◆第三十二章:筑波 善財 その三
いずれカードの奪い合いになるだろうと思っていたがこんな形になるとはな。
本当はあいつの正体を暴いて不意討ちで殺る予定だったがこうなってしまっては仕方ない。
寧ろ結果的にはいい兆候だ、そう考えろ善財。
俺はここに来る際に風見とヘルメット先輩、それと宇多田にそれぞれ大歳先輩お手製の小型盗聴器を持たせていた。
そして俺のヘッドフォンはスマホに繋がっていて今まで奴らの会話を聞いていた。
風見はそこで倒れて使い物にならないがヘルメット先輩、宇多田の話を聞く限り部屋を出ていった奴らはあいつじゃない。宇多田にも無理矢理持たせてて正解だった。
そうなると確実にこの部屋にいる誰かがあいつだ!
今ホールに残っているのは俺と倒れた風見、小林とかいう男、あと女と男が一人ずつだ。
そこで倒れてる二人は問題外で後は二人。
俺はここまで来たぞ!
あいつを見つける一歩手前だ!!
小林とかいう男を見ている女か特になにもしてないで笑っているあの男か、もうここまで来たらどちらかだ!
答えははっきりしてる!!
アイツが仲間をやられて助けにいくような奴ではない!!
寧ろカードを集める上で仲間なんか邪魔にしかならねぇ。
答えはあの男だ!!
問題はやつの手札だ、向こうの会話だけじゃ向こうの連中が何枚カードを持っているかわからねぇ。
だが単純に考えて石田、夏目を殺しているこの男は三枚カードを持っていると考えるべきだ!!
本当はそこの女とで潰しあって欲しいんだがあの女も様子を伺っている。
最終的に全員のカードを奪うことを考えると早くあいつを殺ってカードを奪った方がいい!!
それなら先手必勝だ!!
俺はやつの背後にまわって懐から準空気銃をとりだし右手でやつに打ち出す。
「なーんか怖い人がいるね!」
距離があったせいかやつは俺に気付く。
すると黒いカードを取り出す。
やはりあいつだ、アイツが殺人鬼だ!!
俺が玉をうつと同時に黒い箱が現れる。写真で夏目が座っていた黒い箱だ。
「あの箱は!?」
あの女も気付いたみたいだ。これならまず注目が集まるのは俺でなくアイツだ!!
「突然銃でうってくるなんておっかないやつもいたもんだね!」
弾丸は箱に突き刺さり小さな穴が出来る。
「……やっぱりお前が殺人鬼か。」
すると箱に空いた穴からドロッと汚れた液体が出てくる。
血のような、オイルのような、肉片のようなドロリとした何かだ。
「……なんなんだよその箱は?」
「これかい?これは僕の必殺技ブラックボックス!!」
……思ってた通りイカれた野郎みたいだぜ。
「この箱はね!ただの段ボールだったんだ!!」
「……ならその中身はなんだよ?」
「いいところに気がついたね!」
「この箱は元々ただの段ボールにいっぱい段ボールを積めて作ったものなんだ!」
「ダンボールに住んでたホームレスのおじさんで遊んでておじさんの箱詰めを作ろうとしてたらカードの上書き能力を発見してさ、それで僕はこれを作ることにしたんだ!!」
嬉々とした顔でやつは語る。
「段ボールってさ!隙間があいてるでしょー!だからパンパンに積めても中身がすかすかでさ!」
「いろんなものを消してるうちに消したものの破片が段ボールの中に貯まっていったんだ!!」
「カードの中は時間が進まないから僕がばらしてきたものが新鮮なまま蓄積されて僕の努力の結晶となったのさ!!」
そういうとやつはその箱をカードにしまう。
「みんなも隙間があったらいれてあげるね!」
やつは笑いながら俺から離れ小林とかいう男と女の方に向かう。
「夏見ちゃんに風見君は殺さないでって言われてたから最初にばらすか最後にばらすか悩んでたけど最後にしよーと!」
弱いやつから狙う。これがやつのやり方みたいだ。
……つまんねぇなあ、俺はこんなやつを追うのに必死なっていたのか?
胸糞悪いぜ!
負傷者や女がいる方には撃ってこないとでも思ってんのか?この俺が?
俺はお前を狩りとるハンターだぜ?
誰がいようと必ず仕留める!!
「お前は必ず俺が殺す!!」
俺がカードを得るためになぁ!!
銃で撃てるだけ撃つ、やつもそれに感ずき回避する。流れ弾が小林とかいう男をかばって女にあたる。
「……っう、……こいつら。」
糞が、獲物はお前らじゃないんだ。
「うっとおしいね、君も!」
ようやく俺に向いてやつが来る。
俺も距離を積める。一メートル以内でこめかみに打ち込めば死ぬだろう。
まず首にかけていたヘッドフォンを投げつける。
奴もそれに気付いて先程の箱をだす。
やつに投げつけたヘッドフォンは黒い箱に飲み込まれる。
この時を待っていた!!
俺はすかさず左拳を握る。ヘルメット野郎と同じ手袋の甲に俺のカードがある。
そして奪うのはこいつの箱だ!!
力を込めて殴りつける。
手の甲で悪趣味な黒い箱をとらえるとその箱を一瞬で消える。
俺があの時恐怖した闇が俺のカードに収まる。
まずは一枚だ、そしてそのまま死ね!
箱を奪い銃を向ける俺にやつは次のカードを出してくる。
そこには赤い人が描かれていた。
「次はこれね!」
やつの前にその赤い人が現れ俺に覆い被さる。
ドロリと俺を包み込む。
触れて始めて何か理解した。
夏目花梨から抜き取った血液だ!!
それを浴びて俺の視界は赤く染まる。
「糞が!!」
俺がうった弾丸は空を切る。
見えないがもう奴は目前だ!
「君も骨抜きにしようかな!」
糞が!
やっとここまで来たのによぉ!!
お前を殺すのはこの俺、筑波善財の筈なのによぉ!!
ごん。
鈍い音がする。
「……あ、れ?」
やつは奇妙な声をあげる。
俺の視界は真っ赤で何も見えない。
真っ赤な視界の中に聞き慣れない声がする。
「私は不動轟!正義の味方だ!!」




