38話 命の扱い
鳥は自由に空を飛ぶ。それがあたりまえ。だがこの鳥は自由を許されているようでそうではない。大きいようで小さなカゴの中。首には鎖で繋がれていてその周りは逃げないように大きな手が覆う。
そんな鳥を狙う者が居る。より大きな生物、より小さな病原体、寿命という時間、ありとあらゆるものが鳥を脅かす。カゴの中はそういう意味では安全でありそして逃げ場の無い牢獄。
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ペ「始祖光とはなにか……知っているとは思いますが過去の天使たちの知恵や経験が集まったものです。魂を失った身体に再び魂を結び付けもう一度の生を与えるほどの魔力の塊です」
それがうらら。生き返って人間から天使になったただ1人の異例者。そもそもなぜ人間だったのか?例えば死んでしまった天使ではなく人間であることに意味はあるのか。
ペ「しかし命の扱いなど世の理に反した行いです。そう簡単に行えるはずもなく、始祖光を与えようとしても成功はしませんでした……」
ん?成功しなかった?
ゆ「ちょっと待て、成功しなかった?それだと……ペシュラエル様は、何度か始祖光を与えようとしていて失敗もしていた、ということ、ですか?」
俺は思わず聞いていく。導くのが天使の役目であって命の扱いを勝手にしていいはずはない。だが……
ペ「以前から目的のために始祖光の選別をしていました。ですがその通り何度か上手くいかずその魂を存在ごと消し去ってしまいました。その事に私は自分に重い罪悪感を感じています」
存在ごと消し去った。つまり死後のことなど関係なくただただ消えていくだけになる、か。呆れて怒れも出来なくなった。何度も言うが天使が命を弄ぶなんてな。
ペ「そんな中彼女が、天野うららさんが現れました。彼女は人の生において不幸を受けこちらにやって来ました。そして同じように始祖光を与えてみようとしたところ……」
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力が一つに集まっていく。しかし今までとは何かが違う。魔力を吸収していて、それでも力に潰されないような器。そんな器から聞こえる。
う『まだ……死にたくなんてない。……いやだよ……』
死にたくない、その言葉は何度も何度も聞いた。そして、
う『あの猫は大丈夫だったのかなぁ……あの車の人も無事なのかな……』
それを聞いて正直驚いた。まさか他のことの心配までするとは。普通人間はパニックになったり窮地に立たされると自分自身のことしか考えない生き物のはず。なのにこの子は……
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ペ「彼女は自分を不幸にした他人の安否でさえも心配する包容の大きさがありました。彼女の性格だったでしょうがその包容力の大きさが成功したきっかけだと思います。それに彼女は始祖光の馴染みも良かったのです」
包容力?まあ確かにうららは嫌なことされても全然怒らないしそれを受け入れるのに強いとは思っていたが。受け入れるのは物理的に無理もあると思うのだが?
ペ「何より驚いたのが馴染みが良いと言いましたが彼女には元々天使の血が少しばかり流れていたのです」
ゆ、あ「……は?」「えっ!?」
天使の血が!?でも人間なんだろ?どういうことだ?ますます訳がわからねぇ。
ペ「どうして彼女に血が流れていたのかは分かりませんがおかげさまで始祖光は彼女の元に入り再び生を授かりました」
驚くことばかりだが血に関してあとでうららに徹底的に聞いてやろう。ペシュラエル様は続ける。
ペ「そして始祖光を与えた目的ですが……」
そうだ、それが聞きたかった。
ペ「堕天の王と呼ばれし悪魔の頂点であり元大天使だった、ルシファーの対となる存在に仕立てあげ世界の均衡を保つためです」
っっ?!ルシファー、俺でも聞いたこともあるし何より有名な話もある。神への反逆を理由に大天使ミカエルと争いそして敗れ堕天使として地に君臨したというあれか。そんなルシファーの対になる?あのうららが?
ゆ「対?」
ペ「そうです。近頃悪魔たちの勢いが増して来ました。それも昔のように……ですから天界もそれ相応の力を示さなくてはならないのです。力の均衡が崩れては世界が崩壊してしまいます」
そんなこと分かってる。力の対にするためにいわゆる命の選別を行ってたというのか?!そして……
ゆ「ば……バカかよ……」
俺はつい口走ってしまった。
あ「っっ?!ゆ、」
ソ「ダリウス!あなた…」
ペ「……」
他人より自分の気持ちが勝ってしまった。俺は言いたいことを言う。
ゆ「命を弄んだだけでなくそれを利用して悪魔に示すだと?バカかよ、まじで。そんなことのためにうららを巻き込むなよ」
うららは戦わなくていいって思ってた。ただ単純によく分からない始祖光の面倒を見てこいと言われて人間界にやって来て天使になった1人の少女を見ているだけだとおもっていた。
あいつを見ていると、あいつと一緒に居ると、そして傷ついて、そんな姿を見ているともう見たくないと思ってしまっている自分がいる。
ゆ「っっ、わ、分かってる。でも……俺は、少なくともそんな重いものを背負わすなって……」
俺より上の存在の奴の考えていることなど俺には分からない。そしてそれが正しいといえばそうなる。俺は矛盾していることを言っているだけにすぎない。だって上の存在が正しいから。
ペ「……分かっています。あなたの言いたいことも……私は苦しい選択をしていることも…………ですがその選択しかない他、彼女が自ら選んだのです。彼女も分かっているはずです」
知ってる。時々あいつが寂しそうな顔をするのも。力を使いそれに自分自身で驚いてそれが現実なのだと分かっていくような顔をするのも。俺は知ってる。
まるでカゴの中で首を鎖で繋がれた自由の無い鳥だ。
運命を決められそれしか道は無く苦しい人生でしかない。なんて可哀想な奴だ。あんまりだ。バカバカしい!
ゆ「決めた。俺が強くなる。始祖光なんて必要無くなるくらいまで俺が強くなってやる!」
ペ「始祖光の代わりなんてなれません……」
俺はそのまま部屋を出た。代わりなんてどうでもいい。うららが戦わなくていいように他の強い奴が出てくれば良いだけだ。
あ「ちょ、ちょっとゆう!」
谷村が俺の後を追って部屋を出た。
ソ「ペシュラエル様……」
ペ「構いません。ソランジュ、あなたは戻りなさい」
ソ「……はい」
そして部屋に1人になったペシュラエル様は独り、
ペ「本当に、これで良かったのでしょうか……ミカエル様……」
世界が崩壊しては元も個もない。互いに思うところもあるが個人としてはそれがそれぞれ正しい道だと信じて……
◆◆◆◆◆
俺は谷村とゲートを通り人間界に戻る。
あ「ちょっとゆう!ペシュラエル様相手に何舐めた口聞いてるのよ!」
ゆ「うるせえな。ちょっとカチンと来ただけだ」
あ「なにがカチン来たよ!どんなっても知らないわよ」
じゃあ放っておけよ。谷村はプンプンして帰っていった。まあ怒られるのも当然か。上司に舐めた口聞いたんだ。悪い奴だな。
だがそうなるくらい、俺はうららの心配をしていた。
言い回しし過ぎて変な言葉になってたら申し訳ないです。とりあえず話をまとめた感じになるのかな?力の意味と目的を書いた感じです。(@^^)/~~~では




