◆第二十七章:風見 風太 その三
「……花梨、……よかった、……生きてたんだ!」
俺は思わず言葉を漏らす。
今は電車の中だ。
十時をまわった電車には丁度席を埋める程度の人がいる。
俺の隣にはヘッドフォンをした筑波、不動先輩、そしてなぜか戸畑先生の部屋にいた宇多田がいる。
そんなことはどうでもいい。
早く花梨に会いたい。
俺がスマホを見たとき今まで連絡のなかった花梨が久々に画像を上げていた。
そこは港だ。
俺達の住む町から電車で一時間ほどで行ける有名な港だ。
夏に花梨とデートで行ったのを覚えている。
特徴的な魚の像があり一緒に写真を撮ったのを覚えている。
そこで花梨は座っていた。
黒い箱の上にカードを持って座っていた。
そして隣には俺にカードを渡してきたあの男がいた。
そしてその写真と共に文章もつぶやいていた。
「マジックショーをします!」
なんでそんなことをツイートしたのか?
なんであいつと一緒にいるのか?
わからないことは多いけど早く花梨に会いたい。
電話もかけたしメールも送ったけどなんの反応もない。
早く花梨に会いたい。
筑波から話を聞いたときはもう駄目かも知れないと思った。
でもまだ生きてたんだ!
早く花梨に会いたい。
俺がカードを渡したせいでこの一週間ずっと苦しかった。
花梨と付き合って五ヶ月経つ。
中学の時も彼女がいたけど花梨は違う。
俺の大事な女だ。
早く花梨に会いたい。
あと一ヶ月経てば付き合って半年だ。
あいつの笑顔がみたい。
早く花梨に会いたい。
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俺達が魚の像の前についたのは十一時くらいだった。
そこには誰もいない。
「花梨!!どこなんだ!!」
俺は必死に探す。
「ようこそ皆さん。」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
あの男だ。
「花梨をどこにやった!!」
俺は問いかける。
「それでは会場にご案内しましょう!」
そいつの言葉と共に目の前は真っ暗になった。




