
あすかの身体が着地をすると、一斉に狼らの四肢から鮮血が噴き出し、まるで花が繚乱として咲いたかのような景色を見せた。
群れを成した狼らの大部分を一網打尽にして、あすかは一つ呼吸を整えた。
しかし、あすかの体勢を整える隙を見て、一息遅く跳躍を行った狼が噛み付こうと牙を見せた。
あすかの目に大きく開かれた犬歯が光る。
息を切らせたあすかにとって、それは対応し得ぬ攻撃だった。
すると、その牙と同じようにあすかの『銀の絃』が輝き始めた。
「僕ら白裂家を守りたいのなら…。」
あすかに向かう牙は今までの狼らより大きかった。
それはかつて達が討ち損ねた親玉の狼だった。
「独りで闘うのはやめてくれ。」
その親玉の頸元を津雲の臙脂色の炎を纏った大剣が吹き飛ばした。
『銀の絃』を通して『桜』の動きを先読みした津雲は、親玉に剣戟が加えられないことをも予知したのだった。
「僕自身も、今は『特別軍事支援課』の一員だ。白裂の王子だとか武家の人間だとか、立場の違いはあるかもしれないけど、白裂を想う気持ちは同じだと僕は思っている。だから…僕たちが『科兎山戦役』で背負ってしまった罪や咎に、共に向き合ってくれないか?共に闘ってくれないか?」
狼らは彼らの親玉が赤い液体を流しながら冷たくなるのを見て、悲鳴を上げながら洞窟の奥へと消えて行った。
鎮まる洞窟の中で、松明の燃え散る音が数秒の間、反響した。




