表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

夢の中ぐらい自由にさせてほしい

ブックマークに、いいねもしていただき、とっても励みになっています!!

ありがとうございます!!


楽しんで読んでもらえたら幸いです!

 温かなお風呂に身も心もすっきりとして、髪を乾かしてリビングへ向かおうと私は扉を開けた。

 見えてきたのはソファに座る(あお)と立って肩を怒らせている(こう)の後ろ姿だった。 


「ゆ、悠姉(ゆうねえ)は私と寝るから!!」

 紅の大きな声がリビングに響く。


 えっ?なんて?

「へ?」

 私は思わず情けない声を出した。


「って、約束したよね?悠姉?」


 い、いやぁ~、そんな約束はしてないんですけれども・・・・・・。

 ひえっ!


 紅にすごく睨まれているので、すぐさま返事をした。

「は、はい!」


 そう答えると紅まで驚いたような顔をしているような気がする。


 かと思えば、次は碧が大きな声を出した。

「は、は~ぁ!?い、いつそんな約束したの!!そういうのはよくないと思うんですけど!?」


 してないよ!そんな約束!


 紅は紅で「先約なので」なんて言っている。

 今からでもそんな約束はしていないと言っていいのか?


 なんて考えていたら、碧が可愛らしい笑顔で私に顔を向けた。

「じゃあ、明日はわたしと寝てね!」

「へ、あの、ぇ・・・・・・。は、はい。」

 あまりの急展開に頭が追いついていかないが、この子たちは私と寝たいらしい。


「シャワーで済ませるから!先に二階に行ってあたしの部屋にいてよ!」

 紅はしかめっ面しながら私に大きな声で指示を出してきた。


 それに賛成できない碧から抗議の声が上がった。

「え~、なにそれ!紅ちゃん、悠お姉ちゃんのこと好きすぎじゃん・・・・・・。紅ちゃんが戻るまで碧唯と一緒にいたいよね?悠おね~ちゃん!」


 碧!?

 それは何と答えても地雷を踏みぬきかねない質問だよ!?

 あわわわ、こ、紅の顔がすごいことに・・・・・・。


「歯磨きして、あたしの部屋にいてよ!!」

 ものすごい圧で紅は私に言い放った。


 私は素直に返事をする。

「は、はい。待ってます・・・・・・」


 紅に二階へと行く姿を見られながら私は一階のリビングを後にした。


 歯磨きも済ませ、お手洗いにもちゃんと行っておく。

 そうして、寝る前にすべきことをしてから紅の部屋へとお邪魔した。

「お、お邪魔しま~す・・・・・・」

 一応姉妹とはいえ、中身は別人なので申し訳なく思いながら紅の部屋に入った。


 でもそんな気持ちもすぐに消えた。

「うわぁ・・・・・・」

 私は思わず感嘆の声を漏らした。


 目に入ってきたのは赤色で統一された奇麗な部屋だった。

 壁紙は白で、床はフローリング。

 インテリアが赤いもので統一されている。

 赤色のイス。

 カーテンも赤。

 ベッドのシーツも赤色。

 壁掛け時計も赤色。


 真っ赤かでうるさいわけではない。

 程よく赤色が取り入れられているのだ。


 私は興奮のあまりあたりをウロチョロして、紅の部屋を一人絶賛する。

「こ、こんな部屋見たことない!なんだか、もう、すごい!大人って感じ!」


 語彙力がないため、すごいしか口から出ないが本当に素敵な部屋だ。


「うわぁ、本の背表紙も赤色だ!ふふっ、本当に赤色が好きなんだなぁ・・・・・・」

 紅の部屋の本棚も赤色、橙色といった暖色系の本が多い。


 私は紅の部屋の本棚の前に座り込んだ。

「いやぁ、本当にすごくきれ~。私の部屋と交換してほしぃ・・・・・・」


 あれ?


 私は本棚に一冊だけ青色の背表紙を見つけた。

 何とはなしに手を伸ばして、それを引き抜いた。


 本に見えたが、日記帳のようだ。


 タイトルも特にない。

 パラッと1ページだけ捲ってみた。

 何も書いていない。


「なんだ、ただの新しい日記帳か」


 まとめてパラパラとめくってみた。

 途中から文字が書かれていた。


 拙く、小さい子が書いたような字だ。

 見てはいけないなんて、思う暇もなかった。

 もう目に入ってしまったのだから。


 『ゆうねぇが、もっとこうのことみてくれますように』


「・・・・・・」


 また、数ページめくると幾分か成長したようで、整った文字と漢字が使われていた。

 『ゆう姉がほめてくれた!がんばってよかった!』


 最後の最後のページ。


 紅らしい勢いのある字。

 でも、殴り書きで文字が何かの水分でにじんで、紙も少し()れている。

 『ゆう姉が、部屋から出てこなくなった。会いたい』


 これ以降は何も書かれていない。

 私は日記帳を閉じて元にあったところに戻した。


 ――紅・・・・・・。


 ガチャリ

「いや、なんでよ」


 感慨に耽る間もなく扉が開いたことと、紅が出した声に私は驚いた。

 そして、変な声も出た。

「いぇあぁぁっ!!」


 私はすぐに立ち上がった。


 無実です!!

 何も見てない!

 許してください!


