寝ても覚めても休まらない
こ、今回も遅れてしまいました!
温かい目で見守ってください・・・・・・。
「ゆ・・・・・・」
微かに声が聞こえてくる。
「ゆう・・・・・・」
少し圧があるけど、好きな声だ。
「ばかゆうっ!!」
聞こえてくる罵倒に私は重い瞼を開けた。
私の胸元で紅がもがいていた。
「ちょ、ちょっといい加減、は、なし!むぐっ」
夢の中での出来事も相まって、紅のことを思いっきり抱きしめた。
「はっ、ちょ、意味わか、っないっ!」
じたばたする紅を満足するまで抱きしめる。
最初は離れようとあがいていたが、段々と私にされるがままになった。
腕の力を緩める。
紅の方を見ると顔が真っ赤になっていた。
ちょっと力強すぎたかな?
紅の顔を見ながら、私はかすれた声で言った。
「また、その顔だ」
紅は困惑した表情を見せる。
「ど、どんな顔よ?」
紅も起きたばかりの声を出した。
「しかめっ面・・・・・・」
私がそう言うと余計険しい顔になった。
「もともとこういう顔なんだし。ていうかもう、離して・・・・・・」
紅は夢の中で見た時と同じ表情をして、私の腕の中から抜け出そうとする。
「もとからじゃないよ。私のせいだよ・・・・・・。寂しい思いをさせてごめんね」
紅の頭を撫でながら私は腕の力は緩めない。
「は!?あ、あんたっ、どうしちゃったの!?」
紅は私に抱かれたままあわあわしている。
なんてそんなやり取りをしていたら突然、私たち以外の声が聞こえてきた。
「あ~、うちの妹の新しい扉を開くのは控えていただけますかぁ~?」
紅も私も突然聞こえてきた声に驚いてばっとお互いに離れて、すぐさま起き上がった。
ベッドの前には千冬さんが立っていた。
後ろからもささやき声が聞こえてくる。
扉の隙間から頭をそっと出しているのは碧と楓夏さんだ。
碧は目を両手で覆って指の隙間からチラ見している。
「悠お姉ちゃん、破廉恥だよ!!」
楓夏さんはジト目で私を見てくる。
「あついハグだなぁ」
悪いことをしたわけではないが、思わず私は正座した。
「~~~っ!!碧唯っ!あんた、チクったでしょ!!」
私の隣にいたはずの紅はすごい剣幕でベッドから立ち上がり、碧を睨んでいる。
対して、碧は涼しい顔をして見せた。
「チクるって・・・・・・。紅にとって悠お姉ちゃんと寝ることは何か後ろめたいことなのかな?」
「なっ!?」
紅の顔は怒りで真っ赤になっている。
「まあまあまあ、一階で早く顔を洗って歯を磨いてきてねぇ?」
そのまま突っかかっていきそうな紅を止めたのは、千冬さんだった。
千冬さんはキツネみたいな開いているのかわからない目をして、笑いながらも命令をした。
有無を言わせない空気がある。
口元は笑っているが、目は絶対に笑っていないだろう。
紅もそれを見て、さっきの勢いをなくし大人しく部屋から出ていった。
私も紅のベッドから抜け出した。
洗面所に向かう紅の後を追っていこうとする私を千冬さんは妨げた。
「悠ちゃんは二階で洗顔と歯磨きね~?」
「へぁ・・・・・・」
私は絶望の表情を浮かべた。
私の様子を見ていた碧に助けを求める視線を向けたが、目を閉じて首を横に振るだけだった。
ダメもとで楓夏さんにも視線を送ろうとしたが、もうすでにいなかった。
最後にいるのは千冬さんだけになる。
私は足元からゆーっくりと上へ視線をずらしていく。
お願い、目を開けていませんように!
絶対に!
頼む!!
残念なことに私の願いは空しく散った。
千冬さんは目を開いていた。
私と似たような瞳がそこにある。
「っ!!」
私は息を吸った。
「さすがに堪えるんだけどなぁ。そんなに私のこと好きじゃないのぉ?」
開かれた目が細められる。
何を考えているのかわからない目で私を見ながら、千冬さんは片手で私の頭をなでなでした。
「ちゃんと息吸って~、吐いて~。できる?」
実際はあまりうまく呼吸はできていなかったが、私は頭をこくこくと上下に動かした。
しばらく沈黙が続く。
ヒュッ、ヒュ―。
私の喉から危うい呼吸音が響くのが聞こえる。
「いやいや~、う~ん、それはできてないからぁ」
千冬さんは眉毛をハの字にさせて私の頭にあった手を下ろしてから、私の左手を取った。
一緒に連れられてリビングのソファに座る。
千冬さんは私の横に座って背中に手を回し、さすった。
「はい、しんこきゅ~。すってぇ~」
千冬さんに言われるがままに息を吸う。
「はいてぇ~」
私は息を吐きだした。
「私の何が苦手~?」
千冬さんは私に質問をしてきた。
その間も私の背中をさすり続けている。
「呼吸は続けたままね~。すってぇ、はいてぇ」
私は千冬さんに促されるままに呼吸を続けながら、考える。
正直に言ってもいいのかな?
目が苦手?
何考えているかわからない?
なんて伝えるべきか決めあぐねていると千冬さんはウソ泣きをしだした。
「え~ん、え~ん。ちゃんと言葉にしてくれないと改善のしようがないよ~」
私はしどろもどろに言葉を紡いだ。
「え、っと、目が苦手というか、怖い?私と同じ目なんだけど、冷たさを感じるというか・・・・・・。で、でも私は平気なんですけど、なんか、体が平気じゃないっていうか・・・・・・。」
私が沈黙して、しばらくたってから千冬さんは笑い出した。
「ふふふっ!そっかぁ!悠ちゃんと私はおんなじ目かぁ~。体が平気じゃないのね!わかったよ~」
理解を示してくれた千冬さんに私はほっと胸をなでおろした。
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
これで、少しは考えてもらえるのかな。
なんて、思って千冬さんの方を見ると目を開いたままだった。
視線がぶつかり合った。
私は体を固めた。
千冬さんは意地悪そうに口角を上げ、私の目を見ながら言った。
「じゃあ~、これから慣れていかないとねぇ?」
千冬さんは顔を近づけてきた。
そんな千冬さんの圧に耐え切れず、私の体は逃げ出すことを選んだ。
「か、顔と歯磨きっ!!するんでっ!!」
それだけ言い残して、私は速足で洗面所へと逃げ込んだ。
後ろからは千冬さんの笑い声が聞こえる。
「ふふっ!はぁ~い。終わったら一階においでよ~」
洗面所に逃げ込んだ私はまず洗顔をする。
銀色の輝きを放っている蛇口は一点の曇りもない。
捻ると最初は冷たい水が出てくる。
千冬さんは紬さんに似ているけれどなんだか意地悪かもしれないな。
距離感を考えなきゃ。
考え事をしているうちに段々と水温が上がってきた。
温かくなった水を手ですくい、顔に浴びせかけた。
顔を洗ってから次は歯磨きをして、最後に自分の、ではないが、顔を鏡で見た。
ほん~の少しだけだが目の下のクマが良くなってきている、気がする。
「はぁ~」
思わず出たため息に気分まで落ち込んだが、私はみんなが待つ一階へと向かった。
次は19日に投稿する予定です!




