友達
セナの選んでくれた服はえらいおしゃれだった。
少しぶかぶかだったがそのぶかぶか感がラフな着心地で楽に構えれた。シンプルかつ動きやすく、着心地がいい。そして見た目もおしゃれ。やるな。
そういえばセナは普段もおしゃれに疎い俺が見てもおしゃれだなと感じる格好をしていたな。
服を着終わるとマーファは本を閉じ俺を見る。
「ふむ。さすがセナだな。センスがいい。君のかっこ悪さも30%ダウンだな」
彼女は立ち上がり俺に近寄ると襟元や帯を直してくれながら悪態をつく。
というか自分の恰好がだらしないのに人の服装は直せるのかよ。と頭の中で突っ込む。
あえて口にはしない。俺の視覚的楽しみに水を差すのは野暮というものだ。
「よし、いくか」
そういってマーファは歩き始め、おれはその横について歩いた。
すでに多くの救援部隊が着いたようでかなり大規模な簡易村くらいの勢いで人がいた。
今日はここに野営するのであろう、テントが建てられ焚火が起こされ食事が作られているのが分かるいい匂いが漂ってくる。そいえばなにも食べてない・・・。おなかがぐぅーとなる。
その音に気付いたのかマーファが俺を見て意地の悪い笑みを浮かべながら
「先になにか食べるかね?シュレンの前で腹を鳴らしてはカッコ悪かろう」
そう言っていい匂いのする方向へと方向転換する。特に異論はなかったので俺もそれに付き従った。
調理場は戦場と化していた。そらそうだ。そこそこの人が集まっているのだからそれなりの量を作らねばならないからだろうと思ったら妙に明るい活気があった。
しかも料理がそれなりに豪華だ。
マーファが忙しく働いてるコックに声をかけて少し料理を分けてもらってきた。
「ほれ、とりあえず腹を満たせる程度でいいだろう。夜は祝勝会だしな」
そういいながら肉と穀物の炒め物を盛った皿を手渡される。
「祝勝会?ここでやるんだ」
俺は少し驚いた。そういうのは街に帰ってからやるのかと思ったからだった。
「まぁ本来は町でやるのだがな。今回状況が状況だったから普段の倍以上の救援部隊がきていて物資
も余っている。ここで食料を消費したほうが帰りが楽だというのもある。それに・・・・戦士を明るく弔うのは女神アファーナの願いでもある」
彼女はそういって天を仰いだ。
「・・・そっか」
俺は飯にがっついた。
腹を満たしてシュレンの休むテントにたどり着く。彼女は少し大きめのテントで治療を受けているそうだ。
「シュレン、入るよ」
そうマーファが声をかけて中に入る。
中には数人の人間がいて
神官が2人、たぶん彼女の部隊の隊員だろうと思われる男が3人テントの中にいた。
俺たちが入るとテント内が少し狭く感じるほどになったせいか中にいた3人の男は入れ違いに出て行こうとする。その際、俺の前に3人が立った。
見たことある顔だった。だれだったか・・・?
