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第三十三章:三奈木 凛子 その三

挿絵(By みてみん)


「春日原!」


「どうしたんっすか三奈木さん?」


「このカードはなんでも吸い込める!」


「確かにそうっすね。」


「どんな大きさのものでも我々が一つと認識すれば飲み込んでしまえるのだ!!」


「……そうっすね?」


「ならこの地球だって飲み込めるのではないか?」


「それはまたビックスケールっすね。」


「もしそんなやつがいて出来るのだとしたらこの世界は既に滅んでいる訳だ。」


「確かにそうっすね。」


「でも世界を我が手にせんとした時このカードはそれが出来るかもしれない、それと同時に滅びるわけだがな。」


「どうゆうことっすか?」


「俺はそんなものより夢のあるものを入れていたいのだ!」


「……どんなものっすか?」


 俺はあの時、迷いなく答えた。


「思い出だ!」




***




 あの男の言葉を聞いて私はあいつらに会う前のあの日を思い出した。


「十枚すべてのカードが消える、もしくは一人が十枚すべてのカードを手にした時点で今回の演目は終了です。」


 あの男はカードは破壊できないしカードでカードをしまうことが出来ないと言った。

 なのにカードを全て消せと言った。

 この中にヤバイやつがいるのはわかる。

 だがカードを全て消す方法があるのだとしたらそれはなんだ?

 このカードは不思議な力のようで規則性がある。

 あの男が消せるというのなら何かその方法があるのだ。

 何故自分で配ったカードを自分で消せという?

 あの男の目的はそこにあるのではないのか?




***




 俺が小林の介抱をしながら考えていると前で発砲音がする。

 笑顔の男は夏目が座っていた箱を出し銃を構える男と対峙する。

 みんながこの部屋をでてからこいつらの話を聞いているがどうにもあの笑顔の男が私達の追っていたハンター、つまりは殺人鬼らしい。

 あの銃を持つ男も狩人の目をしているが笑顔の男は子供のように笑っている。


 あの気味の悪い箱、人型の血、骨抜きという言葉、全てが繋がった。


 あの笑顔の男こそが俺達の敵、アミュレットを襲った犯人、俺達が探していたハンターだった!


 だがヤツは今横槍を喰らって取り乱している。正義の味方を名乗る男が春日原と共に現れた。そのヒーローは被っていたヘルメットをヤツに投げつけ、それがヤツの腹部に直撃した。

 その衝撃でヤツはカードを一枚枚落とす。

 ヤツがよろけているうちに正義の味方は追撃の構えをとる。




「俺の拳は常人の二倍の威力!!」


「風見と筑波、お前らの分だ!!」




 よろけているヤツに鋭いストレートパンチが決まる。

 そのまま吹っ飛ばされたヤツは壁側にへたりこむ。

 だかヤツはまだカードを一枚握りしめている。



「……くそ!ヒーローが現れるなんて聞いてないよ!」



 なぐられた割に饒舌だ。


「僕は僕のしたいこと、出来ることをしてただけなのに!邪魔しやがって!」


 笑いながら怒るヤツは異様に不気味だった。


「……面白くないけど奥の手だ。」


 そういってヤツは船首のデッキ側に駆け出す。




「くそ!まだ動けるのか!」




 ヒーローがそれを追い掛ける。

 ヤツが窓にカードを当てて窓の一部を切り取り外へ飛び出す。




「この部屋ごと君らを消させてもらう!」




 ヤツが切り取った窓をとりだし投げ捨てこの部屋をカードに取り込もうとする。

 その時バンっと発砲音がする。

 ヤツの手にそれが直撃しやつのカードはデッキの真ん中に飛ばされる。

 振り向くと春日原の渡したハンカチで目を拭いた赤い狩人がいた。


「これで二枚だ!!」


「……っつう、僕の神の力が!」


 ヤツは被弾して出血した手を抑えながら落ちたカードを拾いにデッキの中央へ向かう。



 ……条件は整った。



 俺はヤツを追って駆け出す。

 駆け出しているとみんなと過ごした日々を思い出す。

 カードをきっかけに出会い、共に謎を追ってきた。

 泣いて笑って一緒に過ごした。

 みんなとの思い出を。

 

……なんだ、こんなカードなくても持ち歩けるじゃないか。


 俺は外に出る。


 潮風と月がやつを照らす。

 あの日から俺はカードを使っていない。

 みんなと通じ会えたあの日から。

 俺のカードはあの日からずっと同じだ。


 あの日を切り取った燃え盛る炎、キャンプファイヤーの炎!!


 一人で暴れるヤツにきついお灸を据えさせてもらうぜ!!




「喰らいな!俺達のとびきりでかい思い出を!!」




 俺がカードをだすとやつの上空を灼熱の業火が埋める。


 甲板を覆うほどに大きな炎だ!!


 そしてそれがヤツに降り注ぐ。




「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」




「熱い熱い熱い熱い熱いぃ!!」




 悲鳴をあげるヤツであったがカードを手にすると炎が消える。


 だが効果は充分だ、やつは大火傷でぼろぼろ、カードも炎を入れてしまった。


 だから次の攻撃は防げない。


 俺の後ろからまたしてもバンっと発砲音がする。


 赤い狩人が再びヤツからカードを奪う。


「くっそ!!何でだよ!!何でうまくいかない!!」


「僕は神の力を沢山集めたのに!!なんで集めてないやつらにこんなに苦しめられるんだ!!」


 ヤツはまたカードを拾いにいく。




 しかしそのカードは別の者が手にする。


 神谷だ。


「……炎が見えたからお前だと思ったぜ。」


「当然だ、俺を誰だと思ってやがる!」


 外廊下から駆け付けた神谷にやつは向かってくる。




「お前ぇ!!僕の力を返せ!!」




「さすがに観念してもらうぞ!」


 神谷に襲いかかろうとするやつをヒーローが羽交い締めで押さえる。




「放せぇ!放せぇ!!」




 ヒーローがヤツを取り押さえてると気絶した少年を担いだ手錠の女、小林に肩をかす春日原、何かを抱いた委員長と肩を並べた戸畑先生がやってくる。


 ここに集まった全員が再び集まったのだ!




「どけ、ヒーロー先輩!!そいつは俺が仕留める!!」




 赤い狩人が前に進み出る。



「駄目だ、こいつをこのまま殺してはお前も同じになるぞ筑波!!」



 ヤツを抑えながらそれを制止するヒーロー。

 そこに神谷が割って入る。


「俺がこいつをカードにいれる。」


 神谷は胸ポケットから自分のカードを取りだし構える。


「……なんだって?」


 ヤツはなす術もない状況に遂に笑顔を崩す。


「……僕をカードにいれる?」


「……アハハ、ハッハハー!!」


 笑顔は崩れているのに笑い声をあげる。



「何がおかしい!?」



 ヒーローが更に強く押さえる。


「君達はカードの枚数を数えたかな?」


「アイツ!!やはりまだ一枚カードを持ってやがる!!」


 その言葉に反応した赤い狩人が叫ぶ。


「どこに隠している!」


 ヒーローが強く押さえてもやつの笑いは止まらない。


「大丈夫!取り出せないよ!何故なら僕は神の力を飲み込んでいるからね!!」




 ……飲み込んだ?




「僕は考えてたんだ!こうやって追い詰められた時の事も!」


「カードに入れられて何も感じれなくなったら生きているのか死んだいるのかわからないじゃん!」


「だからそんな時が来る前に!」


「カードに僕が入れられる前に!」




「僕が世界をカードにいれるのさ!!」




 ヤツは大きく口を開けた。




「世界のすべてを僕のカードに!!」




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