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お代官様になろう!  作者: 元ガス屋
市井の人々編
26/26

第21話 守りたい人がいる(前編)

年度明けても忙しいってありがたい反面、きついですねw


がんばって投稿してみます!

タイトルが某防衛組織のキャッチっぽいのはご愛嬌でww


 そういえば俺ってお代官様になった割には、某総合ランキングトップの作品様みたいにハーレムで子作りしまくったり、美女に囲まれたりしていないよね?

 ミートナ市包囲戦から数週間後。そんなことを考えていた俺に、意外な人物が訪ねて来た。


 そいつは上司のサイラスにさらに輪をかけた「緊張しい」だった。中庭でいつものように日向ぼっこしてる俺のところへ、クーリエがまるで罪人を連れてくるかのようにエスコートしてきた男は、年のころ二十歳前。銀色の鎧に身を包んだ金髪の兄ちゃんだった。

「ミートナ郡大隊、第一パイク中隊、第二小隊のミットナー三尉であります!」


 どうも横峰はミートナ郡大隊に自衛隊式な階級制度を取り入れているようだ。時々、あまり面識のない兵士からやれ「陸士長」だの「三曹」だの、サイラスにいたっては「わたしは二等陸佐だそうです」とか言われたことがある。


 その辺はともかくとして、このミットナー君が果たして俺のところに何の用事で来たのか? 俺のプライベートタイムに兵士が訪ねてくるのは稀だったんで興味が沸いた。

「ミットナー君か、どうした?」

 彼の上官であるサイラスに対してやるのと同じように、イスに座らせクーリエがリラックスさせるために酒を勧める。そのグラスを見て、意を決したようにぐいっと飲み干すと、彼は俺の方を向いて告げた。


 「横峰様には許婚いいなずけなどおいでなのでしょうか?」


 俺の手から力が抜けた。手に持っていたグラスが地面に落ちる。クーリエも彼が発した言葉の衝撃でフリーズしている。

「あ、あの……」

 俺たちのリアクションでミットナー君が困っているようなのに気がついて、俺はようやく我に返り、彼の相談内容を要約する。

「つまり、ミットナー君は横峰のことが好きなの?」

 俺の言葉に顔を真っ赤にする若い兵士。

「はい……」

 最初の勢いとは打って変わって恥ずかしげに答えるミットナー君。俺は思わずクーリエの方を振り返った。さすがの彼も思案に暮れているという感じだ。


 こいつは……、ノルド亭コースですね!


 「ふむぅ、異世界の女性に惚れてしまいましたか……」

 ノルド亭の別室で、地獄耳のハルフはミットナー君の相談に眉をしかめた。さすがにこればかりは彼が伝令をいくら放っても答えは返ってこないだろう。

「旦那様、むしろ横峰様の好みなどわかれば我らも相談にお答えしやすいかと存じます」

「好み、ねえ……」

 ハルフの言葉に俺は横峰のことを思い返してみる。


 有楽町で救出されて、トラックで秋葉原、上野、赤羽など経由してひたちなかへ向かう途中にこの世界へ転移した時に居合わせた自衛官って印象しかない。後は時代劇マニアに格闘大好き、ついでに言うと酒癖が悪い。強いて言えば、どちらかというとSってくらいだな。たしかに見た目はかわいい、スタイルもいいけど。

「旦那様、それだけでは横峰様がただの格闘バカにしか聞こえません」

「う、うん。でも女性自衛官とか接点なかったし、正直よくわからねえからなぁ」

 ハルフの突っ込みに答えつつも、俺はある人物を思い出し、スーツの内ポケットから無線機を取り出した。

「飯倉陸士長、こちらGHQ、感明どうか送れ!」

 すぐに返事が返ってくる。

「GHQ、こちら飯倉。感明よし!」

「飯倉君、ちょっとノルド亭まで顔出してくれるかな~」

 ただの無線チェックではないと察したのか、飯倉は少し口ごもったが、断れないと悟り返信を送ってきた。

「りょ、りょう!」


 数十分後、ノルド亭の別室で、俺、クーリエ、ハルフ、クーメ、そして部屋の隅っこでオロオロするミットナー君に囲まれた飯倉陸士長への尋問が始まった。

「女性自衛官ってどんな男が好みなの?」

 どうも質問が漠然としていたようだ。飯倉はイスにまっすぐ座ったまま首をかしげた。

「そりゃあ、ひとそれぞれっすよ」

「概して、頼りない男ってどうなんですか?」

 少し具体的にハルフが質問を投げかける。飯倉は視線を天井に向けて考えながら答えた。

「それもひとそれぞれっすよ。言ってもWACじょせいじえいかんだって女の子ですからね」

「ここにいるミットナーさんと横峰様ってどう思われますかね?」

 クーメ、ちょっとストレートすぎないか? 俺の杞憂はよそに飯倉は淡々と答える。

「俺の経験上、賭けですかねえ。横峰さんって相沢さんにはあんな感じっしょ? でも部下の兵士には結構メリハリつけてんスよねえ……。意外と兵士たちには慕われてるんですよ」

