祝勝会
ルシアナはシュレンの元に来てから1時間ほど彼女は祈り、シュレンは安らかな寝息を立てて寝入った。俺もルシアナもマーファすら安堵でため息をついた。
ルシアナはそのまますぐ他の重傷者のところを回り最後の一人の祈りの途中で気を失ったそうだ。
え?なんで聞いてきた感じだって?俺は彼女と一緒に他の重傷者の所を回ろうとしてたのだがシュレンの所を出たところでファイネンさんが待っていた。そのまま俺は用なしと追い払われてしまった。
ファイネンは飛び出して行ったルシアナをすぐ追いかけるでなく、馬車を手配し身の回りのものと必要物資を積み込んでからここにきたそうでそれで遅れたのだそうだ。何というか頭の下がる用意周到さである。
当然、ルシアナが倒れたと聞いてすぐに彼女の元へ向かったがファイネンさんに追い返された。
俺は行き場もやることもなくなりふらふらとさ迷ってこの野営地の真ん中の祝勝会を行うつもりであろう場所に出る。中央には大きなキャンプファイヤーの焚火が準備されその周りにはテーブルなどが並べられてその上には酒や料理がたくさん準備されている。
すでにたくさんの屈強な男たちはこの場に集まり食べたり飲んだりしている。
いわゆるビュッフェ形式というやつだ。
「お、いたいた、あんたが今回の英雄さんだろ?」
ゾンビのように目的なく歩いている俺に陽気な男がジョッキ片手に近づいてきた。
うわっ。酒臭い。どうやらすでに出来上がっているようだ。
「へへへ、暇そうだな。今回はあんたのおかげで俺たちみんな助かったと聞いてるぜ!せっかくだから少し付き合ってくれよ」
男は馴れ馴れしく肩を組んでくる。
「いや、自分はお酒あんまり得意じゃないんで・・・」
俺は少し困った顔をして断ろうとする。ノミニケーションは好まない方なので少し腰が引ける。すると男は酒臭い息を俺の顔に吐き掛けながら少し寂し気に笑い
「まぁそういうなよ。・・・亡くなった俺のダチに免じてさ、ちっと付き合ってのんじゃくれねーか?」
気さくなにーちゃんはそういって俺の前にジョッキを掲げ空を見る。
俺もにーちゃんが見上げた空を見上げながら思い出す。
そういえばマーファも言ってたな。死者を楽しく飲んで送り出すのだ、と
・・・よし、俺もたまにはバカな飲みというのに挑戦するのも悪くない。
「わかりました。ではご一緒させてください」
俺はにーちゃんに笑いかけ話を合わせる。
それを聞くとにーちゃんも嬉しそうに頷き
「お、わかってるねぇ。よし!行こうぜ!!」
にーちゃんは肩を組んだままポンポンと肩を叩き、俺を喧々囂々とした飲みの場に連れて行く。
そこにはたくさんの屈強な男たちがキャンプファイアーの焚火を囲んで吞んで食べ騒いでいた。
俺もその輪に加わり次々と注がれる酒を飲み、料理を食い絡んでくるおっさん、お兄さん、若者と盃を交わし、話し、笑った。
いままでめんどくさがって避けてきたがこういうのも悪くない。
みんな俺になんの疑問も持たずなにも聞かずただ楽しく酒を飲む。友を惜しんで、仲間を思って、今日を生き残れたことを喜んだ。
ある程度アルコールが進みみんな口が悪くなり始める。
そんな中
「しっかし、にーちゃんも大変な女たちに惚れられたもんだな。」
陽気なおっさんゴッテスは顔を真っ赤にしてるのにまたジョッキに酒を足しながらニヤニヤしながら俺を見る。
「惚れられた?」
俺はなんのことかよくわからずゴッテスを見る。
ゴッテスは注いだ酒を返す刀で俺のジョッキにも酒を足す。それを見ながら俺は問いただす。結構酔ってて頭、回んねー
「ああ、うちの隊長に見込まれたんだろ?あの鬼のシュレンに。しかもセナにまで攻められて喜ぶ豪の者だって俺たちの隊じゃ話のネタだぜー」
最初に俺の呑みに誘ったにーちゃん、バルデンはつまみを食べながら笑っている。
そのほかの男たちもその話に興味深々だ。
そいつらの顔を見渡し、これは大変な誤解だな。ここは誤解を解いておかねば。俺の沽券にかかわると思い、俺はすくりと立ち上がり
「攻められてよろこんでなんぞいません!!でもあれはアレでありですっ!!」
ふらりとよろけながら俺は力ずよく叫ぶ。これは笑いが取れると思いそうまくしたてる。
周りにいた男たちは一瞬あっけにとられたが大爆笑をしてくれた。
「やるな。にーちゃん。さすがだぜ。『女神の使い』って言われてるだけあるわ」
ゴッテスは腹を抱えながら俺を褒める。そして2人でジョッキをぶつけさらに笑う。
そんな俺の背後から
「へぇ、そういう感じで楽しんでたんだぁ?」
やや冷ややかで冷たい刃のような声が飲み過ぎの頭にいい感じで響いてきたが酔ってる俺は危機判断が甘くなっていた。
「そーなんっすよ。特にあの金髪の可愛い女の子に攻められるのはそれなりに・・・・」
俺はそう声の方向ににこやかに笑いながら振り返ると目を見開き硬直する。
周りの男たちも俺の背後に視線を向けると絶句する。
そこには焚火の火を背に仁王立ちする火の天使が立っていた。綺麗な金髪がかがり火を反射してまるで炎の髪のようにオレンジ色をさらに鮮やかに彩り、透き通るような綺麗な肌は朱く染まりそれがなかなか似合っていた。
「いや・・・その・・・セナさん・・・ちょっと調子にのっただけでして・・・」
俺は少したじろぐ。頭がアルコールで回らない。ただ今更レッドゾーンの警報器が頭の中で鳴り響く。
そんな俺にゆっくり近づいてくる。恐怖の炎の天使が。酒瓶とジョッキを・・・持って・・・?
