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リアルな夢

次は7月11日に投稿します!

 口喧嘩はまだ続く。


「いつもいつも、本当に楓夏(ふうか)姉さんは空気を読まないしっ!」


「いや、空気は読んでるねっ!いつも気をつかってるよ!」


 (こう)も風夏さんもだんだんと言い合いがヒートアップしていく。

 二人の手にも力が入る。


 その間に挟まれる私。


「いだっ、いだだだっ」

 可愛くない悲鳴をあげながらもがいてみる。


 残念ながらこの引きこもりの体では二人を振り解く力もない。


 いつまで言い合うんだろう。

 そんなことを思い始めた時だった。


「いい加減にしてっ」

 声のした方に視線を向けるとそこには(あお)がいた。

 扉の前で神妙な顔つきで立っている。


 いつもとは違って優しい声ではなく、冷たい声が響く。


 私は二人からやっと解放された。


「あ、碧唯(あおい)・・・・・・」

 紅が呟く。


「な、なんか怒って、る?」

 楓夏さんは機嫌を伺うように声を出した。


 碧は眉間に皺を寄せて忌々しそうに私たちを見る。

 いや、もしかしたら私だけに向けられているのかもしれない。

「怒ってない。うるさい。私は紅の部屋の隣なんだよ?」


 紅も楓夏さんも碧の態度に戸惑っている。

 二人の様子を見るに碧はあまり怒らないタイプのようだ。


「ご、ごめん。碧・・・・・・」

 私だけが謝罪を口にするが、その時にはもうすでに碧は踵を返して部屋へと帰っていってしまっていた。


 短い沈黙が流れる。


 それから紅が囁き声で一言。

悠姉(ゆうねえ)、なにしたの?」


 私は苦い顔をするしかなかった。


 できることなら私が知りたい。


 これ以上うるさくならないように一階のリビングへと場所を移す。


 少しギクシャクしながらも、私から話を切り出した。

 二人に碧との間で何があったかなんて言える訳もないから、別の話題を出す。


「あの、ちなみに今日っていつでしたっけ?」


 私の質問に二人は怪訝そうな表情をして少し顔を見合わせた。


 紅がポケットからスマホを取り出し、日付を確認してくれた。

「7月29日で月曜日」


 楓夏さんは疑問を直でぶつけてくる。

「自分のスマホは?見ればいいじゃん」


 プライバシーがあるでしょ!!

 見たいけれど、見れない!なんて、言えない。


「あ、あはは、す、スマホは苦手で」


 苦し紛れの言い訳をしたつもりだったのだが、二人は顔を暗くさせて紅は楓夏さんを軽く肘で小突いた。


「ご、ごめん。その、辛いこととかあったよな。日にちぐらいいつでも聞いてくれていいから」

 楓夏さんはバツの悪そうな顔で謝ってきた。


 ん〜?

 スマホに引きこもる原因があったと思っているのだろうか。

 わからないが、都合がいいのでそういうことにしておこう。


「えと、はい。で、二人って今は、夏休み?中?」


 私の質問に紅は明るく答えた。

「そう。小学校最後の夏休み!」


 対する楓夏さんは嫌そうに顔を顰めながらため息混じりに答える。

「高二の夏休みは楽しくない・・・・・・。」


「こ、高校生っ!?」

 もっと年上だと思ってた。


「ちょっと、それどういう反応?老けてるって言いたいのか?」

 楓夏さんの片眉がピクリと上がる。


 私は両手を前に出して全力で振る。

「い、いや大人びてるな〜っていつも思ってまして」


 私の返答に満足したのか楓夏さんはフンッと鼻を鳴らして腕を組んでみせた。


 紅はそれを白い目で見て、私はやはりただ苦笑いをするしかなかった。


 それからいろいろな話を聞いて夜、私は自室で寝ることになった。

 〜〜〜〜〜〜

 私が目を覚ますと酷いだるさと頭痛を感じた。


 布団を頭まですっぽりと覆って安心しながら眠りについたのは覚えている。

 しばらく、布団から体を起こした状態でぼーっとする。


 周りを見回すといつもみんなでご飯を食べるダイニングテーブルが見えた。

 ここはリビングのようだ。


 私は、なんで、リビングにいるんだろう。


 リビングはオレンジの光で包まれている。


 夕方・・・・・・だろうか?

 頭がすごく痛い。


 モヤがかかったように思考がうまくできない。


 今は何時でいつなのか調べようとスマホを手探りで探そうとしたが、うまく動かなかった。


 これは、夢だ。

 頭の中で鈍痛が酷くなる。

 痛みを感じられるのにこれはリアルではないとすぐに気づくことができた。


 いつもならもっと高いはずの視点が、低くなっている。

 体もすごく小さい。


 何歳だろう?


 紅と一緒に寝た日もリアルな夢を見た。

 行動が制限されているのも一緒だ。


 夢で見た紅のことを少し思い出す。


 でもそれもすぐに曖昧になる。

 何かが強制的に思い出させるのをやめさせようとしているかのようだ。


 ふと視線を別の方向へと向けると私の視界には体育座りをした女の子の後ろ姿が写った。


『碧唯』

 私から出た声はかさかさに掠れていた。


 ストレートの茶色の髪には夕日色に輝く天使の輪が光っている。

 テレビもついていないリビングで碧は何を見ているのだろう。


 私の体は私の意思とは関係なしに動く。

 リビングに敷かれた布団から出て碧に近づいていく。


 碧はただ、体育座りをしていただけではなかった。

 碧の瞳に光はなく、暗い顔で右手を口元へと寄せていた。

 私は何をしているのかよく見るために目を細める。


 ただでさえ短い爪を齧っていた。


『碧唯、だめだよ』

 そっと両手で碧の右手を包んでやめさせようとする。

 私の行動に反抗するように次は左手を口元に寄せた。


 さっきからずっと頭が痛い。


 その左手も掴んで下ろさせた。

 碧は不機嫌そうに私を睨みつけた。


『碧唯、噛むなら私の指にしなよ』


 碧は私を見ようともせずに、私の拘束から逃れようとする。


 碧の右手は噛まれた爪と指の間から血がとくとくと溢れて、それが唾液と混ざり合って輝いている。


 鈍い痛みが頭を押さえつける。


 私は碧の指から滲み出る綺麗な赤色に口を寄せる。


 ・

 ・

 ・


「はっ!!」

 私はそのシーンを最後に現実で目を覚ました。


 ガバッと起き上がる。


 兄弟姉妹でも流石にそれはしないでしょ!?

 口にしたのか!?

 いや、してない!?

 さ、最後まで見てないからわからない・・・・・・。

 てか何、あの夢!


 起き抜けの頭でもインパクトの強すぎる夢に思考は止まらない。


「はーっ!ほんとうに、ここに来てから休まる暇がないよ・・・・・・」

 そう呟いたのと同時だった。


「悠お姉ちゃん」


 碧の声が聞こえた。

読んでいただきありがとうございます!

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