「え? そうなの??」

 思わず俺は飯倉に詰め寄ってしまう。始終厳しい感じで接してるのは俺だけ? ウソだろ。俺、どんだけあいつからダメ人間認定されてるんだよ。


 「横峰様の旦那様に対する対応、飯倉様の感じから考え、ミットナー殿と横峰様はありえないと思われますか?」

 言葉は丁寧だけどかなりストレートなクーリエさんのご質問。呼ばれた意図がやっとわかったらしい飯倉は首を横に振るばかりだ。

「すいません、俺、横峰さん全然知らないんで! ただミットナーみたいな外見は嫌いじゃないと思いますよ。横峰さん、自分が男っぽいのを気にしてるし、美咲ちゃんから女扱いされない時があるのも気にしてますんで」

「なるほど、ボーイッシュゆえに中性的な草食男子を好む可能性があるということですな」

 ハルフのまとめみたいな答弁に、クーリエ、クーメも顔を見合わせてうなずいた。どんだけこいつら意気投合してんだよ。


 というわけで、それとなくミットナー君と横峰を接触させる作戦が発動された。


 

 が……。いっこうにうまくいかないのだ。

 そもそも横峰は縦横無尽に動き回りすぎ、ミットナー君をお供につけようにもなかなか難しく、街中に出たところで暴漢に襲われても彼が助ける間もなく彼女自身で暴漢は片付けてしまう有様だ。

「皆様、この上は武勲を立ててしっかりと横峰様にアピールしたいと思います」

 当のミットナー君までこう言い出す始末。まあ、上司としてはその方がいいのは間違いないのだが、なんとも彼を振り回しただけに終わらせたようで申し訳ないやら面目ないやらな気分になった。



 それからさらに数週間、ミットナー君は町の探索や捕り物でいくつかの手柄を上げた。俺もクーリエもサイラスも先日のこともあり、彼の成功を我がことのように喜び、どうにか横峰への思いを伝えるきっかけをうかがっていた矢先だった。


 クーメが緊急の報告があると代官屋敷を訪ねて来たのだ。エストライドへの経済戦争の準備の合間を縫っての報告だ。かなり緊急性が高いと見ていいだろう。

「旦那様、ノルド亭に先ほど寄っていたのですが……」

 ノルド亭から走ってきたクーメに水をあげ、ダイニングルームに通してあげて話を聞く。


 クーメの話によると、ノルド亭で昼食を取っていると見慣れない冒険者風の連中が数名入店してきたそうだ。酒を注文してしばらくすると連中は語りだした。


「小娘一人を始末するためによくもこれだけの人数を集めたもんだ」

「しかも冒険者ギルドを通さずに人づてで集めるとはな」

「なんでも緑の服を着て、すごい音がする魔法の杖を持った女とか」

「代官の右腕らしいが、まあこの人数だ。女一人造作もなかろう」


 どう見てもターゲットは横峰です、本当にありがとうございました。

「という次第でございます、旦那様」

 クーメの報告を聞いて俺はため息をつく。

「あいつ、そこまで恨みを買ってたのか……」

 そう言ってあいつの功績を聞いた限りで思い出す。うん、悪人にはとことん恨まれても仕方ないよな。

「そして気になるのが、冒険者ギルドを通さずに荒くれ者を集めた黒幕でございます」

 確かにそうだ。冒険者ギルドを介さないいわゆる「汚れ仕事」にはそれなりの報酬が必要になる。ましてや複数の人間を雇うにはある程度の資金と「つて」が必要になる。

「クーメ、裏稼業の仕事を紹介してる連中がこの街にいるってことだな?」

 俺の問いかけにクーメはうなずいた。

「さっそく雇い主を探ってみます!」

「忙しいとこ悪いけど頼むわ」

 蛇の道はヘビってヤツだな。エストライドへの仕掛けが忙しいのに申し訳ないが、こういうのは彼らじゃないとできない仕事だ。


 翌日、代官所の中庭には苦虫を噛み潰したような顔をした横峰と、傍らに我が世の春を謳歌するような顔をしたミットナー君がいた。

「相沢さん、ミットナー君は最近いい仕事できるようになったけどさ、なんでわたしの護衛なの?」

「え? よ、横峰様! 自分が護衛ではご不満ですか?」

 数秒前とは打って変わり、すがるような表情で横峰を見るミットナー君。

「い、いや、君が頼りないってことじゃないんだけど……」

 珍しく口ごもる横峰。困った俺はクーリエの方を見る。筆頭執事は俺からは顔が見えないようにして肩を震わせている。こいつ絶対笑ってるだろ。


 こうして横峰とミットナー君を物理的に近づけることに成功した。正直数名の冒険者風情なんて横峰だけでどうにでもなるんだがな。ミットナー君にとってもいい勉強になるだろうし、何より彼の「本懐」を遂げるきっかけになればまたそれでいいわけだ。


 しかし、降って沸いた横峰暗殺計画。俺は単に取締りを厳しくやっている彼女への恨みだけではないような気がしてならなかった。

果たしてミットナー君の恋路は?

横峰暗殺計画の黒幕は?


次回に続きます!!

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