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014 杖に刻まれていた二つの文字

「浅海くん、やっぱりこれ魔法の力が込められた杖なんじゃないかな?」


「あ、魔法の文字が見つかったの?」


「うん。ほら、ここに」


 とりあえず一旦昼の休憩にしようと、先ほどの場所から離れて一休みしている二人。


 あの時会話した通り、ガラス瓶一本と初心者向けらしい魔法の書物は先ほどの場所に置いてきている。壁のくぼみも開いたままだから、近くを通ればすぐに気付くだろう。あとは誰かがそれを役立ててくれることを祈るばかりだ。


 持ち出したもうひとつのガラス瓶は、絵理がすでにヒーリングポーションを作成して中身を満たしていた。これで絵理はヒーリングポーションとマジックポーションをそれぞれ一本ずつ携帯できていることになる。


 そして未だに謎だった小さい杖だが、食事を終えた絵理がその杖をためつすがめつ見ていると、魔法の文字らしきものが柄の部分に刻まれていることに気付いた。


 絵理が示した場所を透夜も見てみると、確かにそこには魔法の文字が二つ並んでいる。そのうちの一つは絵理もすでに知っている『魔』を意味する文字だ。


 もう一つの文字は絵理にはまだ分からなかったが、透夜はすでに知っている文字だった。そしてその二文字の組み合わせにも透夜は見覚えがある。


「魔法の文字の意味は『魔』と『盾』だね。その組み合わせで使える魔法を僕はマジックシールドって呼んでるよ」


「マジックシールド? どんな魔法なの?」


「体を魔力による光の障壁が覆うんだ。簡単にいうならバリアーみたいなものかな」


「うわあ、とても便利そうね!」


「うん。僕も明らかに強そうな敵と戦う前はよく自分に使ってたよ。あるのとないのとではそこそこ違ったかな。込めた魔力の量にもよるけどね」


「へえ……じゃあこの杖に込められてる魔法の力も強いものだといいね!」


「そうだね……ああ、そうそう。あの指輪と同じだと仮定する場合だけど、使う時は魔法の文字を描く必要もないし、自分の魔力も消費しないから。アイテムに意識を集中して魔法の言葉を発音するだけでいい」


「ひょ、ひょっとしてすごい貴重品を手に入れちゃったのかも……?」


 瞳をキラキラと輝かせ、自分が手にする魔法の杖をまるで宝物のように見つめる絵理。


「ただ、使用回数が決まっててね。僕が手に入れた指輪ももうファイアーボールは撃てなくなってるよ」


「あ……そうなの……やっぱりそこまでうまい話はないんだね……」


 明らかにテンションがた落ちの絵理。透夜は慌てて言い添えた。


「い、いや。じゅうぶん便利なものだから。魔法の文字も自分の魔力も必要としないのはやっぱり助かるよ」


「……そ、そうか……そうよね……」


 あっさりと気分が復活したのか、絵理はふたたび笑みを浮かべて小さな杖を見つめている。


「じゃあ、その杖は霧島さんが持っててくれる?」


「え? いいの?」


「うん。僕は基本的に前に出て戦うわけだし、霧島さんが持っているほうがたぶんいいと思う」


 透夜の言葉はもちろん嘘ではなかったが、ずいぶんと気に入ったらしいアイテムを彼女から取り上げるとすごく悲しみそうだ、というのが一番の理由だった。


「分かった! 大事にするね!」


「ただ、この階にいる間に一度は使っておいたほうがいいかもね。込められている魔力の強さが分からないと、ちょっと不安だし」


「そうだね。じゃあせっかくだし、今のうちにその魔法の文字の発音の仕方も覚えておくよ」


「うん。ちょっと待ってね」


 透夜は魔法の本を袋から取り出し、絵理の前で広げてみせた。


 まずは杖の力ではなく、自分の魔力で文字を描いて詠唱も行い、マジックシールドを使ってみる絵理。


 すでに絵理にとっても難度の低い魔法なのか、特に失敗することもなく絵理は魔法を行使することができた。

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