「ふふふふ、そんなにおびえなくてもいいのに」
口元に素敵な笑みを浮かべているが目が座っていて笑っていない。
あ、怖い怒ってらっしゃる・・・・。
俺はたじろぎ後ずさる。後ろを見て酔っぱらいどもに助けを求めようとすると
「お、なんだセナ、ここで痴話喧嘩すんのか?」
「いいぞー。やれやれー」
「あのセナが男といちゃついてるだってー?」
周りの酔っぱらいは口々に火に油を注ぐような野次を飛ばす。
やめてーーー、これ以上はやめてーーー。
「ちょ!!なんでわたしがこんな男といちゃつかなきゃいけないのよっ!!」
急にセナはふらつきながら怒りをあらわにして持っていた酒瓶を容赦なく投げる。
瓶が飛んで行ったところにいる男たちは笑いながら蜘蛛の子を散らしたように逃げて笑う。
「あんなやつ好みじゃないわっ!!ヘタレだしダサいし!!」
セナは思いっきり俺を指さし力強く否定する。
だがその言葉が意外にも酔っぱらった俺の心をかき乱した。
好みじゃないとヘタレはどうでもよかったがダサいはカチンときた。
「あ?、ダサいはないんじゃないんっすか?ダサくはないでしょう?ダサくは!!」
おれは食って掛かる。あとで考えてみればだいぶん酔ってたんだろう。
しかし、彼女もだいぶん酔っていたようだ。俺の反応を見て
してやったりと思ったのだろう。
「ダサいじゃなーい。あんたみたいにダサいの久しぶりにみたわ~」
ニヤニヤ笑いながら後先考えず煽っていくセナ。
俺は頭の中が熱くなる。
俺はずんずんと歩いて行きセナの前にずいっと立ちはだかる。彼女の前に胸を張って立つ。
周りが今から起こるであろう酒の肴の予感にいっそう沸き上がる。
「いいぞーーー!!にーちゃん」
「まけんなよっ!!」
「セナ!!やっちまえーー!!」
急な強気な俺にセナが少したじろぎ後ずさる。
「な、なによ、あんたなんか・・・」
俺はたじろぎ下がった彼女の高さに視線を合わせせるため腰をかがめ
彼女の目をしっかりと見据え
「じゃあ俺の魅力で魅了して見せてやる!!」
俺はそう言い切ってニヤッと笑ってジョッキを掲げ周りにしてやったりとアピールする。
大喝采と野次と罵声が飛ぶ。
セナは顔を真っ赤にしてパクパクと口を動かした後、喝采に応えて愛想を振りまく俺の顔面が彼女の方を向いた瞬間に勢いよく拳が飛んできた。
「ぶっ」
俺は鼻柱にいいやつを一発もらい後ろに吹っ飛ぶ。痛くはない。
さらなる大歓声が起こる。
「よーし!!じゃあ勝負だっ!!かかってこーい!!」
セナが俺に向かってジョッキを掲げニヤリと笑い、手でコイコイする。
祝宴はどんどんエスカレートしていくのであった。
…3日空きました。
遊んでたのもありますがこの話がうまくまとまらず書き直し続けてました。
どうもしっくり収まらずいろんなパターンを試してました。
なんとか納得はいったものの手が止まるとゲームに逃げたりするのがあかんですやね。
すぐに逃避しちゃうのに共感してくれる人はブックマーク、高評価、俺もだよと感想をお願いします。