 勝手に日記帳を見たことへの罪悪感が今更沸き上がってきた。

 私は目をぎゅっと閉じて、紅の言葉を待った。


「さすがに部屋で正座で待っているとは思わなかった」


 日記帳を見たことに対する言及はなかったが、緊張のあまり身を強張らせながら紅に謝った。

「ご、ごめん」


 紅からの返事がなく、不安な私は紅に歩み寄って顔を覗き込んだ。

「こ、紅?」


 そんな私に紅は素っ気ない態度で顔を背け、紅はベッドに向かっていく。

「い、いや何でもないし」


 それは無理があるだろう。

 私は心の中で突っ込みを入れる。


 紅の耳は真っ赤に色づいている。

 黙って紅がベッドに腰かける姿を見ていたら、隣の空いた方をトントンと叩いて、私を呼ぶ動作をした。


「わ、えと、お、お邪魔しま~す・・・・・・」

 私はゆっくりと紅のベッドに向かいすぐに横になった。


 横になる私に優しく上から布団をかけて紅も横になった。

 私は紅から目を離せないでいた。

 耳も赤いままで、頬も赤くなっている。


 でもそれはすぐに見えなくなった。

 紅が電気をリモコンで消したからだ。

 電気が消えて、目の前が何も見えなくなる。


 暗闇の中で紅の声が聞こえた。

「悠姉って誰のベッドでも寝られるの?」 


 紅は緊張しているんだ。

 やっとお姉ちゃんと会えたんだもんね。


 紅からの質問に私は紅の緊張を少しでもほぐしたくて、場を和ますために熱く語ってみた。

「いや、私の部屋のベッドに比べれば、紬さんのベッドも紅のベッドも天国みたいなところだよ!」


 これは本当に思っている。

 あんな部屋に寝るのは誰にとってもよくないと私は思う。


 しかし紅から返事はなかった。

「・・・・・・」

 私は焦って紅の方に体の向きを変えた。

「こ、紅?私なんか変なこと言っちゃった?」


 紅は何も答えずに体を私の方に向けて、少し近づいた。


「わ、私もぎゅってしてほしい・・・・・・。楓夏姉さんにあんなに抱き着いちゃってさ。あ、碧唯なんて、今朝も悠姉に抱き着いてたし。お母さんとも一緒に寝たんでしょ?みんな、ずるいよ。私もしてほしい・・・・・・」


 そう言って、私に抱き着いた。


「え、え・・・・・・」

 私は動くことができなかった。


 私は紅の言う悠姉ではないし、私にとっても紅は・・・・・・。

 何だろう。

 私にとって、紅は・・・・・・まだ、他人だろうか?


 そんな私を紅は現実に連れ戻した。

「明日は碧唯(あおい)と寝るんでしょ?いっつも碧唯ばっかり。引きこもり。オタク。ガリガリ。弱虫。なんで引きこもったの?何も教えてくれないでっ」


 よくわからないことが起きて困惑してはいるけれど、今は紅を安心させてあげよう。


 私は紅のウェーブがかかった長い髪を指で梳いて、頭を撫でて抱きしめ返す。

「それは、また、凄い悪口だね?」


 紅の可愛い悪口に私はつい笑ってしまいそうになった。

 私の体温と紅の体温がゆっくりと混ざって、段々と眠気を感じてきた。


 紅はもう眠ってしまったようだ。

 私はより一層力を入れて抱きしめた。


 ~~~~~~


 気が付くと私はタンポポが咲き乱れる公園にいた。

『もう帰るよ~。ほら~。早く~!!』


 私が声を出そうとしているわけではない。

 私の意思とは関係なく、体は動き、声を発している。


 私のもとに二人の小さな女の子が走ってやってきた。

 ウェーブのかかった髪を横に結んだ子と、ストレートの髪を肩まで伸ばした子だ。


 紅と、碧?

 ゆめ、かな?


『あおちゃんとてぇつなご?』

 小さな碧は手を私の左手に伸ばした。

 また、私の意思とは関係なく体は動いて碧の手を握った。


『今日はね、お母さんがホットケーキ作ってくれるんだよぉ!』

『そうなの!?じゃぁ、はやくかえんなきゃだめだね!』

 私の言葉に碧は無邪気に返事を返す。


 でも、紅は何も言わない。

 後ろからついて歩いている足音だけが聞こえてくる。


 私は後ろを振り返ることもできない。

 何度も試そうとするが、一向に体は動かない。


 この体は私のものではないから無理なんだろうか・・・・・・。

 ・・・・・・。 

 いや、今この体にいるのは私だぞ!!

 私が動かせないのはおかしいだろ!

 夢だろうが何だろうが、紅をみさせろぉおおおおお!!


 ぐるんと景色が変わって、私は少し目を回した。

 でもやっとこの体は後ろを振り向いてくれたようだ。


 私は紅の顔を見た。

 紅は頬を少し膨らませていつものしかめっ面をしていた。


 こんな小さな時からこの表情をしていたんだ!!

 私はそれを見てつい嬉しくなった。


『こう、す~っごくかわいいねぇ!』

 そう言って私は手を紅の頬に添えて、むにむにした。


 この言葉も行動も今は私の意思ではない。

 私ができたのは後ろを振り向くことだけだった。


『ゆぅおね~ちゃん、あおちゃんは?』

 しばらくしてから碧の声が聞こえた。


 私の視線は碧に移り変わり紅の頬から手を離そうとした。

『もちろん!あおも・・・・・・』


 私の手は紅によってしっかりと握りしめられていて、碧に手を伸ばすことができなかった。

 碧の顔は段々と泣き顔に変わっていった。


『あららら・・・・・・』

 私は驚いて、次に困った顔をしてごめんねと紅に言いながら手を離した。


 これも私がしたい行動ではない。

 私は一生懸命に何とか別の行動をとろうとした。

 でもできなかった。


 紅はさみしそうな顔をしている。


 二人同時に抱きしめてあげるとかできないんですか!?

 どちらか一方しか選べないの!?

 どっちも!!抱きしめろよっ!!

 恋愛ゲームかよっ!!


 そんな私の叫びなんぞ届くこともなく私の意志とは無関係に、私は碧を抱きしめた。


 ~~~~~~

次回は5月16日に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