真ん中の男が俺を見つめて
「カザミ殿、今回は救援に駆けつけてくれて感謝する。本部での無礼は謝罪する。この通りだ」
男は地に膝をつき首を垂れる。
俺は焦った。あ、思い出した本部の廊下でセナに絡んでた・・・たしかケルヴィンだ。
「な、き、気にしないでください。頭を上げてください。俺も辛うじて間に合っただけです」
俺はそう言ってケルヴィンに立ってもらえるように頼む。だがケルヴィンはまだ立ち上がらず
「だが、君が来てくれなかったらシュレンさまは助からなかったと聞いている。我々の不甲斐なさを
シュレンさま一人に背負わせて、さらに君に助けられた。礼を言っても言い足りぬ」
彼は悔しそうに首を垂れる。力が及ばなかったことを後悔しているのだろう。自分も同じような気持ちだったから俺は彼の前に同じように膝をつき
「無力を悔いるのは俺も同じです。もっと早く強くあれればきっともっと役に立てました。でも今回
は後手でした。だから次はお互い頑張りましょう」
そういうと彼は顔あげ
「・・・・重ね重ねすまなかった。そしてありがとう」
そいうと立ち上がり一礼してテントを出て行った。
彼らが出て行った後、俺たちは簡易ベットで寝ているシュレンに近づく。
彼女は寝ているようだった。だが眉間にシワがより額に汗もかいている。呼吸も荒い。痛みで辛いのが見て取れる。
「容体は?」
マーファも苦しそうな彼女を見て眉をしかめている。彼女を見ていたであろう看護の女性が
「あばらがいくつか折れているようです。
背中を強打しているようで背骨にも異常があるかもしれません。あとは肩が外れてたのは直しましたが腕にも骨折が見られます。後は足など下半身も負担が激しかったようで・・・」
完全に満身創痍のようだ。
緊急だったとは言え馬から突き落としたのは不味かったのだろう。
俺は自分のしたことの重大さで彼女をまともに見れなくなった・・・。
「そ・・・そんな顔をするな。キミのせいじゃないのだから」
俺はハッとなってシュレンを見る。
彼女は起きていたようだ。微かに目を開けて俺を見て苦痛でひどい顔なのに口元を軽くゆ歪めて無理やり笑っていた。
「キミの咄嗟の判断で生きながらえました。そんな顔をしなくとも大丈夫ですよ?前を向いて背筋を伸ばしなさい」
シュレンにそう言われて俺はグッと背筋を伸ばした。
彼女は今度は優しく笑い
「そうです。ちゃんとした謝辞は体が良くなったらさせてもらいますね」
彼女はそういうと苦しそうに目を瞑った。
マーファは神官に聞く。
「治癒の祈りは効かないのかい?」
「効いていないわけではないが容態はひどい。時間がかかる。聖女様ならもっと早く効果がでるだろうが・・・」
俺はハッとなる。
ルシアナ、そうか、ルシアナならなんとかできるのか。俺は立ち上がりマーファを見る。
マーファは首を振る。
「たぶん今は式典の最中だろう。早馬は出したがこられても明日になるだろう」
なら、俺が直接行けばっ。
俺はまたストンと座り胡座をかく。そしてルシアナを思う。今、キミの力が必要なんだっ!!
俺は彼女を思い浮かべる。
彼女は・・・
俺はハッとして立ち上がりテントの入り口へ追いすがるように駆け出す。
マーファも神官もびっくりする。
「どうしたんだ?いった・・・」
テントの入り口が跳ね上がり呼吸を荒く乱し、綺麗な正装であったであろう服は泥に塗れ黒い斑点で斑になり、スカート部分は邪魔だったのか太ももをかろうじて隠す程度のところで破り引き裂かれている。綺麗な薄紅色の髪はボサボサに乱れたルシアナが立っていた。
俺は彼女に懇願する。
「ルシアナ!シュレンを頼むっ!!」
ルシアナは俺にコクリと頷き、颯爽とテントの中を進みシュレンの元へと駆けつける。
そしてシュレンの手を取ると優しく微笑み
「シュレン、大丈夫?今、なんとかするね」
そういうと膝をつき目を瞑り祈り始める。
シュレンもまたゆっくり目を開け
「バカ、急がなくても死にはしませんよ」
そう微かに笑った。
テントの中は暖かい光に満たされた。
神官の祈りは自己回復の促進と鎮痛の効果であり肉体再生などではありません。
『女神託宣』のパッシブ能力として祈りの効果が普通の人より数十倍アップするという設定があります。
なんとなく前回軽快だった分重たくなったのが変な感じだなーと感じたので捕捉を。
ついでにシュレンは別に死ぬような怪我でも後遺症が残るような怪我でもございません。
主人公は大げさに反応しすぎてるだけなのですw
まぁ怪我人が痛そうだとつらくなりますよね・・・・
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